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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0111.神様への畏怖

「カハルちゃんが出していた宝石もこの鉱山から出したんですか?」

「ちがうのぉ。わたちのおやまなの」

 

 カハルちゃん、鉱山持っているの? シン様もさっき所有している鉱山の内の一つって言っていたよね。もしかしなくても二人って凄いお金持ち?


 尊敬の眼差しで見つめていると頭を撫でられた。


「ニコちゃんのそういう所が好きだよ。そのままでいてね」

 

 どういう所? と首を傾げる。


「クマ、分かるでキュ。羨ましいや欲しいじゃなくて、ニコちゃんは尊敬したでキュ。そう思える事が素晴らしいのでキュ」

 

 普通じゃないのかな? とヴァンちゃんと首を傾げる。その人のお金は頑張ったその人の物だ。羨ましい気持ちが無いと言ったら嘘になるけど、僕も頑張ってお金持ちになってやるぞーという気持ちの方が大きい。


「ニコちゃ、いいこ、いいこ。だいちゅき」

 

 おぉう、大好きを頂きました。やったよー。


「ヴァンちゃんもだいちゅき。みんにゃ、いいこなのぉ」


「ねぇ。僕がお金持ちだと知った途端、手の平を返す人間やすり寄って来る人間が多くてね。まぁ、そういう奴には心根を入れ替えて貰える様に諭してあげるんだよ。このお金は僕と僕の大事な人達が幸せに暮らす為に使うのであって、君達にあげる事は無いよってね」

 

 薄っすらと笑うシン様を見て、背中を寒気が走る。諭すって言っているけど、一生忘れられない程の恐ろしい目に遭わされる気がひしひしとする。


 僕の普通の感覚、ありがとう! 僕は自分で幸せなお金持ちになるぞー! と決意した僕の隣では、ヴァンちゃんが恐怖で逆立ってしまった毛を撫でている。僕も直そう……。


「ごめんね。思い出したらイラついちゃって。カハルも撫でてあげてくれるかな?」


「うんっ。こあくないにょ。よちよち」

 

 あー、癒される。抱っこしているクマちゃんもぽしぽしと腕を叩いてくれた。そんな僕の横では、ヴァンちゃんがシン様に撫でられて体を強張らせている。


「困ったなぁ……。ごめんね。僕の事を嫌いになっちゃった?」


「嫌いじゃない。でも、時々、雰囲気が激変してビクッとする。シン様の怒りは何だか普通と違う」


「あー、そうか……。僕は神だから、人の怒りの感情よりも、より深く影響を受けるのだろうね。うーん、どうしようかな……。一緒に住むのを止めるかい?」

 

 ヴァンちゃんが驚いて目を見開く。


「――嫌だっ! 一緒に居る!」

 

 こんなに強く主張するヴァンちゃんは非常に珍しい。ズボンを強く握られたシン様が目を丸くして見下ろしている。束の間、見つめ合った後にシン様が膝を折り、少し揺れる瞳で話し出す。


「いいの? 僕の感情による影響はこの先も続くよ。心が疲弊する前に退くのも一つの手だよ。それで、クビにしたりはしないよ」


「それも、シン様の一面。それで今までの優しさが損なわれる訳じゃない。俺が感じた物の正体が神様に対する畏怖だと分かったから、もう平気。それでも、一緒に居る事を願うのは駄目?」

 

 シン様はふわりと優しく笑み、ヴァンちゃんを抱き締めると、小さな声で「いいよ」と答える。


「だけど、何故そこまで僕に気持ちを向けてくれるの? 正直、ヴァンちゃんに好いて貰えるような行動をした覚えが無いんだよね。カハルが好きというのなら分かるけど」

 

 本当に自覚がないらしい。シン様って意外と鈍感で不器用なのだろうか?


「おとうちゃ、はくちゃんたちに、いっちゅも、わたちにむけてくれるみたいなめをちてるよ」


「そうですよ。あんなに優しい眼差しで見てくれる方を好きになるなという方が難しいです」


「そう……なの? 可愛くて素直で良い子達だと思ってはいたけど、顔にも出ていたんだ。――自分で思っていたよりも、ずっと気に入っていたのか……」

 

 後半は良く聞こえなかった。独り言かな?


