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NICO & VAN ~最愛の主様を得たモフモフのほのぼの日常譚~  作者: 美音 コトハ
第二章 新生活の始まり
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0099.卵(シン編)

 お菓子作りをする為に卵を貰いに向かっていると、ニコちゃんが後ろから付いて来ているようだ。何で隠れているのかは分からないが、さすが白族。ここまで気配を消す事ができるのか。ここは自分で作った場所なので誰が何処にいるか全て分かる。取り敢えずこのまま進むか。


 辿り着くと、ニワトリ達がいつものように、ビシッと横一列に並び、袋から卵を取り出し捧げ持つ。


「おはよう。卵ありがとうね」

 

 そう言いながら、卵を回収していく。


「ありがとう。また、よろしくね」

 

 手を振ると、ニワトリ達が一斉に手羽根で敬礼してくれる。さて、帰るか。



「ただいま」

「お帰りなさい」

 

 ニコちゃんが迎えてくれた。聞いてみようかな?


「ねぇ、ニコちゃん。なぜ僕を尾けて来たのかな?」

「ばれてるぅー⁉ 僕、そんなに隠れるの下手でした?」


「ううん。気配も姿も綺麗に隠していたけど、ここは僕が作った場所だから、僕の許可がある人しか入れないし、誰が何処にいるかも全て把握できちゃうんだよ」

 

 ニコちゃんがぽけーっと僕を見つめている。まぁ、確かにこんな理由だとは思わないよね。


「……実は僕、気付いちゃったんです。ニワトリさんの対応が人それぞれ違うって」


「ああ、それで」


「はい。さっきの凄かったです! ビシッと横一列に並んで、みんな卵を捧げ持っていて。そして、最後の敬礼! カッコよかった……僕もされたい……。今後の野望です!」


 腰に手を当て、胸を張って可愛い事を言う姿に、噴き出すのを必死で堪える。笑っちゃいけない。本人は至極真面目だ。何とか声の震えを押さえて言葉を絞り出す。


「……早く叶うといいね」

「はい!」

 

 満面の笑みで頷き、ヴァンちゃんの所に駆けていく。あー、苦しかった。腹筋を撫でながら、お菓子作りだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ここ最近、不思議な事が起こっている。ヴァンちゃんが貰って来る卵の黄身が必ず二つある。最初は運がいいで済んでいたけど、何が原因だろう? そう思っていたタイミングで、ヴァンちゃんが夜中の外出許可を貰いに来た。


「卵の事を調べたいので、夜中にニワトリさん達の所に行ってもいいですか?」

「うん、いいよ。ちょうど僕も調べようと思っていた所だから」

 

 ホッとしたようにヴァンちゃんが息をつく。気を付けて行くようにと言って頭を撫でてあげると、嬉しそうに頷いてくれた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 岩が怪しいという事で、ヴァンちゃんと一緒に卵を貰いに来た。


「あの岩かな?」

「そう。あそこに立ってた」

「どれどれ。――特に問題ないね。魔力を多く含んでいる訳でもないし、別の理由かなぁ」

 

 そう言うと、難しい顔でヴァンちゃんが首を傾げる。


「取り敢えず、先に卵を貰っちゃおうか」

 

 手分けして卵を貰い、ヴァンちゃんの元に戻ると、足元で何かがキラリと光る。


「ヴァンちゃん、貰えた? うん? ピンバッジだ。――ヴァンちゃん、分かった。原因はこれだよ」


「それ、俺が前に失くしたやつ」

「なるほどね。これ小さい頃から持っていたでしょう」

「何で分かる?」


「ヴァンちゃんの魔力が、この宝石に大量に蓄積されているからだよ。この魔力の影響で卵の黄身が二つになっていたんだよ」

 

 びっくりしてピンバッジを見つめるヴァンちゃんの横で、ニワトリが悲しそうにピンバッジを見つめている事に気付いた。「コケー……」と力なく鳴いている。


「シン様、悪影響がないようなら、それニワトリさんに返してあげて欲しい」

「いいの? 大事な物でしょう?」

「いい。ニワトリさんなら大事にしてくれる」

 

 ニワトリの期待に満ちた視線が僕に注がれる。魔力の影響も悪い方には働かないだろうし、ヴァンちゃんが納得しているなら特に問題はない。少し考えた末に手羽根から卵を取り、代わりにピンバッジを載せる。


「卵をありがとね。ピンバッジを大事にするんだよ」

「コケコッコーーー!」

 

 ニワトリが歓喜の鳴き声を上げた後、大事にピンバッジを袋にしまい、ヴァンちゃんに向かってビシッと敬礼する。


 ヴァンちゃんがビシッと敬礼を返すと、後ろで小さく叫びが上がる。


「あーっ、ヴァンちゃんが敬礼された! 僕の野望が~」

 

 振り返ると、ニコちゃんが少し離れた所にいて嘆いている。野望が先を越されたと思ったのが悪かった。ついに我慢しきれず噴き出してしまった。まずい、まずい。


 ニコちゃんが走り寄って来たので、「いつかしてくれるよ」と慰めてあげていると、ヴァンちゃんがニコちゃんの肩をぽむっと叩く。


「ニコ、黄身が二つの卵をやるから元気出せ」

「えっ、本当⁉ ヴァンちゃん、ありがとう~。わーい、わーい」

 

 立ち直りが早い、とヴァンちゃんと笑い合う。さて、今日も可愛いこの子達に、美味しい朝ごはんを作ってあげよう。


シンはこの子達が来てから、腹筋がガンガン鍛えられていますね。

ニコちゃんが先を越されました(笑)。

いつか……いつか、してくれるよ。多分……。


次話は、抜き打ち訓練? です。


お読み頂きありがとうございました。

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