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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0114.涎注意報発令

「あっ、あそこじゃないですか⁉ お肉屋さんとパン屋さんがありますよ」

 

 食べ物屋さんが多い所為か、いい匂いの集中攻撃だ。涎が出そうです……。


「あったねぇ。でも、ここは建物の裏手みたいだから、お肉屋さんの横から周って行こうか」


「はい。あー、メンチカツだ! おいしそう……じゅるり」

「ニコ、涎注意報発令」

「んぶっ」

 

 ヴァンちゃんが僕の口を手でボフッと塞ぐ。


「はははっ、仲が良いねぇ。よかったら、メンチカツを味見するかい?」

「んういでふぅか⁉」

 

 僕の言葉にならなかった「いいんですか⁉」の所為だろうか? シン様の肩が凄く揺れている。


 肉屋のおじさんは豪快に笑い、丸いメンチカツを四分の一にカットして、それぞれに渡してくれる。


「いただきまーす。はむっ。――おぉ、ジューシー!」

「いただきます。――うまっ。肉汁いっぱい」

「カハルはまだ止めておこうか」

「うー……」

 

 悲しそうにカハルちゃんがメンチカツを見つめる。


「おっと、こりゃ済まない。ちいちゃいもんな。あっ、ハムの試食にするかい?」

「おじちゃ! あんがとぉ」

「ちょっと待ってな。今、持ってくるからな」

 

 その間にカハルちゃんの分のメンチカツをシン様から貰い、ヴァンちゃんと分けて食べる。う~ん、おいしい……。


「うちの自慢のハムだよ。食べてくんな」

「ありがとにゃの。いただきましゅ」

 

 小さくカットされたハムを嬉しそうにもぐもぐしている。んふふふ、食べられる物があって良かった。


「お兄さんたちも食べてみとくれ」

 

 わーい! ハムも食べられる~。うまうま。もっと食べたいなぁとショーケースを覗く。おっきなハム……。


「うん、おいしいね。帰りに買っていこうね。ハムステーキにしてあげるよ」

「いいんですか⁉ わーい!」

 

 ヴァンちゃんの手を掴み、一緒にバンザイだ。おっ、カハルちゃんがペチペチと拍手をしている。


「はははっ、そんなに気に入ってくれたのかい? こりゃ、嬉しいね。他にも欲しい物はあるかい? 揚げ物は時間を言ってくれりゃあ、揚げ立てを用意しとくよ」


「うーん、どうしようかな……。粗びきの挽肉一キロとウインナーが二十本欲しいな。揚げ物も凄く美味しかったけど次回にさせてもらうよ。昼ご飯を食べたら受け取りに来るね」


「あいよ。用意しておくぜ。楽しんでおいで」

「はーい。では、また」


 手を振り宿屋さんに向かう。おっ、入口みーっけ。

 

 カランカランとドアベルを鳴らしお店に入ると、料理の匂いやお酒の匂い、人の熱気と視線が向かって来る。うわぁ、繁盛してるなぁ。


「はい、いらっしゃい。四名様? ごめんなさいね、今は満席なんだよ。二十分位で席が空くと思うんだけど、お待ち頂けるかい?」


「連れがもう一人居てね。その位で用事が終わると思うから、後でまた来るよ」

「あいよ。それじゃあ、六人掛けのテーブルを取っておくよ」

「いや、小さい子だから四人掛けで大丈夫だよ」

「子供用の椅子が二つしか無いんだけど大丈夫かい?」

「うん、平気。それじゃあ」

「済まないね。待ってるよ」

 

 女将さんも元気いっぱいで賑やかな店だったな。


「一旦、ビジュ・コパンに戻ろうか」

「はい」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「いらっしゃ――、あぁ、シン様。申し訳ありません、もう少しだけお時間を下さい」


「うん。いいよ」

 

 お店の中をプラプラと歩いていると、トオミさんが奥から手招きしてくる。んん? 奥に入ってもよろしいので?