「ありのままの俺を受け入れてくれた。もう十分、好きになるだけの理由はある」

 

 出た、ヴァンちゃんの天然の殺し文句が!

 

 シン様が珍しく目元をほんのり赤くさせると、ヴァンちゃんに見られないように胸に抱き込む。ふっふっふ、照れてますね。僕も時々、ヴァンちゃんの天然にやられるので良く分かる。


「おとうちゃ、よかったねぇ」

「うん。今日は最高の日だよ。ヴァンちゃん、ありがとう」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 仲良し度が上がった僕達の次の目的地は、土の国の『ビジュ・コパン』だ。

 

 ミナモ様に教えて頂いた道を辿って行く。こっちでいい筈……。道が狭くなってきたので、皆を先導している僕は段々と不安になってきた。


「ニコちゃん、あそこじゃない? 看板が出ている家があるよ」

 

 朗報が! 確認すべく走って行って見上げる。――うん、間違いない。ここだ!


「シン様、このお店です!」

 

 手を振ると、にっこり笑ったシン様が右腕にカハルちゃんを抱っこし、頭にクマちゃんを乗せ、左腕にヴァンちゃんを抱っこしてやって来る。肝っ玉お父さんだ。


「このお店にニコちゃんを助けてくれた人が居るんだね。じゃあ、行こうか」

「はい。肝った、あ、間違えた! シ、シン様」

 

 きもった? と訝しげに皆が僕を見る。まずい、まずい。さっき思った事が口から出掛かった。えへへへ、と笑って誤魔化しながらドアノブに手を伸ばす。うぅっ、視線が痛い……。


「いらっしゃいませ。中へどうぞ」

 

 開ける前にお店の人が気付いて開けてくれた。


「お邪魔します」


「どうぞどうぞ。こんなに可愛らしいお客様に来て頂けて光栄です。――あなたは……」


「こんにちは。先に入らせてね」

「これは失礼致しました。どうぞ」

 

 あれ? シン様と知り合いなのかな?


「遮ってごめんね。魔国の執務室であったよね。このお店の人だったんだね」


「はい。あの時はミナモ様にお取次ぎ頂き、ありがとうございました。私は『ビジュ・コパン』の店主、リトルと申します。お名前をお伺いしても?」


「僕はシン。この子が娘でカハル。下に居る子がニコちゃんで左腕に居るのがヴァンちゃん。頭に居るのがクマちゃん。よろしくね」


「はい、よろしくお願い致します。……あの、クマちゃんはお名前でしょうか?」


「そうでキュ。ほら、にゃんちんのネーミングセンスの悪さの所為でキュよ。新しい名前を考える気になったでキュか?」


「えー、くまちんはくまちんだもん。いまからかえるにゃんて、やー」

「やーじゃないキュ。齧るっキュよ」

「はいはい、じゃれないの。リトルさんが困っているよ」


「いえ、私の質問の所為で、このような事に……」

「おじちゃ、ごめんにぇ。けんかじゃないの。いちゅもこんにゃかんじよぉ」

「そうでキュ。いつも軽口を叩き合っているだけでキュ」

 

 心配そうに見ていてたリトルさんの顔がやっと緩む。


「仲良しなのですね。安心しました。今日はぬいぐるみをお求めに?」


「ぬいぐるみも見せて欲しいのだけれど、うちのニコちゃんが息子さんに助けて貰ったから、お礼を言いに来たんだよ」


「おや、トオミがですか。今、呼んで参りますので、よろしければ店内をご覧下さい」


「うん、ありがとう」


シンが本気でイラッとすると体に変化が起きますね。

ヒョウキと言い争っている時にこうなったら、本気の合図です。

ヴァンちゃんが人間だったら、女の子に囲まれていそう……。罪な子ですね~。


次話は、クマちゃんがピンチ! です。


お読み頂きありがとうございました。

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