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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第三章 クマの花屋
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0125.宝魚

「メイド長は魚介類なら何が好きなの?」

「私はハマグリが好きです」

「了解。ミナモは?」

「私は白身のお魚が好きです」

「う~ん、じゃあ、バーベキューにすればいいか。よし、買いに行くよ」

 

 船の側に居る筋骨隆々の漁師さんに近付いて行く。わぁ、小魚がいっぱいだぁ。思わず立ち止まって見ているとヴァンちゃんに手を引かれる。


「ニコ、はぐれる。後で見せて貰う」

 

 少し先で待っていてくれるシン様にペコペコ頭を下げる。すみません、思わず……。


「小魚欲しいの? 買ってあげるよ」

「いえ、違うんです。海に来たのは仕事で数える程しかないですし、こんなに沢山の海のお魚も初めてなので、舞い上がってしまって……」

 

 周りの人が全員、優しく笑う。おおぅ、恥ずかしい。僕は森育ちなんですよ~。


「じゃあ、おいちゃんが美味しい魚をいっぱい見せてやるわ。ほれ、来い」

 

 おじさんが見せてくれた四角い木の入れ物には、魚が所狭しと置かれている。みんなピカピカしていて綺麗な色だ。あっ、海老だ! 僕とクマちゃんはそーっと指を伸ばしツンと突いてみる。その途端、海老がビチビチビチと暴れ出した。


「モキャー⁉」

「わぁぁぁっ⁉」

 

 僕達の上げた悲鳴に漁師さんが笑い転げている。僕とクマちゃんはひしと抱き合いながら、バクバクしている心臓を宥める。び、びっくりした。まさか、生きているとは……。


「だはははっ、面白れぇな。全く良い反応だぜ。他にも気になる物はあるかい?」

「このお魚さんが綺麗です。鱗が色とりどりの宝石みたいに見えます」


「ああ、それはまさしく宝魚(ほうぎょ)と呼ばれているんだわ。その赤や緑やオレンジの鱗は装飾品になるから、丸ごと買うと高くなっちまうんだけど、俺に依頼してくれりゃあ、捌いて鱗の値段を引くからな」


「味はどんな感じなの?」


「白身で甘みがあって、なんつうか旨味を凝縮した味って言えばいいかねぇ。生で食べればプリップリで、焼けば口の中に入れた途端にホロホロと崩れて旨味が溢れ出す。おっと、いけねぇ、涎が出そうになっちまったわ」

 

 そんなに美味しいの? 五十センチ位の大きさで三万圓⁉ 高い……。お魚一匹で予算オーバーな気がする。シン様を見上げると顎に手を当てて考え込んでいる。


「捌いて貰うと幾らになるの?」


「七千圓だな。宝魚は今日この一匹しか取れていないから、買うなら早めに頼むわ」


「分かったよ。ハマグリを売っている人を知っている?」

「あぁ、ほら、あの緑の線が入った船の前に居る奴が売っているぜ」

 

 お礼を言って離れて行くシン様を追い掛けながら、後ろを振り返る。高いから無理かな。あ~、気になる……。


「ハマグリを十個下さい」

「あいよ。入れる物は持っているかい?」

「ここに入れて貰えるかな。幾ら?」

「三千圓だな。アサリをおまけに入れておくわ」

「ありがとう。大事に食べるね」


「おじさん、ありがとキュ」

「おっと、こりゃ可愛いお客さん達だね。皆で食べんのかい?」

「そうでキュ。バーベキューなのでキュ」

「そりゃいいねぇ。イカやホタテもあっちの店で売っているから、良かったら買っていってくんな」

 

 おぉ、良い情報をゲットだ。ウキウキしているクマちゃんを抱えてホタテを買い、最初のお店に戻る。


「おっ、さっきのお客さん。魚は決まったかい?」

「うん。アジと海老と宝魚をちょうだい。宝魚は三枚に捌いて貰えるかな」

「あいよ。少し待っとくれ」

 

 どうやってあの綺麗な鱗を取るのかなと観察だ。おじさんは細い鉄の棒を熱し、魚のおへそのような所をツンと突く。その瞬間、鱗が体全体からボロボロボロと落っこちた。


「「「ふおぉーーー!」」」

 

 僕とクマちゃんとヴァンちゃんの驚きの声が見事に重なる。


「はっはっは、凄いだろう? これを綺麗に洗って工房に売るんだわ。これから刃物を使うから、身を乗り出し過ぎないようにな」

 

 覗き込んでいるクマちゃんを慌てて抱き締める。

 

 頭を落とし、内臓を取り出し、骨に沿って身を切る。鮮やかな手つきで瞬く間に三枚にされてしまった。宝魚さん、おいしく頂きます。


「アジも処理するかい? 無料でやるぜ」

「助かるよ。お願いできる? 丸焼きにしたいんだけど」

「あいよ。任せな」

 

 鱗や内臓やしっぽの近くの硬い所も次々と取り除く。速いなぁ。村では滅多にお魚を食べないし、買うにしても既に切り身になっている物ばかりだったから、ついつい見入ってしまう。


「ほい、終わり。随分と熱心に見ていたなぁ。漁師か料理人でもなりたいのかい?」


「いえ、お魚を下ろすのを間近で見る事があまりないので。それに凄く鮮やかで見入ってしまいました」


「こりゃ、嬉しい褒め言葉だねぇ。兄さん、良い子達じゃないか」

「でしょう! もう可愛くて仕方ないんだよ。あっ、魚はこの袋に入れてくれる?」

 

 防水と防臭が施された袋にお魚を入れて貰っている。お魚を買う時には必須だ。見回すと専門で袋や氷を売っているお店もある。ふらりと買いに立ち寄っても大丈夫そうだ。

 

 シン様がお金を払っている間に海を覗き込む。青くて綺麗だ。空は茜色に染まり始め、潮の匂いがする優しい風が吹いている。カモメさんも気持ち良さげに風に乗り、スイスイと飛んでいる。

 

 徐々に海も茜色に染まって来た。僕の白い毛も茜色に照らされて違う物みたいだ。遠くに居る人は影絵みたいに黒いシルエットになり、防波堤に波がぶつかって小さな飛沫が上がる。舐めたらしょっぱいだろうか?


「綺麗だな。闇の国に居ては見られない光景だ」

「そうですね。カハルちゃんと一緒に見たかったです……」

 

 ダーク様が隣にしゃがみ込み、頭を撫でてくれた。


「寂しいか? だが、この綺麗な光景はカハルが望み創り上げた物だ。お前達は常にカハルという創造主と共にあり包まれている。いつも一緒だ。そう考えれば少しは寂しさが薄れないか?」

 

 ヴァンちゃんと共に再度、海を見つめる。カハルちゃんが創ってくれた、涙が出そうな程の綺麗な世界。僕が考えているよりもずっと、カハルちゃんは寄り添い続けてくれているのかもしれない。


「暗くなってきたから帰ろうか。カハルが戻って来たら綺麗な景色だったよって伝えてあげて。凄く喜ぶと思うから。ね?」

 

 シン様に抱き上げられ頷く。今度は一緒に見に来ようと心に決めて。


高級魚である宝魚ゲットです。鱗を取るのが楽でいいですね。

漁師さんは自分で獲ってきた魚を自分の船の前で売っている事が多いです。

闇の国は海に接していないので、ダークも見入っています。


次話は、野菜を収穫したり、バーベキューの準備です。


お読み頂きありがとうございました。

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