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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0107.日頃の感謝を込めて

 午後も順調に配達を終えて土の国の魔法道へと急ぐ。視線の先に赤い髪が見えたので咄嗟に隠れる。こっそり覗くと部長補佐さんだった。鉢合わせはご遠慮したい。


 魔法道から戻って来たようだ。足取りに力がなく項垂れて独り言を呟いている。


「あー、ミナモ様が怖すぎる。何なんだ? あの冷たい目。心が凍りそうなんだけど……。ミナモ様って一気に止めを刺さずに、じわじわと追い込んでくるんだよな。毎回、正論でぐっさぐっさと刺してくるから反論も出来ないし。ちょっとしたら十倍以上で返ってくるもんな。はぁー、あのもふもふの子がまた来てくれないかな……。代表者の一名は顔を見せに来なさいなんて廃止になんないかな……。はぁーーー……」

 

 深ーい溜息を吐いてトボトボと立ち去って行く。ミナモ様は僕個人が恨まれないように、あんな風に言ってくれていたのか。会計への書類が無いし、今まで鉢合わせる事も無かった。きっと、ミナモ様が気を配っていてくれたからだ。心の中で感謝し決める。帰ったら肩叩きをしよう。直接言っても、「何の事でしょう?」とはぐらかされてしまうに決まっている。僕は隠れていた所から元気に飛び出し魔国へと向かった。



「ただいま戻りました」

「お帰りなさい。困った事はありませんでしたか?」

「はい、大丈夫です。いつも気遣って頂きありがとうございます」

「いえいえ。ニコちゃんに気持ちよくお仕事をして頂けるなら、こんなに嬉しい事はありません」

 

 優しい眼差しで僕を撫でてくれる。冷たい目なんて想像もつかない。まぁ、いいや。僕は僕の感性を信じよう。


「ミナモ様、日頃の感謝を込めて、肩叩きさせて下さい」

「いいんですよ? 気を遣わなくても」

「ミナモ、やってもらえ。ずっと机仕事で疲れているだろ」

 

 ヒョウキ様の一言に僕が大きく頷くと、躊躇いながらも椅子に座ってくれた。


「それじゃあ、始めますね」

 

 トントンとリズミカルに叩く。思っていたよりも大分凝っている。揉んだ方がいいかな? うんしょーと。


「痛くないですか?」

「はい、大丈夫です。とても気持ちがいいです」

「それは良かったです。僕、頑張っちゃいますよ!」

 

 ミナモ様が優しく笑ってくれたのに気を良くして肩を揉む。少しでもミナモ様のお力になれるといいなぁ。


「ただいまー」

 

 シン様達が帰って来た。


「ミナモ、気持ち良さそうだな」

「ダーク様、このような姿で――」

「責めた訳じゃないから、そのままやって貰え。俺もやって貰った事があるんだが、ニコは肩叩きが上手だろ」

 

 ミナモ様がほっとしたように座り直してくれたので、ニンマリしながら続ける。褒められてしまった。


「ただいま戻りました」

「ヴァンちゃん、お帰り」

「シン様、ただいま戻りました。ニコは……居た」

「ヴァンちゃん、お帰り」

「俺もやる」

 

 ヴァンちゃんがそう言うと、他の人が次々に立候補してくる。


「俺も肩叩きして欲しいな」

「ヒョウキは却下だ。ヴァン、俺にしておけ。後で菓子をやるぞ。どうだ?」

「僕もお願いしたいな」

「わたちもたたきゅー」

 

 一斉にカハルちゃんに視線が向かう。皆の間に火花が見える。カハルちゃんに肩叩きをして貰う権利は誰の手に⁉


 だが、ヴァンちゃんはこんな時でもマイペースだ。


「ニコ、代わる」

「うん、よろしく。ヴァンちゃん」

「うむ。ミナモ様、辛い所はありますか?」

「では、腕をお願い出来ますか?」

「了解です」

 

 じゃあ、僕も片方やろうっと。二人でせっせと揉む。腕も大分張っている。疲れが溜まっているようなので、解れろーと念じながら揉んでいく。そんな僕達の横では激しい戦いが起こっているようだ。


「いや、俺だろ? ずーっと書類仕事していたんだぞ」

「俺は書類仕事もして魔物討伐もしている。俺だろ」

「二人共、何を言っているのかな? 娘に肩を叩いて貰うのは父親の特権でしょう」

 

 三人がセイさんに抱っこされているカハルちゃんに一斉に向かう。誰を選ぶのかな?


「みんにゃ、けんかちてるから、だめにゃの。セイをトントンしゅるね」

「そうか、嬉しいな。じゃあ、頼めるか?」

「うんっ」

 

 予想外の展開だ。三人とも顔にはあまり出ていないが肩が落ちている。ショックで動けない三人を余所に、カハルちゃん達は非常に楽しそうだ。


「セイ、いくよぉ」

「ああ。俺が支えているから頼むな」

「うんっ。トントン、トンチョン♪」

 

 支えていたら肩こりは治らないのではないだろうか? まぁ、セイさんが幸せそうだからいいか。


「チョンって! ぐあぁーっ、悔しいっ! 俺の肩を叩きながら言って欲しかった……」


「それは俺の台詞だ。もう帰る。じゃあな」

 

 そう言うとダーク様が不機嫌そうに帰ってしまった。ダーク様が不機嫌になるなんて珍しい。よっぽど悔しかったのだろう。


「じゃあね。僕は家でやって貰おうっと」

「ずるっ!」

 

 シン様がヒョウキ様を勝ち誇ったように見て鼻で嗤う。あー、そんなに挑発しちゃ駄目ですよー。


「ニコ、後は頼んだ」

「うん? 分かったよ」

 

 ヴァンちゃんが椅子から飛び降りてヒョウキ様に近付き、ズボンをくいっと引っ張る。


「ヒョウキ様、手が空いた。俺でもいい?」


「ヴァン! 何て良い奴なんだ……。それじゃ頼むな。シン、聞いたか? お前もヴァンの優しい心を見習え」


「ヒョウキに優しさなんてあげる訳ないじゃない。何言ってるのさ」

 

 うわぁ、キツイ。でも、本気で嫌っている訳じゃないよね?


「ミナモ様、あれは喧嘩しているんでしょうか?」


「違いますよ。昔からの知り合いなので軽口を叩き合ってストレスを発散しているだけです」


「へぇ、そうなんですか。それなら安心ですね」

「はい。ニコちゃんの心が痛むような事をあの方達がする筈がありませんから」

 

 だが僕は気付いていなかった。ミナモ様が二人をじっと見て圧力を掛けている事に。


「ニコちゃん、とても楽になりました。ありがとうございます」

「はい。お役に立てたのなら何よりです。また、辛くなったら言って下さいね。いつでも肩叩きしますから」

 

 にっこりと笑ってもらえたので嬉しくなる。ヴァンちゃんは終わったかな?


「ヴァン、あんがとな。すげぇ楽になった」

 

 ヴァンちゃんがコクッと頷くと僕の方に来た。


「それじゃあ、帰ろうか。クマちゃんをフォレストの所に迎えに行くよ」


結局、誰もして貰えずでした。ダークが拗ねた(笑)。

セイの肩は凝っていませんが、嬉しかったので、ありがたくやって貰っています。

シンとヒョウキが本気で喧嘩する事はほとんどありません。

ニコちゃんが心を痛めていたので、けん制しただけです。


次話は、盛大に噎せます。


お読み頂きありがとうございました。



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