0012.大量の魔物
「そう邪険にするでない。我の封印もそろそろ解ける。そなたが勝てる見込みはない。それに、誰を守るというのだ? 我が知らぬと思うてか? そなたが命懸けで守ってきた者の心無き声を」
ビクッとカハルちゃんの肩が揺れた。でも、小さな拳を握り、ぐっと顔を上げる。
「私が守りたいから勝手にやっているだけ。傷付いていないなんて嘯くつもりはないけど、ダークみたいに分かってくれる人もいるから、私はあきらめたりしない」
ダーク様が良く出来ましたという様に、口角をニッと上げる。
「だそうだ。大人しくやられろ」
「やれやれ。あきらめの悪い者達よ。少々、躾が必要かえ?」
そう言いながら、魔物が腕を水平に薙ぐと部屋に激震が走る。壁や天井に次々と大きな亀裂が入り、大きな石の塊がバラバラと落ちてくる。
頭上に落ちてきた大きな塊が、結界に弾かれるのを見やってから前方に視線を戻すと、魔物がこちらを見ている事に気付いた。
「まずは、あそこに居る小さき者達から屠ってやろう」
残忍な笑顔を浮かべると、手の平から一メートル程の弓なりの漆黒の風の刃が次々と放たれる。ガツーン、ガツーンと結界に当たっては弾かれる光景に生きた心地がしなかった。
今、僕達を守る物は結界しかなかった。風の刃と同時に出現した空中の黒い穴から、大量の魔物がカハルちゃん達を襲っている。ヴァンちゃんもダーク様の背から出てカハルちゃんと背中合わせになって応戦している。
ヴァンちゃんは手始めに背中に羽根のある一つ目を蹴り飛ばすと、大きく鋭い歯を剥き出して襲ってきた空飛ぶ魚をかわし、膨らんだお腹に鋭い拳を叩き込む。
直後に角を向けて突進してきた紫の羊の脳天に踵落としを決め、びょーんと飛んできたボールの様な魔物を思いっきり蹴飛ばし、巨大な二足歩行の牛の鼻面に叩き込む。息つく暇もない数に苛立ちが見える。
カハルちゃんもキリがないと思ったのか、ダーク様に声を掛ける。
「私の側に来て、早くっ」
ダーク様は目の前の魔物に足払いを掛けると、突っ込んで来る群れに投げ付け合流する。その直後、地面から巨大な火柱が何本も上がり、更に炎の竜巻が逃げ惑う魔物を次々と呑み込んでいく。
その間に魔物を吐き出す穴に何重もの魔法陣が浮かび上がると眩い光を放つ。光が収束すると、そこに穴は無くなっていた。僕は、カハルちゃんが次々と使う大規模な魔法に目が釘付けになっていた。
ガリガリという音に驚き目を向けると、頭上に一匹と、炎に焼かれ片翼になった魔物が結界に取り付き、『キシャーアァ』と叫びながら結界を引掻いている。
怯えた子が少しずつ後退る。まずいと気付いて慌てて引き戻そうとした腕は空を掻いた。後ろに倒れ込んだ子が結界を越えて大きな波紋が広がる。それを見逃す魔物ではなかった。その子の襟首を掴み引き摺り出すと、歓喜の声を上げる。
ヴァンちゃん、ほぼ一撃で魔物を倒しています。かっこいいぞ~(^o^)丿
カハルの火魔法で、魔物は一瞬で灰に変わっています。
次話は、ヴァンちゃんがピンチです。
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