 作業場の横を通り、更に奥へと進むと居間のようだ。自宅兼お店になっているんだ。


「ここでお茶でも飲んでいてくれ。紅茶でいいか?」

 

 頷き椅子の上で足をプラプラさせながら待つ。あの棚のぬいぐるみさんは古そうだなぁ。この家に代々引き継がれている物だったりして。


「お待たせ。菓子は余り食べないから置いてないんだ。悪いな」

「いいよ、気にしなくても。これからお昼だしね。紅茶をありがとう」

「ああ。ゆっくりしていってくれ。俺は作業場に居るから、困った事があったら言ってくれ」

 

 いただきます。――うっ、渋い……。抽出時間を間違えたんだろうか? シン様も微妙な顔で止まっている。


「ミルク貰う」

「そうだね、ヴァンちゃん。お砂糖も貰ってミルクティーにしよう。ニコちゃん達はここでカハルと待っていてね」

 

 シン様が紅茶を回収すると席を立ち、トオミ君を呼んでいる。眠っているカハルちゃんをこの間にナデナデしちゃえ。


 ヴァンちゃんと交互に頭をそっと撫でつつ、まったりと過ごす。良い休日ですな。


「お待たせ。甘くしたから飲んでごらん」

「――うんっ、おいしいです」

「甘い」

「済まない。茶葉の量を間違えた」

 

 トオミさんが落ち込んだ顔をしている。


「誰でも間違える。気にしちゃ駄目」

「そうですよ。それに美味しいミルクティーが出来たので問題無いです」

「そう言って貰えると助かる。俺も父も、あまり料理が得意ではなくてな」

 

 意外だ。手先が器用だから上手そうなのに。それとこれとは別問題なのだろうか?


「ミルクティーにするには最適な分量だったんだけどね。料理が苦手なら僕が少し教えてあげようか?」


「シンさんが?」


「トオミさん、シン様のお料理はとーっても美味しいですよ。ねっ、ヴァンちゃん」


「うむ。グラタン最高。沢庵は一生、ご飯のお供」

 

 トオミさんだけ不思議な顔をして、うちのメンバーは全員噴き出し掛ける。どんだけ沢庵好きなの、ヴァンちゃん!


「あー、たくあんっていうのは分からないが、何か簡単に作れるものを教えて欲しい」


「うん。食べ物は何が好きなの?」

「父は魚が好きで、俺は野菜が好きだな」


「うーん……じゃあ、後で包焼を教えるよ。僕達はそろそろお昼の予約時間だから行くね」

 

 おっと、大変だ。残っている紅茶を一気飲みする。ぷはぁー、甘くておいしい。


「シン様、お待たせ致しました。クマちゃん、どうもありがとうございました。何かお礼をさせて下さい」


「もう貰ってるでキュ。迷惑を掛けたのに助けて貰ったでキュ。クマの方が何かお礼をするでキュ」


「いえいえ、そんな大した事はしていませんから」


「二人共、大丈夫だよ。僕が後でトオミ君に料理を教えてあげる事になっているから、釣り合いが取れるよ」


「シン様はお料理が得意なのですか? 羨ましいですね。私達は中々、上達しません。この前も目玉焼きを真っ黒にしてしまいました」


「あれは、父さんが途中で目を離して本に夢中になったからだ。ぬいぐるみ作りは最高の腕を持っているのに、他は何か抜けているよな」


「面目ない。妻にもよくドジをしては笑われていました」

 

 別の部屋に居るのかな? ご挨拶しなきゃ。口を開こうとしたら、ヴァンちゃんが僕の手を握り首を振る。どうした……ああ、そうか。亡くなられているんだ……。そうでなければ、あんな寂しそうな目をしている理由が無い。


 ヴァンちゃんに小声で「ありがとう」を伝える。ヴァンちゃんにはいつも助けて貰ってばかりだ。繋いでいる手から感謝の念を送っておこう。ふおーっ!


ヴァンちゃんの沢庵好きが止まりませんね。とうとう一生のお供になりました。

リトルさんはしょっちゅう料理を焦がしたり、味付けを忘れます。

トオミ君は味付けが濃くなり過ぎる事が多いです。


次話は、宿屋さんで昼ご飯です。


お読み頂きありがとうございました。

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