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傷痕

作者: 平岩藩士

  橋下がバイク事故を起こし、全治3ヶ月の重体となったという知らせを聞いた。

 私が病院へお見舞いに行った時には、橋下は足にほう帯をグルグル巻きにされて、ベッドで横になっていた。その姿を見た私は橋下の近くに駆け寄り、強く手を握った。

すると橋下は、申し訳なさそうな表情を浮かべてこう言った。

「足を少しケガしただけだよ。心配かけて悪かったな…」

私は首を大きく横に振る。

「そうか、安心したよ。竹内の件もあったばかりだから心配で、心配で」

それを聞いた橋下はうかない表情を浮かべた後、うつむいてしまった。

 私と橋下は中学校から高校まで、通った学校が同じで仲も良かったので、社会人になっても定期的に飲み会に行ったりする。しかし本来なら、私と橋下以外にもう1人、竹内という友人もいた。

 竹内は先月、信号待ちをしているところを歩道に乗り上げたトラックにはねられ、亡くなった。

そんなこともあり、私は橋下のバイク事故の報告を聞いて、胸騒ぎがしていたのだ。

 ともかく、橋下が無事なようで安心した私は、ここに来る途中に買ってきたマドレーヌを手渡してから、その日は帰宅した。

 3ヶ月後、橋下が退院した。その日、橋下は私を飲み会に行く約束をしていた。

 行きつけの居酒屋に到着すると、笑顔を浮かべた橋下が待っていた。久びさに再会した私たちは店の前で少し立ち話をしていた。

その際、バイク事故の傷痕を見せてもらった。

傷痕は足首から膝の皿の辺りまで届いており、長年消えそうもない。

 私は少し嫌な気分になった。しかしそれは、傷痕が生々しかったからではない。

 ただ私はその傷痕が、竹内を失った私たちの深い心の歪みのように思えたからである。

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