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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0100.砕け散ったボーロ

お読み頂きありがとうございます。

ついに百話目です。

ここまで書き続けられたのも、読んで下さる方がいるという喜びからでした。

今後も精一杯、楽しんで頂けるような作品を書いていけたらと思っています。

これから先も、どうぞ「NICO&VAN」をよろしくお願い致します。

 順調に配達をこなし、おやつの時間だ。魔法道を出ると、お小遣いを握り、カハルちゃんのおやつを買いに売店に向かう。こっそり買って驚かせよう。


「あら、ニコちゃん、いらっしゃい」

「こんにちは、お姉さん。ボーロってありますか?」

「ええ、あるわよ。はい、どうぞ。百圓よ」

 

 お金を渡して商品を受け取り、ウキウキと執務室に向かう。カハルちゃん、喜んでくれるかな?


 階段を半分ほど上った所で、けたたましい鐘の音が響く。えっ、何事⁉


「仕掛けの最終チェックを行います。皆さん、そのまま部屋から出ないで下さい」

 

 魔法で大きくなったミナモ様の声が城中に響き渡る。


 僕はこんなの聞いていませんよ~。ハッ、これが抜き打ち訓練⁉ でも、この辺りの仕掛けはまだ教えて貰っていない。無闇に扉を開けて丸焦げにもなりたくない。こうなったら執務室に向かうしかない!


 決意を固めた僕の背後でゴォォーンと重々しい音が響く。も、もしかして閉じ込められちゃう? はわわわ、急げ急げ! 階段を全力で上り廊下が見えてきた所で、天井から分厚い金属板が下りて来た。


「待って、待って~」

 

 慌てて潜り抜けて走って行く。みんな部屋の中に居るのか誰も居ない。

 

 もうちょっとで執務室だと喜ぶのは早かった。天井から二メートル位の間隔で次々に金属板が下りて来た。


「えっ、ちょ、ちょっと待って! わわわわっ」

 

 下りて来るスピードが早めだ。全力で走りながら金属板の下を抜けていく。背が低くて喜ぶ日が来るとは思わなかった。後、少し! と思ったら下りて来るスピードが更に上がった。


「う~~そ~~、たすけて~~~」

 

 半泣きになりながら頭を低くして走る。わぁ、まずいっ。執務室の一番近くの金属板が僕の身長と同じ位になっている。


 持てる力の全てを振り絞って駆け、最後の金属板に辿り着く。立ったままじゃ無理だと判断しスライディングすると鼻がギリギリだった。


 よし、抜けた! と思ったらボーロの袋が手から滑り落ちた。慌てて拾おうとするが時既に遅し。無残に金属板と床に挟まれて、粉々に砕け散った。


「チェック完了です。皆様ご協力ありがとうございました」

「ふぎゃあぁぁーーー!」

 

 ミナモ様の終了を告げる大きな声に一拍遅れて僕の上げた叫び声が響く。それが聞こえたのか、慌てたように執務室の扉が勢いよく開かれる。


「ニコちゃん⁉ 何故、こんな所に居るのです! ヒョウキ様、どういう事ですか!」

 

 ヒョウキ様を問い詰めるミナモ様の横からヴァンちゃんが飛び出してきた。


「ニコ、大丈夫か? 怪我してないか?」

「うぅ、ヴァンちゃん……。カハルちゃんの為に買ったボーロが……ボーロが粉々に……」

 

 ヴァンちゃんが僕の体をペタペタと触り怪我の確認をしてくれた後、粉々になったボーロを見て顔を顰める。扉からハイハイして近付いて来たカハルちゃんが、息が上がり床に座り込んでいる僕の手を撫でてくれる。


「ニコちゃ、けぎゃしてにゃい?」

「はい……でも、ボーロが……」

 

 カハルちゃんの為に買ってきたのにと呟く僕の手を、励ますようにポムポムと叩いてから、ギュッと握ってくれる。


「ニコちゃ、かおあげてー。よーぎゅるとにかけぇればぁ、たべられるにょ」

「おぉ、その手があった。ニコ、俺が厨房からヨーグルトを貰って来る」

「カハルちゃん、ヴァンちゃん……」

 

 なんて優しいのか。……いつまでも嘆いていちゃ駄目だよね。体は無事だったし。息が整ってきたのでゆっくりと立ち上がると、ヴァンちゃんが支えて手伝ってくれた。カハルちゃんを抱っこして執務室に入って行くと修羅場だった。ひぃえー、誰かお助けを~。



