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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0131.全面バックアップ

 夕飯はクマちゃんの元気が出るように、セイさんが買ってきてくれたお魚だ。


「これはサバの味噌煮だよ。骨に気を付けて食べてね」

 

 濃い目の味付けでご飯が進む。いつも塩焼きばかりだったけど、こんな食べ方もあるんだ。あー、ご飯お替りしちゃおう。


「あさりの味噌汁もうまい」

「そうだな。貝のいい出汁が出ている」

 

 ヴァンちゃんとセイさんがまったりと会話している。僕とクマちゃんはサバの味噌煮を食べるのに忙しい。


「おいふぃでキュ」

「ふふっ、良かった。少しは元気が出たかな? ご飯をお替りする?」

「――ごっくし。お願いしまキュ」

 

 クマちゃんがお替りとは珍しい。でも、この味付けはご飯が進むよね~。あさりのお味噌汁もおいしい~。もう、味噌と醤油なしには暮らせない。


「はぁ~、食べたっキュ。もう入らないキュ~」

 

 満足そうに大の字になってしまった。暫くすると寝息が聞こえ始める。そうだよね……。心も体もクタクタに疲れているよね。


 シン様がそっと持ち上げて、クマちゃん専用のベッドに寝かせている。


「ゆっくりお眠り。良い夢を」

 

 優しい声で囁きお布団を掛けてあげている。こちらに戻って来る時には恐い顔に変わっている。


「酷い事をするものだな。やはり俺は人間があまり好きになれない」

 

 セイさんがポツリと呟く。


「そうだね。僕は人間の身勝手な願いなんて、遠い昔に聞くのを止めちゃったけどね。さぁ、作戦会議といこう。ニコちゃんに何か考えがあるみたいだけど、聞かせて貰える?」


「はい。その前に幾つか連絡を入れたい所があるんです。いいですか?」

「うん。じゃあ、後片付けしてくるよ」

「はい。ヴァンちゃん、ミナモ様に明日お休みさせて下さいって伝えて貰える?」

「うむ。任せろ」

 

 離れて行くヴァンちゃんを見送り、僕もミルンさんに連絡を入れる。


「ミルンさん、ニコです。出られますか?」

「――はい、お待たせしました。何か問題がありましたか?」

「僕ではなくクマちゃんの事であります」

「クマちゃん……。ああ、ニコがこの前くれた報告書に書いてあった子ですね」


「そうです。お花屋さんを開きたいと言っていたクマちゃんです。審査は合格ですか?」


「勿論。ニコの調査員としてのお眼鏡に適った子ですよ。それに加え、ヴァンも太鼓判を押しています」


「えっ、ヴァンちゃんも報告書を⁉」


「はい。私も読んで確信しました。絶対に繁盛間違いなしです。資金に困っている様でしたら、白族から援助しますよ。問題というのはそれですか?」


「いえ、資金ではなく店舗なんです。今日、クマちゃんが不動産屋に行って、酷い目に遭って帰って来たんです」

 

 ミルンさんの目が冷たく光る。


「その人たちは底なしの阿呆ですね。いいでしょう。白族が全面的にバックアップします」


「ありがとうございます! 土の国の信頼できる不動産屋を教えて下さい」


「分かりました。明日の朝までに、いくつか調べておきます。こちらに来られますか? 白族の認定証も一緒にお渡しします」


「行きます。ミナモ様が力になるとおっしゃってくれたので、サインを頼んでみます」


「そうですね。ダーク様にもお願いしてみましょう。では、また明日。おやすみなさい」

 

 よし、下準備は整った。


「ニコ、どうだった? ミナモ様は快諾してくれた」


「僕の方も全面バックアップを約束して貰えたよ。明日の朝に不動産屋の情報と認定証を貰いに行って来るね。ミナモ様達にサインをして貰えるよう頼んでみる」


「では、俺が移動の魔法で連れて行ってやろう」

「セイさん、ありがとうございます」

「じゃあ、僕はヒョウキにサインを書かせるよ」

 

