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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0102.セイさんとクマちゃん

 何とか騒動は収まり、配達も終えて家に帰る。今日は疲れた……。

 

 扉を開けると、シン様に面差しが似ている美青年と、二十センチ程の白熊さんが待っていた。


「あれ、セイとクマちゃん、お帰り。治療が終わったの?」

「セイ、おきゃえり~」

「ああ、ただいま。退院していいとフォレストに言われてさっき帰って来た」


「ただいまでキュー」

「クマちゃん、ごめんね。長い事、フォレストの所に居て貰って」

「問題ないでキュ。にゃんちん、ただいまでキュー」

「おきゃえり、きゅまちん」

 

 随分と仲が良い。どういう関係だろう?


「ニコちゃんとヴァンちゃんに紹介するね。こちらがセイと云って僕の息子。こちらの白熊さんがクマちゃんだよ。仲良くしてあげてね」


「えっ? クマが名前ですか?」


「そうなんでキュ。にゃんちんはネーミングセンスがないでキュ。クマの事も気分で、『くまごろう』とか『くまきち』とか呼んで来るんでキュよ」


「きゅまちんだって、『ねこ』とか『にゃんきち』ってよぶよぉ」

「ふふーんでキュ。お互いさまでキュ」

 

 本当に仲が良い。少し嫉妬してしまいそうだ。


「クマちゃんは、カハルの本体がある日本でぬいぐるみとして生まれたんだよ。それでね、長く一緒に居た所為か、カハルみたいに、こちらと日本を行き来できるようになってね。クマちゃんの場合は体ごとこちらに来るよ」

 

 ぬいぐるみさんなんだ。でも、何だか生身のような感じがする。触ってもいいだろうか?


「クマは、こっちに来ると生身の体に変わるんでキュよ。不思議っキュよね」

「おぉ、凄い。触ってもいい?」

「どうぞでキュ。ヴァンちゃんで合ってるキュか?」

「合ってる。――ふわふわだ。肉球小さい。ニコも触るか? 可愛いぞ」


「うんっ。失礼します。おぉ、ふわふわ!」

「二人もふわふわでキュ。羨ましいでキュー? にゃんちん?」

「ずるい、くまちん。わたちもまじぇて、まじぇて」

 

 皆でひっついて幸せを味わう。今日の大変な出来事が浄化されていくようだ。


「クマちゃん、何でにゃんちん? 名前と全然違う」

「ヴァンちゃん、それはでキュね、あだ名なんでキュよ。にゃんちんは行動とかが猫っぽいのでキュ」

 

 ほぉ、猫っぽいのか。人懐っこい感じを受けていたけど、日本では違うのかもしれない。こちらの世界の方が心を許しているのかな?


「さぁ、みんな、お風呂に入っておいで。カハルは僕の所においで」

「うん。みんにゃ、いってらっしゃい~」

 

 カハルちゃんに見送られてお風呂に向かう。セイ様は紫紺の髪で、目に掛かる長めの前髪が格好いい。何というか色気? みたいなのがある人だ。顔立ちは非常に整っていてシン様に似ているけど、セイ様は夜の静けさみたいな印象を受け、シン様は光のような華やかさを感じる。全く正反対な親子だ。


 うんしょと服を脱いで横を見ると凄かった。何あの筋肉! 細マッチョだ。うわぁー、凄い。バキバキの腹筋触らせてくれないかな。


「ニコ、じっと見られると脱ぎにくいのだが……」


「えっ、あっ、すみません。素晴らしい筋肉だなぁと思って。あの……もしよかったら触らせて貰ってもいいですか?」


「ああ、構わないが」

「俺も触りたいです」

「ヴァンもか? 触っても特に楽しくはないと思うが……」


「何をおっしゃっているんですか⁉ すんばらしい筋肉ですよ。触らなきゃ損します。後悔しますよ!」


「そ、そこまでか? お前達が嬉しいなら別に構わないが」

「やったー! ありがとうございます」

「腹筋触る」

 

