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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0121.触手の魔物3

 元通りに戻ってしまった魔物を僕とヴァンちゃんと、剣を手にしたヒョウキ様も加わり連続で攻撃していく。段々とお腹のガードが強くなってきて爆薬が上手く届かなくなってきた。


 そうこうしている間にも触手が増えていき、全員が薙ぎ払われる。体重が軽い僕は大きく吹き飛ばされ痛みを覚悟するが、運よく結界に飛んだ所をカハルちゃんに風魔法でクルンと包まれ、事無きを得る。


「大丈夫? あっ、血が出てるよ。……あいつ、ニコちゃんに傷を付けるなんて!」


「大丈夫です。たいした傷じゃないですよ」

 

 カハルちゃんが安心するように抱き締めてあげると、僕のズボンの後ろポケットをごそごそし始める。うひょう、くすぐったい。どうしたのだろう?


 見るとカハルちゃんがダーク様から預かっていた瓶を僕のポケットから取り出し、蓋を開けると中身を一気に飲み干した。


「――ぐっ、――うぅっ」

 

 凄く苦しそうな表情で自分の体を抱き締めている。ダーク様が体に負担が掛かるって言っていたもんね。


「カハルちゃん、しっかりして下さい!」

 

 額に汗を浮かべながら、カハルちゃんが薄っすらと笑う。こんな時まで僕を気遣わなくてもいいのに。背中を撫でてあげながら見守っていると、少しずつ表情が穏やかになってくる。髪の毛を撫でてあげた途端、一気に姿が変わった。


「わっ!」

 

 驚いてひっくり返りそうになった僕を、大人になったカハルちゃんが抱き上げてくれる。


「ごめんね。ニコちゃん、大丈夫?」

「あっ、はい。カハルちゃんこそ痛い所はないですか?」

「うん。平気」

 

 ほっとする僕を床に下ろし頭を撫でてくれる。


「ニコちゃんはそこから動いたら駄目だよ」

「でも、僕も少しは役に立つ筈です」

「気持ちだけ貰っておくね。私、いま物凄く腹が立っているの。だから、私の力で傷付かないように其処にいて欲しいの」

 

 カハルちゃんの腕から赤い稲妻の様なものが出始め、あっという間に全身を覆っていく。その輝きは急速に増していき、大きなバチバチという音が耳を打つ。かなりお怒りのようだ。


「みんな、退いていて。一気に片を付ける」

「カハル!」

 

 ヒョウキ様が嬉しそうな声を上げ、抱き締めようとすると、セイさんが襟首を掴み引き摺って行く。


「おわっ、セイ、首が絞まっているから!」

「もっと絞めて欲しいのか?」

「いえ、なんでもありません……」

 

 爆薬をパチンコで撃った後に、ヴァンちゃんが走り寄って来る。


「カハルちゃん、ニコ」

「ヴァンちゃん、ありがとうね。今からあいつを丸ごと吹き飛ばすから」

 

 嬉しそうに頷いたヴァンちゃんに、にこっと笑い掛けたカハルちゃんが、ずんずんと魔物に近付いて行く。伸ばされてくる触手は、カハルちゃんを包み込む赤い稲妻に撃たれて、瞬く間に灰に変わる。


「――しつこい。消えろっ」

 

 カハルちゃんが苛立ったように上げた声と共に、体の周りの赤い稲妻が一気に膨れ上がる。空間全体がビリビリと震え始め、僕と一緒に結界に入ったヴァンちゃんが、ごくりと唾を飲む。


 部屋全体に赤い稲妻が降り注ぎ始めた。ひぃっ、と思わず頭を抱える。視線の先でヒョウキ様が慌てて結界を張っている。

 

 ドゴォーーンと近くに太い稲妻が落ち地面が抉れた。……えっ、これって僕達もまずいんじゃないの⁉


 完全にキレたカハルちゃんの稲妻は恐ろしい程の威力になっている。稲妻が目の前を凄い速さで横切る。顔の真ん前だった為、ビクッとヴァンちゃんの肩が揺れる。


「好き放題して、皆を傷つけて、覚悟は出来ているんでしょうね?」

 

 ひょうぅぅっ、怖すぎる! 優しいカハルちゃん、早く戻って来てー!

 

 赤い稲妻の光量がガンガン上がり、真っ白に変わっていく。殆ど稲妻で触手を焼き切られた魔物が焦っているように見える。そりゃあ、こんな攻撃が自分を襲うって考えたら……。うぅっ、ぶるぶるぶる……。思わずヴァンちゃんの手を握ると、ヴァンちゃんも怖かったのか手が冷たい。


「やっと……やっと、ニコちゃんとヴァンちゃんと普通にお話しできるようになったのに……。二度と来るな! この、バカーーーーーッ!!!!」

 

 思いっきり罵倒したカハルちゃんが放った稲妻が四方八方から魔物を襲う。抵抗も出来ずに光に呑み込まれて行く魔物。最後に光がドンッと大爆発を起こし、あまりの眩しさにギュッと目を瞑り更に腕で覆う。


 シーンと耳に痛いほどの静寂が訪れたので恐る恐る手を退けると、眩しさは無くなっていた。


「魔物は?」

「居ないみたいだよ?」

 

 ヴァンちゃんと歓声を上げて抱き付き合う。やったー!


「カハルちゃん、大きくなって良かったよね。ヴァンちゃん、行こう!」

「うむ。行こ……う?」

 

 ヴァンちゃんの声が途切れたのを不思議に思い視線を追っていくと、小さな何かが布の中でうごうごとしている。少しずつ足が速くなる。えっ? えっ? ええええっーーーー⁉


「ちっさ! えっ、カハルちゃん⁉」

「小さい……」

 

 ペルソナと戦って小さくなってしまった時よりも、更に小さくなっている。目すら開いていない。ヴァンちゃんがそっと抱き上げると、ヒョウキ様達が近寄って来た。


「カハル⁉ こんなに小さくなっちゃって……。えっ、一から魔力供給し直しって事⁉ マジか!」


「ヒョウキ、大きい声で騒ぐな」

「おっと、わりぃ、セイ。衝撃がでかすぎて」

「やっと大きくなった所だったのに……」

「ニコ、しょうがない。さっきの攻撃で魔力を使い果たしたんだろう。他に方法があれば良かったんだが……」


 さっきのカハルちゃんの渾身の罵倒は、この状態になる事が分かっていたからだったんだ。僕も魔物に一言物申したい。この、アホーーーーーッ!!!!


触手の魔物はこれで終了です。

そして、第二章もここで終わりです。まだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします。


カハルがまた小さくなってしまいました。どこまで縮むのか……。


次話は、シンとの契約についてです。


お読み頂きありがとうございました。

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