 おぅ、無理やりにでも書かせる気だ……。お手柔らかにお願いします。でも、ヒョウキ様のサインが貰えれば最強だ。一生懸命に頼んでみよう。そうと決まれば早く寝て明日に備えなくては。おやすみなさい!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 翌朝、朝ご飯をしっかりと食べてから白族の村に向かう。腹が減っては戦が出来ぬ! なのだ。


「ミルンさん、おはようございます」

「おはようございます。用意は出来ていますよ」

 

 ミルンさんが後から入って来たセイさんにびっくりしながら会釈している。渡された紙を見ると、不動産屋が三店舗ピックアップされている。


「一番のお薦めはどれですか?」

「クレセント不動産ですね。非常に丁寧で親身になってくれます。後は、その順番の通りです」

 

 ふむふむ。じゃあ、お薦めの所から行ってみよう。場所は……ビジュ・コパンに近いな。


「ミルンさん、ありがとうございます。早速、行ってみますね」

「はい。何かありましたら連絡を下さい。すぐに対処します」

「助かります。それでは失礼します」

「世話になったな。後できちんと挨拶に来る」

「はい。お役に立てたのなら嬉しく思います。お気を付けて」

 

 ミルンさんに見送られ、次は魔国のお城だ。



「おはようございます。急にお休みを願い出て申し訳ございません」


「いいのですよ。力になるとお約束しましたから。シン様から事情を伺いました。サインをするので認定証を貸して下さいね」


「お願い致します」

 

 ミナモ様がサインし、既に来ていたダーク様が続けてサインしてハンコも押してくれる。


「ヒョウキ、書け」

 

 ダーク様が渡すと躊躇いもなくサインし、ハンコも押してくれる。


「ほいよ。俺からの紹介状もいるか? っていうかもう書いてあるけど」

 

 感激のあまり手をがしっと握る。こんな大盤振る舞いして貰えるとは思っていなかった。


「はははっ、嬉しいのか? クマも俺の大事な民の一人だ。困っていて、俺の権力が役に立つなら使え」

 

 ふざけている印象が強いけど、どれだけ偉くなっても民を深く思いやり動けるこの人は真の王だと痛感する。僕はまだ浅い一面しか知らない。意図的に見せていない姿がまだまだ沢山あるのだろう。


「今回は全ての国で不動産屋の調査を行います。国の土地を扱っている者が横暴だなんて許されませんからね。悪い事をしている輩も徹底的に洗い出します」


「そうだな、権利を剥奪する。闇の国ではクマの話を聞いて激怒したルキアが既に動き出している」

 

 魔国と闇の国の宰相様を怒らせるなんて終わったなと思う。このお二方は他の国の宰相様より圧倒的に抜きんでている事で有名だ。僕達が手を出す必要は無さそうだ。これで報復の心配も要らないので、安心してクマちゃんを連れて行ける。


「皆さん、ありがとうございます。これからクマちゃんと一緒に行ってきますね」

「僕も行こうか?」

 

 シン様が心配そうに言ってくれる。


「セイさんが来てくれるので大丈夫ですよ。後で、きちんとご報告しますから」

「そう? じゃあ、魔物退治に行って来るね」

 

 一見冷たそうな感じだけど、ああいう所がきちんとお父さんだなぁと思う。シン様とダーク様を見送り、ミナモ様に向き合う。


「何かありましたら直ぐに連絡を下さいね。では、気を付けていってらっしゃい」

「はい。行って来ます」

 

 ヒョウキ様に手を振り返しながら城を後にした。


白族のコネが凄すぎる。国の上層部、創造主、神、大商人、貴族などなど。

長い時間を掛けて築き上げてきた信頼のお蔭ですね。

ヒョウキが珍しくカッコイイですね。ニコちゃん、感激です。


次話は、クレセント不動産に行きます。


お読み頂きありがとうございました。 

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