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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0136.営業許可証

「――お待たせ。あちらの席に行きましょうか」

 

 復活してキリッとした顔に戻った部長さんの後を付いて行く。


「部長、顔面が崩壊してますよ~。周りに花が飛んでまーす」

「う、うるさいわよ。大人しく仕事してなさい。しっしっ」

「うわぁ、酷い。部下虐待だ~」


「あんたがこれ位で傷付くもんですか。お店を開く為の申請書を持って来てくれる?」


「はーい。畏まりました、部長様」

「よろしい。では、行ってまいれ」

 

 賑やかな部署内にクマちゃんが驚いている。


「いつもこんな感じなんですよ。皆さん、仲が良いんです」


「そうなのキュか。もっと怖い人がいっぱい居て、シーンとしているのを想像していたでキュ」


「うちの部署はこういう雰囲気の方がうまくいくのよ。土の国にはないけれど、クマちゃんが言っていたような所もあると思うわよ。どうぞ、座って」

 

 席を勧められたので、クマちゃんを膝に乗せて座る。駄目だ、机が高すぎる。


「部長さん、クマちゃんを机の上に乗せてもいいですか?」

「ええ、いいわよ。大人用の椅子だから見えないものね」

 

 ちょこんと座ったクマちゃんが自分用のペンを鞄から取り出す。


「部長、申請書持ってきましたよーって、うわぁ、ペンが小さ~い。熊さん、可愛い。あー、ニコちゃんも可愛い~。部長、今すぐ代わって下さい。俺が対応します」

 

 部下の人が急にキリッとして言うと、部長さんが太腿をバシッと叩く。


「いってぇー、骨が折れた。今すぐ、その席に座らせて下さい」


「まだ言うか。ほら、あんたをいつもご指名のお客様が来たわよ。行って来なさい」


「ああ~、残念。またね」

 

 思ったよりもあっさりと戻って行く。お仕事には真面目だ。


「こちらが必要な申請書になるわ。書いていて分からない事はどんどん聞いてね。詳しい説明は書いて貰った後にするわね。この箱を机代わりにしていいわよ」


「分かりましたでキュ。ありがとキュ」

 

 クマちゃんからしたら紙も大きいので、最終的には紙の上に乗って書いている。ハンコを押すのも全身でだ。


「よいしょっキュ。出来たでキュ~。確認をお願いしまキュ」


「はい、お疲れ様でした。――ごめんなさいね、ここにもハンコをお願い出来るかしら」


「分かったでキュ。モッキュっと」


「ありがとう。――うん、後は大丈夫よ。次は税金のお話ね。利益に対して十五パーセントをお支払い頂きます。時期になると通知がいくので、まず申告書をこちらに提出して下さい。ご自分で帳簿をつけるのかしら?」


「そうでキュ」

「えっ、クマちゃん、自分で出来ちゃうんですか⁉」

「モキュ。にゃんちんがお勉強していたのをずっと見ていたから分かるでキュ」

 

 へー、カハルちゃんは日本でそういうお勉強をしていたんだ。新情報をゲットだ。


「時期になると相談窓口が特別に開かれるから、困った事や分からない事があったら聞きに来てね。それと、その時だけじゃなくても事前に問い合わせてくれれば、時間や日取りを決めて私が教えてあげるわ」


「ありがとキュ。お金もここで払うのキュ?」

「お金は銀行で振り込んで貰う事になっているの。口座はあるかしら?」

「これから作りに行きまキュ」

「じゃあ、大丈夫ね。次に――」


「失礼します。部長、こちらをお願いします」

「ありがとう。急かしてごめんなさいね」

 

 礼をして離れて行く部下の人からこちらに向き直る。


「これが、営業の許可証よ。紛失したらすぐに教えてね。紛失した場合の再発行はお金が掛かるわ」

 

 紙じゃなくて金属で出来ている。思ったよりも小さいなぁ。


「端に小さな穴があるでしょう? そこに鎖とか紐を通して首に下げている人も多いのよ。クマちゃんには大きいかしら?」

 

 クマちゃんが胸の前に抱えてみせる。名刺ぐらいのサイズだけど動きを妨げてしまいそうだ。


「やっぱり、クマちゃんには大きいわね。失くさないように十分気を付けてね。この冊子にいま説明した事などが細かく載っているので読んでおいてね。手続きは以上となります。お疲れ様でした」


「お世話になりましたでキュ。ニコちゃん、待たせてごめんキュ」


「全然問題ないですよ。いいお勉強になりました。クマちゃんに感謝です。あっ、その冊子は大きくて重いので僕が持ちますよ」


「ニコちゃん、本当に良い子でキュ。何か欲しいお菓子があったら買ってあげるでキュ」


「そんな、気にしないで下さい。僕がやりたくてやっている事ですから」

 

 クマちゃんは気が済まないらしく「モキュ~」とうなっている。


「じゃあ、いつもの様に頬擦りでいいです。それと、肉球を触らして下さい」

「そんな事でいいっキュか?」

 

 そこかしこから「私も~」や「僕も~」と声が聞こえてくる。見送ってくれる部長さんは鼻を抑えながら、クマちゃんの小さな手を凝視している。


「部長さん気になるキュ? 肉球でキュよ~」

 

 クマちゃんが両手を突き出して肉球をアピールすると鼻血が大量に出て来た。


「モキャー⁉ 血でキュ、大変キュ! お、お医者さんでキュか⁉」

「クマちゃん、落ち着いて下さい。ご自分で対処できます。ですよね?」

「えぇ、まかふぇて。さよにゃら」

 

 またも凄い勢いでトイレにダッシュしていった。貧血にならなきゃいいけど。


「何か欲しいお菓子があったら買ってあげるでキュ」だなんて、クマちゃんがお兄さんらしいですね~。

再びの鼻血……。ニコちゃんが普通に対応できるようになりました。順応が早いです。


次話は、銀行に行きます。


お読み頂きありがとうございました。


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