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2.「幼馴染」


「時間、だよ?」


扉を開けた先にいたのは、「彼」と同年代の一人の少女でした。

長い銀色の髪を腰まで伸ばし。

皮で作られた、帽子を被った古風(ゴシック)な衣装に包まれた異様な少女。


「……ああ、もうそんな時間?」

「そう、だよ。」


こんな農村であれば。

いえ、下手をすれば都会でも着ている人など殆どいないであろう格好。

そんな彼女――――「幼馴染」も、また。

その異様な格好と、家庭の状況によって孤独を保っているもう一人でした。


「流れ者」。

元々この村の出身でないという彼女の母親とたった二人の暮らし。

何処か気品さを保つその女性を狙って、村人達は競って声を掛けていましたが。

それら全てを跳ね除け、編み物などを行商人に売って細々と生活を続ける様子。

いつしか、村人達はその家族を異質なものとして認識しました。

その結果としての、孤独。

「彼」と、「幼馴染」と、その母親。

この村において排斥される側、数少ない異邦人として扱われるのは彼等を含めてたったの四人(・・)

故に、「彼」は自分が抱く感情の名前を理解しないままに「幼馴染」と付き合い続けていました。

それは、「幼馴染」も同じこと。

母親に見守られる中、日々を重ね続け数年。

朧気ながらに、将来どうなるのかを考える程度には知識を身に付けていた「彼」であり。

日に日に美しくなっていく傍らの少女とは、どうなっているのだろうと。

そんな、幼いからこそ抱く将来への漠然とした不安を抱える日々でもありました。


「準備は……?」

「ちょっと待って、今日の分は干してあるんだ。」


裏口、影になった部分に吊るされた魔物の肉。

干し肉と言うにはやや生で。

生肉と言うには、乾燥しすぎている。

そんな、どちらとも言いきれないような状態にされた物を数枚手持ちの革袋に詰めました。

これは、今日の「彼」の食事の一部。

昼と夜の分から、ほんの少しだけ抜き取って干しておいたモノ。


「……うん、大丈夫。」

「じゃあ、行こう?」


そっと差し出される手を、恐る恐る握りました。

「排斥された子供」である「彼」と「幼馴染」。

二人を邪魔するような無駄(・・)なことをする村人も、子供も居らず。

故に、二人はほぼ唯一の日課とも言える場所へと足を運んでいきました。

村沿いに流れる川を越え。

途中で仕掛けていた魚取りの罠から魚を取り出して。

片手に、革袋を。

そしてもう片手に、「幼馴染」の手を握り締め。

その体温を感じながらの、ほんの少しの冒険の目的地へと。


境界からほんの少しだけ離れた所に作られていた、かつての村の廃倉庫。

雨が降れば彼方此方から雨漏りがするような、ぼろ小屋。

ある意味で、此処は秘密基地で。

そしてある意味で、此処は二人にとっての学校でもあったのです。

何度か、小さくノックをすれば。

いつも通りの――――しゃがれたような、声が一つ。

二人は顔を見合わせて。

頷いて、中へと足を踏み入れていきました。

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