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4.「取引」


「そうだな――――。」


老人から習った知識は様々な方向へと枝を伸ばすものでした。

例えば、こんな村では見たこともない銀貨以上の価値の硬貨類。

基本的に硬貨の純度はこの大陸では均一、として定められています。

それは金属類を産出しやすい土地があって、というのも当然のことですが。

そう言った取引を管理する、商人たちが決して認めなかったからというのが非常に大きな理由でした。

例え、国王や皇帝がそう決めたのだとしても。

そうなれば、商人たちは決して食料を売ろうとはしなかったと言います。

それは歴史が証明しているのだと。

何処か誇らしげに語る、老人の姿がありました。


「流石に、白金貨は無いけれど。」


懐から取り出した、明らかにこの場に似つかわしくない硬貨の数々。

順に、半銅貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨。

それぞれ百枚で上の硬貨と同価値になるのだと、実物を握らせながら教えてくれました。

凡そ銅貨一枚で一日の食事代になるのですから、どれだけの価値があるのかは子供であった二人でも理解できる所。


「……何でこんなお金持ってるんですか?」

「未練、でね。」

「未練、ですか?」


首を傾げて問い掛けた「彼」に。

何処か遠いところを見ながらの、その返答。

鸚鵡返しのように、「幼馴染」が聞き返せば。

どうしてもこれだけは手放せなかったんだ、と。

どこか悲しそうに、呟く老人の姿。

その顔に含まれていたのは――――後悔。

だから、「彼」と「幼馴染」は。

互いに互いの顔を見合わせて、それ以上は踏み込むことを取りやめたのです。


無論、老人の話す「取引」の知識はそれだけではありませんでした。

例えば、草原で野宿をする際の対処法。

例えば、食べられるものと食べられないものの見分け方。

例えば、近くに水源が無い場合の水の調達の方法。

それら全てが生きた情報として、惜しげもなく二人へと与えられ。

それらを目を輝かせながら聞いていた二人は、綿が水を吸うように吸収していったのです。

この場所で行われていたのは、恐らく一番近いもので言うのだったら「私塾」のようなもの。

例え、老人が何者なのかは一切分からなかったとしても。

きっと、何時かは話してくれるのだろう。

そう言った、ある意味では思い込み。

ある意味では信用のようなモノが芽生えるまでになった、とある日。

老人と、二人が出会ってから凡そ半年程が経過した後のことでした。


――――もし、それがなければ。

或いは、二人はずっと一緒に歩いていけたのかもしれません。

或いは、とある一人はひっそりと息を引き取っていたのかもしれません。

「彼」は、英雄などと呼ばれることはなく。

「幼馴染」は、自分の出自を知ることもなく。

「未だ知らぬ一人」は、出会うこともなく。

けれど、運命の波(モノガタリ)はそれを許しませんでした。

試練であるように。

乗り越えるべき、壁であるように。

その末に待つ結末こそを、愛おしむかのように。


――――村に。

迷い込んだ魔物が、現れた事件さえなければ。

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