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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0133.物件巡り

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い致します。

「こちらですね。少し古いので壁は塗り直した方が良いかもしれません」

 

 クレセント不動産の看板がここからも見える。本当に近かった。中に入ると言っていた通り空っぽだ。


「賃料は五万圓。広さは約三十平米ですね」

 

 クマちゃんを見てから部屋を眺めると広すぎるような気がしてしまう。


「――ありがとキュ。次の所にお願いしまキュ」

「はい。次は城の近くの物件を見に行きましょう」

 

 中央通りをテクテクと歩き市場に辿り着く。シン様と買い物に来た時にも思ったけど、人が多いな。


「白達、俺に登れ」

 

 はぐれると思ったのかセイさんが声を掛けてくれる。ありがたく肩に貼り付き周りを見渡す。あ~、食欲を刺激するいい匂いがする。


 クレセントさんは慣れているのか人ごみを器用に抜けていき、セイさんも余裕でついていく。外で売っている人が多かったけど、奥に行くほど一軒家が増えてきた。


「あちらです。あの青い屋根の家ですよ」

 

 最初の所よりも広い感じだ。中に入れて貰うと前の状態がそのままになっている。食べ物の匂いが染みついているし、調理場とかを壊したりする為にお金が掛かりそうだ。セイさんも僕と同じように微妙な顔で見回している。


「……ここは止めておいた方がいいのではないか?」


「モキュ。クレセントさん、ごめんなさいでキュ。人通りは多いでキュけど、ここは止めておくでキュ」


「謝らないで下さい。もっと良い物件をご紹介したかったのですが、この辺りの小さめの店舗はここしかなかったというだけですから。商売をするには良い場所なのですが」

 

 クレセントさんも予想していたのか苦笑している。


「次に行きましょう」

 

 元来た道を戻っていくと見覚えのある景色になっていく。パン屋さんにお肉屋さんも見えて来た。あれ? もしかして宿屋って、前に食事をした所?


「ニコ、この前の宿かも」

「おや、行かれた事がおありですか?」

 

 ヴァンちゃんと一緒に多分と頷く。


「おう、この前の子達じゃねぇか! 今日はどうしたんだい? クレセントさんと一緒って事はこの辺に住む事になったのかい?」

 

 お肉屋のおじちゃんが覚えていてくれた様で、元気に声を掛けてくれた。


「今日はお店を開く場所を探しに来たんですよ。ねっ、クマちゃん」

「モキュ。クマがお花屋さんを開くでキュ」


「へぇ、花屋をかい。そりゃあ、いいねぇ。町の皆も大喜びするわ。……ああ、そういや女将が借り手を探してたなぁ」


「はい。女将さんから私の店で募集を掛けて欲しいとご依頼がありましたので、クマ様をお連れしたんです」


「じゃあ、決まったも同然だな。ありゃあ、相当気に入っているぜ」

 

 皆で首を傾げる。何が気に入っているのだろう?


「行きゃあ分かるぜ。だはははっ」

 

 豪快に笑って店の奥に行ってしまった。


「よく分かりませんが……行きましょうか?」

 

 クレセントさんの後に続いて扉を潜る。


「いらっしゃい。済まないねぇ、まだ準備中――あらっ、この間の子達じゃないか! よく来たね。さぁ、座って座って。今、お茶を持って来るからね」

 

 返事も聞かずに厨房へ走り込んでいく。相変わらずお元気そうだ。


「ちょいと、聞いとくれ! この間の可愛い子達が来たんだよ。今日は新たな美形まで居るんだよ。あー、もう一度会いたいっていう念願が叶ったわ。お菓子はないかい?」

 

 獣族の耳には丸聞こえだ。お肉屋さんの言っていた意味が分かった。女将さんはモフモフ好きだったらしい。


「お待たせしたね。クッキーを食べておくれ。ナッツ入りで美味しいんだよ。今日はお父さんと一緒じゃないのかい?」


「はい。今日はお兄さんと一緒です」

「あらぁ、息子さんなのかい。美形一家なんだねぇ」

 

 セイさんが女将さんの勢いにたじたじとしている。ここはお話を進めよう。


「あの、今日はご相談があって来たんです」

「おや、困り事かい? あたしで力になれる事なら喜んで貸すよ」

「実はこちらのクマ様が花屋さんを出す場所を探していらっしゃるので、こちらをご紹介させて頂きました」

 

 クレセントさんの説明を聞いて、女将さんが口をパクパクしてから動きを止める。どうしたんだろう? 大丈夫かな?


「――うちに決めないかい? お昼はまかないで良ければ一緒に食べとくれ。屋上も路地も好きに使って良いよ。賃料は一ヶ月、五千圓でどうだい? 本当はクマちゃんならタダでもいいんだけどね」

 

 クマちゃんがタダと言われて、慌てて首を横に振っている。


「そうかい? だけど、あたしは確信しているんだよ。絶対にお客さんが押し寄せてくるよ。そうなったら、うちもお客さんが来て嬉しい悲鳴を上げているさ。あたしの言葉が本当になったら勝手にタダにするからね。で、うちに決めてくれるかい?」

 

 余りの好条件に今度はクマちゃんが口をパクパクとさせている。大丈夫かな? 落ち着くように背中を撫でてあげよう。クマちゃんが僕達の顔を見回すので力強く頷く。この女将さんなら大丈夫。


「――お願いしまキュ。クマに貸して下さいキュ」

 

 感激で泣きそうになりながらクマちゃんが頭を下げる。うぅ、僕までウルウルしてきた。


「勿論だよ。これからよろしく頼むねぇ。ああ、嬉しい。こんな良い借り手が見付かるなんてねぇ。クレセントさんに頼んで大正解だったよ」


「お二方に喜んで頂けたのなら、これほど嬉しい事はございません。契約書を用意してありますが、ここで書いて頂いても?」

 

 その場で契約が無事交わされ、クマちゃんと女将さんが握手する。クマちゃんに触れて女将さんが凄く嬉しそうだ。モフモフ好き、バンザイ。


この前、お昼を食べた宿屋さんでしたね。

女将さんは、クマちゃん達がまた来てくれるのを今か今かと待っていました。お肉屋さんはこの事を知っていたので、あの発言です。

女将さんは、空いている土地を無駄にしとくのもねぇという感じで貸しているだけなので、賃料がお安いです。


次話は、報告と新たな予定です。


今日は、この後に『NICO&VAN(ヴァン視点)』もUPします。

お読み頂きありがとうございました。

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