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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0138.部長、仕事していたんですね

 案内された部屋に入ると女性がお茶を持って来てくれた。好待遇にクマちゃんが不思議そうにしている。


「先程は申し訳ございませんでした。白族の方ですね」

「はい、そうです。用があるのは僕ではなくクマちゃんの方ですが」

「そうでしたか。私は当行の支配人をしております、ユタと申します」

「クマでキュ。よろしくお願いしまキュ」

「失礼ですが、クマがお名前でしょうか?」

「そうでキュ。今日は口座を作りたくて来ましたキュ。お花屋さんを開く為なのでキュ」

 

 きっとクマちゃんは、にゃんちんめ~と思っているに違いない。ニマニマしてしまいそうな頬と口元に力を入れて堪える。


「お花屋さんですか……」

 

 大丈夫だろうか? と考えているんだろうな。だったら、これだ。


「こちらにヒョウキ様の紹介状と白族の認定証、そしてヒョウキ様、ダーク様、宰相のミナモ様のサインがございます。先程、営業の為の許可も頂きました」

 

 クマちゃんも慌てて営業許可証を見せている。支配人さんが次々と手に取り顔を強張らせた後、脱力した様に息を吐く。


「これほどまでに凄いお客様は当行始まって以来です。土の国では白族との関わりが薄い為、認定証も数える程しか見た事がございません。その上、これほどの方々のサインとは……。失礼ですが、どのようなご関係か差し障りのない範囲でお教え頂けないでしょうか?」

 

 まぁ、何かあるんじゃないかと思いたくもなるよね。クマちゃんは密命を受けているとかでもなく、ただ花屋さんをやりたいだけだけど。


「モキュ? どのようなでキュか? ダークしゃんとミナモしゃんはつい最近バーベキューを一緒にしたでキュ。ヒョウキしゃんはこの前、頭に立っ――」


「クマちゃん! 乗せて貰ったんですよね。ねっ!」

「モ、モキュ。急にどうしたキュ、ニコちゃん?」

 

 危ない危ない……。出し物をしようとして頭の上でクマちゃんを片足立ちさせようとした事がバレてしまう所だった。支配人さんもびっくりしているけど、世界で一番偉い王様の残念な部分は隠し通さねば。


「皆様と仲が良いのですね」


「そうなのキュ。最初に行った不動産屋さんで散々な目に遭ったクマを心配して皆が協力してくれたのキュ。ありがたいキュ」


「不動産屋が?」

 

 支配人さんの顔が一気に険しくなった。何か思う所があるのかな?


「どの辺りに行かれたのですか?」


「魔法道のすぐ近くばかりでキュ。それ以上離れた所だとクマには大変過ぎるでキュ」


「成程。……若い店ばかりだな。全く奴等め、馬鹿な事をしてくれる」

 

 クマちゃんには小声過ぎて聞こえていないようだが、僕にはばっちりと分かった。銀行でも警戒していた相手なのかもしれない。僕の視線に気付いた支配人さんがハッとしたように表情を引き締める。


「こちらの用紙にご記入をお願い致します。それと、ハンコをお貸し頂けますか?」


「どうぞキュ」

「ありがとうございます」

 

 小さな筒状の魔法具にハンコをセットしている。何だろうこれ? 興味津々な僕に気付いた支配人さんが笑う。


「ここにセットして登録しておけば、簡単にハンコの照合が出来るのですよ」

「便利ですね。初めて見ました」


「普段は行員がハンコをお借りして中で作業をしていますから。それにこの魔法具は新しい物なのですよ。魔国の研究部の部長が開発したそうです。今は生産が追い付かない程の人気商品なのですよ。クマ様、ハンコをありがとうございました」


「モキュ。クマの方はもうちょっと掛かるでキュ」

「お気になさらず、ゆっくりとご記入下さい」

 

 爆発大好きな危ない部長としか思っていなかったけど、世の中の役に立つ物も作っていたのか。あの部長は頑張る所を間違えすぎだ。つらつらと考えながら、お茶を飲んで待つ。おっ、このお茶おいしい。良い紅茶かな?


「お菓子もいかがですか?」


「ありがとうございます。――はむ。おぉ、このクッキーおいしい! クマちゃん、あーん」


「モキュ? あー。――本当キュ。色々なナッツとかチョコが入っていておいしいキュ。これはどこで売ってまキュか?」


「お気に召しましたか? これは城の売店でも買えますし、店舗は当行の裏手にあります。私も好きで良く食べているのですよ。……今日は確か店舗はお休みだった筈ですから、城の売店でお求めになられた方が確かかと思います」


「ありがとキュ。ニコちゃん、お土産に買っていくキュ」


「いいですね! あっ、でもダーク様は甘い物がそれ程好きじゃないので、別の物を買った方がいいかもしれません」


「そうするキュ。――書けましたキュ」

 

 確認した支配人さんが頷く。大丈夫みたいだ。


「では、ハンコを押していきましょうか」

 

 頷いてクマちゃんが全身でハンコを押すのを見た支配人さんが、そっと手を差し出す。


「私が代わりに押しましょう」

「助かるでキュ。お願いしまキュ」

 

 微笑んだ支配人さんが次々と押していく。うわぁー、流石だ。押すのが速いし上手い。僕だったら端っこがちょっと途切れたり、ハンコの文字が斜めになったりしているだろう。クマちゃんと尊敬の眼差しで見つめていると直ぐに終わった。


「これで完了ですね。ハンコをお返ししますね」

「ありがとキュ。凄かったキュ」

「はははっ。お褒めに預かり光栄です。これを基に通帳をお作り致しますので、少々お待ち下さいね」


部長、爆発物だけではありませんでした(笑)。こういうのだけだったら平和だったんですけどね~。

「つまらん」とか言って、すぐに爆発物に戻りそうです。

支配人さん、プロですね。ハンコを綺麗に押すのは難しいですよね。

しかも、全部書き直すのは嫌なので一回で決めなきゃという緊張が……。

作者だけですかね? (^^ゞ


次話は、クマちゃんが認定証の威力に驚きます。


お読み頂きありがとうございました。

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