「私はしつこいくらいに言いましたよね。朝から昼までは私が会議でいないので、腕章と書類を渡す時に仕掛けのチェックがあると伝えて下さいと。『ああ、大丈夫、大丈夫』とおっしゃっていたのに、何故伝え忘れているのですか!」


「あぁ~、うっかり? おかしいよなぁ、ヴァンにはちゃんと言ったのに、なんでニコには忘れたのかな? ――あぁ、きっと頭を撫でようと必死だった所為かも」

 

 確かに今日の朝は毛がぴょこんと跳ねている所があったようで、ヒョウキ様に直して頂いた。だが、その後が問題だった。毛の感触を気に入ったのか撫でるのを止めないので逃げていたら、鬼ごっこのようになっていた。


 ヴァンちゃんは先に出発していたし、カハルちゃんは寝ているしで止める人が誰もいなかったのだ。朝から疲れた……。


「あなたという人は何をしているのですか⁉ 嫌がる事はしないという約束も破っているではないですか! 今度という今度は愛想が尽きました。宰相を辞めさせて頂きます」


「えっ、ちょっ、ミナモ待て。落ち着け、なっ」

 

 その時、黙ってやり取りを聞いていたヴァンちゃんの様子がおかしい事に気付く。


「……グルルルルゥ、ガウ、ガウッ、ガウァッーーー!」

 

 僕が酷い目に遭った全容を知って完全にキレたヴァンちゃんが、獣化してヒョウキ様に襲い掛かろうとする。


「わぁっ、ヴァンちゃん、待って待って、相手は王様だよ? 抑えて~」

 

 カハルちゃんを片手で抱っこして、ヴァンちゃんの服を掴んでいるので、あっという間に限界が来る。僕の手を振り払ったヴァンちゃんが飛び掛かる。


「グガァッ!!!」

 

 僕のすぐ横を黒衣の人が走り抜ける。


「ヴァン、落ち着け。確かにヒョウキがアホで全面的に悪いが、白族全体に咎が及んでもいいのか?」

 

 ダーク様の腕の中で暴れていたヴァンちゃんが、その言葉にぴくっと反応して、少しずつ大人しくなっていく。だが、目をギラギラさせてヒョウキ様を睨むのは止めない。


「ニコ、カハルを抱っこさせろ。落ち着くはずだ」

 

 そうだった! 癒しの力が効くはずだ。ダーク様がヴァンちゃんを下ろし腰を掴んでいるので、心配そうな顔をしているカハルちゃんを渡す。


「ヴァっちゃ、おちちゅいて。ヒョウキはわたちがおちおきするよ」

 

 カハルちゃんを抱っこした事で、逆立っていた毛がへにょっとし始める。


「グルルゥ……ゥ……ゥ……カ……ハルちゃん?」

 

 おっ、正気に戻って来た。良かった、とヴァンちゃんの首に抱き付くカハルちゃんをヴァンちゃんがしっかりと抱き締める。


 もう安全だと判断したダーク様が立ち上がり、ヒョウキ様の元へ向かう。


「早めに終わって帰って来てみれば……お前は何をしているんだ、このアホ。温厚なミナモやヴァンを怒らせてどうする」


「いや、言い忘れちゃってさぁ、すまん」


「俺に謝っても遅いだろ。ニコとヴァンの代わりに俺とシンが制裁する。ミナモは闇の国が貰うか。どうだ?」


「喜んでお仕え致します。ヒョウキ様、お元気で」


「ミナモ様、お待ち下さい。ミナモ様が居なくなったら、誰がヒョウキ様を止めるんですか! 僕も無事でしたし、勝手を言って申し訳ないのですが、僕達の為にも考え直して下さい」


「ニコちゃん……。あなたは亡くなってもおかしくない状況に遭わされたのですよ? そんなに簡単に許してはいけません」


 でも、ぎすぎすしているのは嫌なのだ。


 普段は怒る事の方が珍しいヴァンちゃんは、僕の事を凄く大事に想ってくれているので、こういう時は烈火の如く怒る。その所為でヴァンちゃんが罰せられるなんて耐えられない。


売店のお姉さんは近くの部屋に避難するものと思っているので、そのまま送り出しました。

でも、まだ知らなかったんですよ~(泣)。

獣族はあまりにも激しい負の感情を抱くと獣化します。理性がほぼありません。


次話は、皆でおしおきします。


お読み頂きありがとうございました。

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