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漆黒の王"グニケロス"

この国には伝説がある。

伝説と言っても昔話だが

"137"年前とある男がこの国に訪れた

その男は細身で手にはきのこを持っていた

「このきのこは幻のきのこで食べた者は永遠の寿命を得る」

そう言い残しその男は突然死んだ


そのきのこは今でも"どこか"に粉末状にされ保管されていると


おれはグニケロスこの国で育ちその伝説を聞かされ育った

そんなおれも45歳

「きのこを食べたい」

いつの間にかそんなことを考えていた


いやけどこんなの作り話だろ、そんなのあるわけない


心のどこかで分かっていた


しかしおれはここから30年探した



~グニケロス75歳~

わしの人生はこれで良かったのか?

家族のいない彼は馬に話しかけた

「ポロロロロロ」

気持ちよさそうに鳴いている

どんなに忙しい時でも馬の手入れは欠かさなかった

そんな彼も病気を患っていた

「ポロロロロロ」

「ポロロロロロ」

「ポロロロロロ」

その場所からもう馬の声しか聞こえなくなっていた


第1章

ここはどこだ

目覚めたら知らない草むらにいた 片手には見覚えのないきのこを握りしめて

なんだこのきのこは?


ただ、なぜかこのきのこを見ると涙が出てくる


「あれ、おれは誰だ?」

思い出せない...

何一つ思い出せない...


ただ、なぜかこのきのこを見ると涙が出てくる


「泣いているのか おれ......」


そしておれはただただ目的も無く歩いた

辺りは人の気配が全くない広い大地

それでも歩くこと30日

幸いにも川が流れていて水には困らず

木ノ実なども豊富だった


「いつまで歩けばいいんだ」


そんな時だった

遠くに木造の小屋がある


「誰でもいい...人に会いたい」

そう思いその小屋に向かって死に物狂いで走った


トントントントン


「誰かいますかーーー誰か!」


返事がない


「しょうがないよな」

そう言いながら扉にタックルをし壊した

小屋の中は無人で人がいた気配すらなかった


「おれはどうすればいいんだ」

そう、おれはもう限界だった

自分が誰かすらわからないのにおれ以外の人が一切いない

もう、限界だ そう言いながら右手に持っていたきのこを食べた

「うああああぁぁぁぁぁ」

感じた事のない激痛

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」



気を失っていたみたいだ

あれからどれくらい時間がたったのだろう

それもわからない わからないが小屋を出ておれは震えた


「砂漠になっている!?」

そう、一面緑だった景色が全くの別の風景になっていた

おれは発狂した 現実が受け入れられない

暴れた 暴れ続けた


そして、1年"は"経った

おれはまだ暴れている

水も食事もせずに

そして、何年経ったかわからないが急に落ち着いた

「あれ、おれはなんで生きているんだ」

夢から覚めたみたいだった


そう、おれは死のうとしていた

しかし、死んでいない

普通の人間ならとっくの昔に死んでいるはずなのに

「おれは普通ではない?」


ただ、なぜか分かっていた

"あのきのこを食べると不老不死になる事を"

「あのきのこはなんなんだ」

そう思いながら自分の右手を見た

「な、なんだこれは」


そう、まだ小さいが

"間違いなく......あのきのこが生えかけていた"


「あれは、おれから生えてきていたのか」

~LM(レフトハンドマッシュルーム)~



第2章

あれから100年が経った

おれのLMは更に開花し1日に1本不老不死の

きのこを生やすようになっていた


「これで誰かを救いたい」

そう思っているのだが あの日LMが開花し

記憶をなくした日からおれ以外の人に出会っていない

「なぜ、神はおれにLMを与えた?」

まるで神のいたずらのような能力

これで多くの人を救いたいのに

今はおれの腹を満たす能力にしかなっていない

しかも、このきのこはとてつもない異臭を放つ


まあ、そんな匂いにも慣れおれは今日も人を探すために

歩き続けている


「もうおれはどれくらい歩いた?」

いつの間にかおれは右手のきのこに話しかけるようになっていた

「......」

「なんでぇぇぇぇぇなにも答えねえんだぁぁぁぁ!!」

そのままそのきのこを食いちぎって飲み込んで泣いた

「もうやだ...帰りたい......」

ん、帰りたい? どこに?

「う、頭が... あぁぁぁ」

突然の頭痛、きのこを嘔吐した

「はあ、はあ...」

幼いおれと母の顔、生まれ育った国の風景が脳裏に流れた


思い出した

おれの名前は

"ペクトス!!"


ただ、もう100年以上前の記憶

思い出したところでぼんやりと

そして感動も少ない

ああそんなことがあったな

と思う程度に ただ、おれはその国に帰りたい そう思った


"その瞬間、突然右手のきのこが光り始めた"


「な、なんだこれは!!?」

そして、肥大化していくきのこ

「重いっっっ、手が折れるっっっ」

どんどん肥大化していきやがて破裂し虹色の胞子を撒き散らした

「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぐあぁぁぁぁぁぁぁ」

そのままおれは気を失った


「なんだか気持ちいな」

おれは今夢を見ている

それは昔の夢、まるで走馬灯のように

『ねえ、ペクトス ねえ早く起きて』

なんだか声が聞こえる

『ねえペクトス!!』

"はっ"

おれは意識が戻った

「ここはどこだ」

おれはベッドの上にいた そしてどこか怒った表情の若い女性

「やっと起きた!!」

この声、この顔、覚えている...... えーと...

