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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0135.土の国、産業部

 翌朝、シン様が出掛ける前にお札をクマちゃんに渡している。


「これが結界のお札ね。クマちゃんの体に沿って常に張られているから。馬車が突っ込んで来ても防げる強度になっているから安心してね」


「もう張られているキュ?」

「うん。落とさないようにするんだよ」

 

 頷いて畳むと、裏のポケットの奥深くに入れている。


「シン様、僕はクマちゃんに触っても大丈夫でしょうか?」

「うん。害が無い人間は触れるよ。試しに触ってごらん」

 

 指でちょいとクマちゃんの腕に触る。良かった、痛くない。


「ね、大丈夫でしょう? 悪い奴だと最初はビリッとして、更にしつこく触ろうとすると吹っ飛ぶから」


「悪気なくぶつかってしまった人はどうなるでキュか?」


「少し衝撃があるだけでビリッとしたりはしないよ。普通に人にぶつかったように感じるだけだよ」

 

 それなら安心だ。クマちゃんが歩く度に、そこら中の人が吹っ飛んでいく光景を思わず想像してしまった。


「それじゃあ、行こうか。忘れ物はないかな?」

「――大丈夫キュ。お願いしまキュ」

 

 モフモフまみれになったシン様が魔法を発動する。


「――はい、着いたよ。いってらっしゃい」

「気を付けてな」

 

 セイさんの言葉に頷き行こうとすると、ヴァンちゃんが僕のポケットにずぼっと手を入れる。


「ほにょっ⁉」

「飴、やる。約束を忘れちゃ駄目」

「うん。卵かけご飯を死守だよね!」

 

 クマちゃんを絶対に守り、食べ物の誘惑に打ち克つのだ! 頑張れ、自分!


「言っている事は何かずれている気がするが、あの様子だと分かっているのか?」

「大丈夫。あの様子だと気合十分」

「はぁ、心配だ……」

 

 シン様が後ろで溜息を吐いている。クマちゃんが心配で仕方ないんだな。


「はい、次の方、魔法道に入って下さい」

「はーい。クマちゃん行きましょう」

「モキュ。行ってきまキュー」

 

 入口に居るシン様達に手を振った所で、世界がぐんにゃりと歪み始める。土の国の城に出発!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「クマちゃん、『産業部』はあちらですよ」

「あったキュ。ニコちゃん、詳しいキュ」

「書類配達でそこら中を駆け回っていますから。部長さんが居るといいんですけど」

 

 クマちゃんを頭の上に乗せ、カウンターの縁に手を掛けると部署内を覗き込む。うーん、部長さん居ないかな?


「あら、白族の子じゃない。えっ、頭にも白いモフモフが居る!」

 

 振り返ると探していた部長さんがいた。口を開こうとすると止められる。


「待って! 今日こそどっちか当ててみせるから」

 

 んっふっふっふ。現在、連敗中の部長さんに分かるかな? 部長さんの前に行くと穴が開きそうなほど見つめてくる。


「う~~~ん、決めた。ヴァンちゃん! どう?」

「ブブー。今日も外れでーす」

 

 ああっ、と頭を抱えて苦悩している。お馴染みの光景に部署の人達がクスクスと笑っている。


「部長、また連敗記録更新ですか?」

「そうよっ。もう、何で当たらないのかしら?」

「特徴をお教えしましょうか?」

「駄目よ。自力で当ててこそ絆が深まるってものじゃない」

「いやいや、その前に当ててくれないなぁって愛想を尽かされちゃいますって」

「何ですって⁉ そうなの、ニコちゃん?」

 

 ウルウルした瞳で見つめてくるので首を横に振っておく。


「もう、何て良い子なのかしら。うちの子にしたい」

「部長、独身じゃないですか」


「うるさいわよ。あんた達は仕事してなさい、し・ご・と! ごめんなさいね、外野がうるさくて。ニコちゃん、書類を持って来てくれたのかしら?」


「いえ、今日は個人的な事で来たんです」

「あら、私が対応してあげるわ」

「ありがとうございます。クマちゃん、こちらの方が産業部の部長さんです」

「よろしくお願いしまキュ。お店を開く為の手続きに来たでキュ。色々教えて下さいなのキュ」

 

 クマちゃんがぺこっと頭を下げて言い終わっても、部長さんが顔の下半分を手で押さえて俯いている。訝しく思ってクマちゃんと共に顔を覗き込むと鼻血が出ている。


「モキュ⁉ 大変キュ~。これ使って下さいキュ」

 

 クマちゃんが自分の小さな小さなハンカチを差し出すと、部長さんが慌てて片手を上げる。


「いいの……。そんなに可愛いハンカチを私の血で汚すなんて出来ないっ。ちょっと待っていて。どっかに行っちゃ駄目よ。ちゃんと私が対応するから!」


 唖然とする僕達を置いて素晴らしい速さでトイレに走って行く。が、頑張れ~。


「ありゃ、完全にやられたわね。決定打はきっと『キュ』よ」

「そうね。それにあの可愛いハンカチ。私も差し出して貰いたいわ!」

 

 待合用のソファーに座っているおばちゃん達の話し声が聞こえてくる。成程、クマちゃんの可愛さにやられたのか。嫌悪じゃなくて良かった……。


産業部の部長もまともそうで、個性的でした。この人は興奮してよく鼻血を出します。

モフモフ大好きで、ヒールで素晴らしいタイムを出す足の速いお姉さんです。


次話は、営業許可証をゲットです。


お読み頂きありがとうございました。

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