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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0115.シッポ愛好家

「お待たせしちゃったねぇ。これメニューね。お嬢ちゃんは、ご飯は食べられるのかい? リンゴを擂り下ろしてあげようか?」


「気遣ってくれてありがとう。お願いしていいかな?」

 

 カハルちゃんも食べられる物があったようで良かった。ええと、今日の日替わりは何だろう? 黒板に書いてあるけど、他のお客さんで見えないなぁ。


「もちろんだよ。今日の日替わりはロールキャベツだよ」

「あっ、ありがとうございます。ヴァンちゃん、それにする?」

「うむ。既に匂いがうまい」


「あはははっ、ありがとうね。匂いが美味いだなんて嬉しいねぇ。皆、それにするかい?」


「クマちゃんはどうするの?」

「クマはそんなに食べられないでキュ。誰かのを分けて欲しいキュ」

「じゃあ、僕が大盛を頼むから分けっこしよう」

「モキュ!」


「じゃあ、直ぐに用意するからね。お水がポットに入っているから好きに飲んでおくれ」

 

 コップはこれだな。並べ終わるとシン様が注いでくれる。僕は紅茶を飲んだばっかりだから後で飲もうっと。一方、クマちゃんは喉が渇いていたのか、シン様がスプーンで掬ってあげた水をゴクゴク飲んでいる。


「ぷはぁーでキュ」

「もう一杯飲む?」

「もういいでキュ。ありがとキュ」

「あんた達、見ない顔だねぇ。遊びに来たのかい?」

 

 隣の席の人が興味津々で話し掛けて来た。ここはシン様にお任せしよう。


「そうなんです。久し振りに休日が一緒だったので、土の国に遊びに来たんですよ。よかったら、お薦めのお店を教えて頂けませんか?」


「おう、任せな。隣の肉屋は行ったかい?」

「はい、先程寄らせて頂きました。揚げ物が美味しかったですよ」


「だろう! 俺もよく行くんだわ。斜め向かいにあるパン屋は行ったかい? あそこは何を食べてもうまいし安いんだよ」


「まだなので、うちの子達と行ってみますね」

「ああ。――いや、ちょっと待て。兄さん、もしかして父ちゃんなのかい⁉」

「はい、そうですが」


「こりゃ、たまげたな。てっきり兄妹かと思ってさぁ。おう、女将、父ちゃんなんだと」

 

 その言葉に店内の人の視線が僕達に集中する。ああ、カハルちゃんがシン様の服に顔を埋めちゃった。


「みんな、あんまり見るんじゃないよ。お嬢ちゃんが顔を隠しちまったじゃないか。自分の残念な人相をよく思い出しな」


「女将、ひでぇ。カッコイイ男ばっかりだろう?」


「なーに言ってんだい、この髭もじゃ! 髯を剃ってから出直しな。――煩くて済まないね。お待ちどうさま。これが大盛で、クマちゃん用の取皿とスプーンとフォークね。一応、子供用だけど無理かねぇ」

 

 女将さんがクマちゃんとフォークを比べている。うん、無理かも。


「僕が食べさせるから大丈夫。色々とありがとう」

「どういたしまして。みんな、よく勉強しな。この人のような男をカッコイイって言うんだよ」

 

 皆が口々に言い返してくるかと思いきや、一斉に頷いている。やっぱり、シン様はどこに居ても凄い人だった。


「おとうちゃ、かっこいい。わたちのじまんなのぉ」

 

 うわぁ……。全員、顔面筋が崩壊した。笑顔なのにちょっと怖い。


「娘はいいねぇ。うちなんて生意気盛りでよぉ。この前なんか脛を蹴られて痛ぇのなんの」


「分かるわ~。うちも男ばっかでよ。言われてぇよな。娘に笑顔でお帰りなさいってよぉ」


「そんなの幻想だぜ。うちの娘なんてツーンてして自分の部屋に行っちまうわ」

 

 悲しきお父さんの集まりになってしまった。背中に哀愁を感じる。肩を叩いてあげるべきか。


「みんな、お食べ。冷めちゃうよ?」

 

 そうだった。熱々のロールキャベツが僕を待っている。トマトで煮込まれている大きな塊にナイフを入れると、肉汁が大量に出て来た。


「ふおぉぉ! いただきます。はむっ」

 

 テンションが上がった勢いのまま口に放り込む。ぎゃあぁぁ、熱い熱い! 誰か水を下さい! を言葉にしたくても出来ずにジタバタしていると、シン様がコップを口に当てがってくれたので勢いよく飲む。


「――ゴクッ、ゴクッ。だぁぁ、熱かった……」

「ニコちゃ、ぶじ?」

「はい、何とか……。ありがとうございます。カハルちゃん、シン様」

「どういたしまして。ゆっくり火傷しないように食べてね。そうしないと、カハルが八の字眉毛になっちゃうから」

 

 おっと、見事な八の字――じゃなかった。どうもお騒がせして、すみません。

 

 ヴァンちゃんは慌てる事無く食べ、シッポをピコピコさせている。斜め後ろの席の人がそれを凝視し、更にその人を僕が凝視する。危ない人だったらどうしよう……。


「ニコちゃん、何を見ているの?」

 

 その言葉にビクッとしたのは凝視していた人もだった。


「うちの子に何か御用でも?」

 

 シン様の冷たい声に更に肩を跳ねさせている。


「ん? どうした? あっ、火の国の魔法道の人。こんにちは」

「あっ、やっぱりヴァンちゃん? よかった~。こんにちは」

「知り合いの人かな?」

「そう。魔法道の係の人。動物好きで俺のシッポをよく見ている」

 

 そこかしこから危ない奴か? と言っている声が聞こえる。僕の拳はいつでも準備万端です。


「ち、違うっ! 俺はシッポやモフモフが好きなだけだ。嫌がる様な事はしないって誓うから!」


「実害は無い。見るだけ。だから、この前、シッポをブンブン振ってバイバイした」

 

 男の人の頷きが必死過ぎる。シッポだけでヴァンちゃんか確認しようとするとは、中々のシッポ愛好家だ。


「さっきから何を騒いでいるんだい? 問題を起こすようなら出てっておくれ」

「女将さん、大丈夫。俺のシッポのファン」

「シッポ? あらあら、可愛いシッポだねぇ~。あんた、分かってるじゃない。仲良く食べるんだよ」

 

 女将さんに背中をバンバン叩かれて噎せている。ガンバレ、シッポ愛好家。

 

 その後はおいしい料理をゆっくりと堪能し、まったりと過ごした。


クマちゃんの身長は20センチ程なので、フォーク(15センチくらい)とほとんど変わりません。

クマちゃんが持つと槍のようになりますね。

ニコちゃんの拳が唸る事にならなくて良かったですね。シッポ愛好家は各国に居ますよ!(笑)


次話は、お薦めのパン屋さんに行きます。


お読み頂きありがとうございました。

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