「”ピクトポロ”!!!!!!!」

そう、おれの恋人だ

「なに突然人の名前を大声で呼んで えっ...なに泣いてるの?」

おれは、涙が止まらなくなった

帰ってきたんだこの国に

おれは右手で涙を拭こうとした

そしたらきのこが顔にあたった

「ふっ、夢じゃなかったんだな」

そうするとおれは不死 そうだ、ピクトポロにもこのきのこを食べさせなければ!!

「おい、ピクトポロ おれの右手に生えているこのきのこを食べてくれ!!」

「......」

恋人がまるで見ず知らずの変質者を見るような目でおれを見ている

「悪い、まずLM(レフトハンドマッシュルーム)の話とこの100年間の話をしないとな」

そして、今まであったことを話した

「わかったわ、じゃあそのきのこ食べてみる」

そして彼女におれはきのこを食べさせた

「おえぇぇぇ臭い臭すぎてマズい!! なにこれ、おえぇぇ 苦しい苦しい」

そのまま嘔吐物を喉に詰まらせ亡くなってしまった


おれは狂ったように泣いた そして気づいた

「ただの毒きのこになっている」

そしてその涙を拭いた時

やはりきのこがあたった

「また、生えかけている...」

そうだ、おれもこのきのこを食べよう

待っててなピクトポロ

"そしておれはきのこを食べ静かに目を閉じた"



第3章

"寒い"

おれは震えていた

国には今日も雪が降っていた

「ここ最近ずっと降ってるな」

そんな事を呟きながらおれは城の前に立っている

おれは兵士としてしたっぱで 門を守っているのだがこう毎日雪だとしんどいものがある

「今日も平和だな」

そう、この国は大国にも関わらずとても治安が良い

国の人々みんな知り合いでおれの顔を見ると挨拶をしてくれる

「ケペロフ今日も寒い中大変だねぇ」

通りすがりの老婆が暖かいスープをくれた

「ええ、けどこの国は平和すぎるのでただ立っているだけなので楽ですよ」

この国は平和だ 1000年前から他の国からの人の移住を一切認めてないだけあって

国民全員が家族のように温かい


ただこの国には唯一絶対に破ってはいけない法律がある

まあそんな話は置いといてとにかく今日は寒い

早く帰って暖をとりたい

「この国は寒すぎる」

そう、この国は年中雪の降っている国だ

王もとても寒がりな人で城から一歩も出ようとしない

おれは王の姿を見たことがない

ずっと暖のある部屋にいるらしい


そんな事を考えていたら珍しく門の前に通行人が来た

「ペクトスに会わせろ」

王に?この人は剣士か、すごい殺気だ

「通行書はありますか?」

「死にたくないだろ?黙ってここを通せ」

「えっ......」

次の瞬間、拳が飛んでき気絶させられた

「待ってろ、1000年間の監禁から救いに来た」

ぼんやりとした意識の中 彼は確かにそう言った

"カーーーン カーーーン"

警報とともにおれは意識を失った


”そして目が覚めたらおれ以外の全ての国民が死んでいた”


「ざまあみろ」


最初に出て来た言葉がこれだった


この国の法律、子供を作ったら

子は国の奴隷にされ、その親は15年間監禁され子の前でバラバラにされる

そう、おれはこの1000年間で生まれた唯一の国民だ


「やっとおれは自由だ」


この国では20になったら王のきのこを食べさせられる

そして不老不死を手に入れられる

ただ、王が死んだ時そのきのこの効果が切れる


「不老不死の王が死んだのか?」

まあいい、おれはやっと自由を手に入れた

やっとこの国から出れる

「こんな家族もいない寒い国、早く出たかったんだ」

そしておれの当てのない旅が始まった



第4章

"カーーーン カーーーン"

「ちっうるさい警報だな」

おれは1000年ほど前、戦友の男に命を救われた

国同士の戦争はよくある話でその最中におれは致命傷を受けてしまった

彼は泣いていた 幼い頃から一緒に訓練をしていた仲で朦朧とする意識の中

死なないでくれ と叫んでいる声が聞こえた

"そんな時悪魔が現れた"

彼は記憶とこの世界を代償に悪魔と契約をしたらしい

そして謎のきのこをおれに食べさせその場から霧のように消えてしまった

「ペクトスーーーー!!!!」

これがおれとペクトスの昔話

そしてなぜか彼はこの世界に戻って来ており国に監禁されていた

彼女を殺したと気が狂っていたらしい

おれはこの1000年かけて色々な事を調べたが

彼女は嘔吐による窒息死、おそらくきのこを食べさせようとしたが効果が現れる

消化される前に嘔吐してしまったのだろう

そして発狂している彼は国に捕まり

最悪な事に右手のきのこのことがバレて

永遠の監禁ときのこ製造機にされている

「おれがお前を殺してやる」

待ってろ、さすがに不老不死でも脳を一発で潰せば死ぬ


おれは警報の中、城に乗り込んだ

平和な国だったんだろう兵士が弱い

そしてペクトスが監禁されている部屋を見つけた

「これはひどい...」

そこには鎖で繋がれた変わり果てたペクトスがいた


「今、楽にしてやるからな」

そう語りかけたが、もはや彼は人間ではなく機械になっていた

感情が死んでいる

そのままおれは鈍器のようなものでペクトスの脳を一撃で潰した


「うっ...」

あの時の傷が痛んだ そしておれはそのままペクトスの隣で息を引き取った

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