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ネットサーフィンから始まる異世界生活  作者: ミネラル
二章 洋館での日々
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刀の名前を知った日

「…198、199、200。……っはー、終わったー。」

すっかり日課となった筋トレを終え、

俺はモフモフ、もといイスカさんの訓練を行う。

俺の体には、かなり筋肉がついてきた。

昔テレビで見た外国のスーパーキッズぐらいにはムキムキだ。

よく言われる「子供の頃に筋肉つけすぎると身長伸びないよ。」、

との迷信が頭を過るが、まぁその時はその時だ。

今は身長より家に帰ることの方が優先なので、

そんな些細なことは気にしない。

気にしないったら気にしない。


「はい、エミル。今日は武技を教えます。」

「……ブギ?」


イスカさんが言うにはこうだ。

この世界は、どんな物にも魔力が宿っている。

立派な宝石にも、道に生える雑草にも。

そこに魔力の大小はあるが、宿っていることには変わらない。

それが世界の法則だからだそうだ。

そして、世界には多くの武器が存在する。

もちろん、この武器達にも魔力が宿っている。

どんな小さな武器にもだ。

人の手で武器として作られたものは、

その形に従って、魔力を形づくる。

武器としての役目を果たすべく、変化する。

武技は、その武器に宿る魔力を、己の魔力で増幅することによって、

魔力に更なる使命を与え、発動するんだそうだ。

その為には、まず武器につけられた名前を知る必要がある。

名前とは武器に与えられる、最初の形。

その武器が背負う役目そのものだから。


「でも、イスカさん。僕、この刀の名前知りません。」

「大丈夫。武器はね、会話ができるの。

と言っても、人みたいにペラペラと喋る訳じゃないけどね。

武器がその使い手を認めた時、初めて名前を教えてくれるわ。」

「へぇー。」


なんかロマンチックだな。

でも、それだと誰でも簡単に武技を使える訳じゃ無さそうだ。

上等じゃないか。やってやろう。

このイスカさんがくれた刀と仲良くなって、

もっと強くなってやる。


「何をしたらいいんですか?」

「んー、そうだね。エミルは武器に宿った魔力を感じているかな?」

「………。一応、線みたいなのは見えてます。」

「上出来だね。普通はもっとぼんやりとしたものしか感じれないから。」


そうなのか。

俺は生まれてから今まで、魔力の流れを見続けている。

ソフィアの魔法を真似した時も、合成魔法を使った時も、

最近はシェリルさんの魔法を見ることが多いかな。

だってあの人説明下手なんだもん。

見て学ぶ以外の選択肢ないんだもん。


「見えているなら、その魔力を包むように魔力を流してみようか。」

「はい。」


刀にはその刃に沿うように魔力の流れが見えている。

とりあえず魔力を流してみよう。

俺は刀に意識を集中する。

俺の魔力が刀を包むように動き始める。


バチッ

「うわっ!」

静電気の様なものに弾かれてしまった。

何故だ。

言われた様にはできた筈なのに。


「あー、拒絶されちゃったか。」

「拒絶?」

「うん。魔力が合わなかったってこと。

あ、でも安心して。皆通る道だから。」

「……はい。」

「うん。今日は普通の訓練にしようか。」


悔しい。

こうなったら、意地でも名前を聞いてやる。

絶対にお前の名前聞いてやるからな。


その日から、俺と、この刀の戦いは始まった。


俺はまず刀と仲良くなる為に、

常に背負って置くことにした。

家事をするときも、訓練をするときも、食事をするときも。

離れるのは風呂ぐらいだ。

刀は俺の身長よりちょっと長いので、

背負うと引きずりそうになるのだが、それでも無理して背負い続けた。


「エミル。」

「何ですシェリルさん。」

「その刀いつも引きずってるわね。」

「ええ、ちょっとだけ長いんです。」

「…腰の後ろのとこ、刀を横にして背負えばいいんじゃないかしら。」

「!?」


盲点だった。

その発想は無かった。

刀は腰に差すか、背に背負う物だと思ってたからな。

だって格好いいし。


こうして、身長より長い刀を腰に背負った、

ドアに入りにくい、メイド少年が爆誕した。


「エミル。」

「何ですシェリルさん。」

「可愛いわね。」

「………嬉しくないです。」


シェリルさんのお陰で、ドアに入りにくい以外、

刀を装備し続けることに負担がなくなった俺は、

ずっと刀と一緒にいた。


その時は突然訪れた。

それは眠りの深い夜のことだった。


……ん。

朝か?そんなに寝た気がしないけど。


「よぉ。メイド少年。お目覚めか?」

「!?

だ、誰だお前。」


それは影だった。

人の形をした、真っ黒い影。


「おいおい、いつも一緒いただろうが。」

「は?」


イスカさんも、シェリルさんも、こんな乱暴な喋り方はしない。

でも、他にいつも一緒にいるやつなんて、


「お前、もしかして!」

「ご名答。俺はあんたが持ってる刀。

まぁ、刀の精ってとこかな。」


刀の精って。こんな乱暴な妖精さんがいてたまるか。


「武器って皆お前みたいなのがいるもんなのか?」

「いいや、俺様は特別さ。

まあ、鍛冶屋の若造は俺の価値に気づかず凄い安値で売ってやがったがな。

それに比べたら、あの犬娘は見る目があったって事かな。」

さすがイスカさんだ。やっぱり鼻が利くんだろう。犬だけに。


「どうして急に出てきたんだよ。寂しかったのか?」

「はっ、ただの気まぐれさ。

お前さんが俺に構って貰えず泣いちまいそうだったんでな。」


……ムカつく刀だな。

「で、その優しい刀の妖精さんは何しに来たんですか。

名前教える気になったんですか。」

「棘のある言い方だな。拗ねんなって。

そうだよ。名前教えに来たんだ。」

「本当か!」

「ああ、但しそれには条件がある。」


出た、条件パターン。

どんな無理難題が出てくるのやら。

なんでも受けて立ってやるがな。


「条件は1つ。

これからのお前の人生。絶対に諦めることをしないと誓え。

それが、出来るなら俺の名前教えてやる。」


「………。それだけ?」

「あぁ、それだけだ。」

「何だ、それだけでいいのか。」

「いいのか?俺はお前が何かを諦めた瞬間、力を貸すのをやめるぞ?」

「うん。それでいいよ。」

「そうか。」


それはもう決めたことだしな。


「だから、お前の名前を教えてくれ。」

「はっ、変な主を持っちまったぜ。

いいだろう。

俺の名はクニナガ。宜しくなエミル。」

目が覚めると、すっかり朝だった。

俺の手にはクニナガが握られている。

夢じゃないよな。

うん。確かに俺はクニナガに改めて誓った。

もう諦めることはしない、と。


「………俺の武器めっちゃ喋るよ、イスカさん。」


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