 セイ様が少し戸惑っているようだけど、押しの一手で行けそうな気がする。冷たい感じに見えるけど、絶対に良い人だと僕の勘が囁いている。


 ヴァンちゃんと共に腹筋をぺたぺたと触る。固っ! 何だこれ! ヴァンちゃんと一緒に尊敬の眼差しを向けると、困ったように僕達の頭を撫でる。恥ずかしがり屋なのかもしれない。満足してクマちゃんを見やる。


「いいでキュか? それじゃあ、行くでキュー!」

「「おう!」」

 

 クマちゃんの号令に合わせてお風呂に突撃だ。今日は一番奥の熱いお風呂にしよう。ポテポテと歩くクマちゃんは非常に親近感が湧く。僕達と同じぽっこりお腹の幼児体型だ。でも、小さいので移動に時間が掛かるようだ。今も滑りかけて「モッキュー!」と腕を広げてバランスを取っている。よし、抱っこしちゃえ。


「クマちゃん、失礼しますよ」

 

 ひょいっと抱き上げると、じっと僕を見上げてくる。嫌だったのかな?


「ニコちゃん、良い子でキュ。後で一緒に語りあうでキュ。もちろんヴァンちゃんも一緒でキュよ」

 

 三人でニコニコしていると、セイ様にまとめて抱えあげられる。


「どの風呂に入るんだ?」

「一番奥です。あそこだけ入った事が無いんです」

「そうか。俺は熱いのが苦手だから真ん中にするか。クマはどうする?」

「クマはニコちゃん達と入るでキュ」

「了解」

 

 セイ様が運んでくれたので滑る事もなく、あっという間に到着する。腕も良い筋肉ですな。

 

 皆で洗いっこをして、泡でもこもこになった所をセイ様が流してくれる。とても優しい手だ。洗い慣れている感じがするけど何でだろう?


「セイ様、動物さんと一緒に暮らしていたんですか?」

「いや、暮らした事はない。何故だ?」


「洗われていると、とっても気持ちいいので、慣れていらっしゃるのかなぁと思いまして」


「昔からカハルを風呂に入れているからじゃないか? それと、気になっていたんだが敬語は止めてくれ。様付で呼ばれると変な感じがする」


「じゃあ、セイさんでいいですか?」

「ああ、そうしてくれ」

 

 セイさんは髪をかき上げると、桶に手を翳して何か魔法を施している。そして、洗いあげたクマちゃんを木の桶に入れてお湯を注ぎ湯船に浮かべる。さっきのは、ひっくり返らないようにという配慮なのかもしれない。


 クマちゃんは専用の小さなタオルを頭に載せて、「極楽でキュ~」と目を閉じている。何とも和む光景だ。


 一番奥のお風呂だけは石ではなく、木で作られていて非常にいい匂いがする。お風呂の端は一段だけ底から高くなっているので僕達が入るには丁度いい高さだ。


「はぁ~、気持ちいいねぇ、ヴァンちゃん」

「うむ。だが、熱いから気を付けないと直ぐにのぼせる」

「でキュね」

 

 桶に入って漂ってきたクマちゃんが相槌を打つ。悪戯心が湧いたのか、ヴァンちゃんがツンと桶を突くと、すいーっと後方に動いて行く。


「面白い」

「モ~キュ~」

 

 クマちゃんも楽しそうに叫んでいる。人間の言葉なら「あ~れ~」だろうか。よし、僕も突いてみよう。


「とうっ!」

「モ~キャ~」

 

 何て楽しいのか。三人ではしゃいでいるとセイさんから声が掛かる。


「のぼせるぞ?」

 

 そうだった。さっきまで意識していたのに、楽しすぎて頭からすこーんと抜けていた。


 クマちゃんが入った桶を回収し、木の階段をトコトコと下りる。


「クマは俺が引き受けるから、お前達は毛を乾かせ」

「はーい。お願いします」

 

 僕達の方が乾かすのに時間が掛かるから早くしなきゃね。


セイの筋肉に大興奮のニコちゃんです。自分にはないものへの憧れですかね(笑)。

ぽっこりお腹のモフモフ達は、すぐに仲良くなってしまいました。

セイは面倒見のいいお兄さんです。


次話は、すき焼きだー‼ 


お読み頂きありがとうございました。

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