モフモフの日
俺は重大な悩みを抱えている。
グランドオーラを習得できた俺は、
かねてからの悩みを解決することにした。
俺の前で楽しげに揺れるそれ。
それは、犬科の尻尾を思わせる。
そう、モフモフだ!
俺はこのモフモフに触りたくて触りたくて仕方ない。
最近は、寝ても覚めてもモフモフのことばかり。
限界だ、限界なのだ。
前の世界の俺は、ひねくれていた。
凡人であることに絶望し、全てを諦めていた。
そんな俺の癒し。
それは、柴犬の五郎だけだった。
五郎はいい子だった。
俺が落ち込んで帰ってくると、いつも玄関で待ってくれていた。
辛い時には側にいてくれた。
五郎は、俺の心の友だった。
悲しい時はいつもモフモフ。
悲しくなくてもモフモフ。
気づけば俺はモフモフに心を奪われていたようだ。
異世界に来て、俺のモフモフに躍動する魂、
モフ魂は、沈黙していた。
ソフィアの胸という究極の癒しがあったからな。
母様と離れてもうすぐ半年。
癒しを失った俺に、希望の女神が微笑んだ。
イスカさんだ!
母様を超えるおっぱい。
神々しいメイド服。
そして、このモフモフだ!
素晴らしい。完璧過ぎる。
こうして俺の癒しを求める声に、
モフ魂が再び目を覚ました。
覚ましたのだが、
さすがにおっぱい触らせて下さいとは言えないし、
声をかけただけで通報されるご時世にいた俺には、
尻尾に触れていいものなのか、その勇気が出なかった。
一応体の一部だし?
こっちの倫理観とかまだ知らないし。
うむ。どうしたものか。
……ん。何、ヘタレじゃないよ。
違うから、違うからね。
俺、やるときはやる男だから。
やれる男目指してっから。
断じて、ヘタレではない!
「エミル?どうしたの?」
「あ、えっと、何でもありません!」
思わず逃げてしまった。
……認めよう。俺はヘタレだ。
だって言えないじゃん!
「尻尾触らせてくれなんて!」
「尻尾?」
……………………。
ギァアアアーーー!
声に出してた、聞かれてた!
ヤバイヤバイヤバイよ!?
あー、お縄かー。
警察のお世話にだけは、ならないよう生きてきたんだけどな。
まさか、セクハラで逮捕とは。
母様ごめんなさい。エミルは悪い子でした。
「尻尾かー。いいよ、エミル。」
「ごめんなさい、ごめんなさい!
悪気はなかったんです。出来心なんです。
……………え?」
「だから触っていいよって。」
「本当に?」
「うん。本当だって。」
「訴えたりしない?」
「訴えるってどこに訴えるの。シェリル様?」
これは夢か?夢なのか?
いや、断じて否。
女神様から許可が降りたのだ。
これを受けずして何とする。
「さ、触っていいですか?」
「うん、おいで。」
恐る恐る尻尾に手を伸ばす。
モフモフが手に触れた。
うぉーー!モフモフじゃあーー‼
モフモフモフモフ………
モフモフモフモフ…………
モフモフモフモフ……………
……母様、天国は本当にありました。
俺はあまりの気持ちよさに意識を失った。
「あれ?エミル!?
………寝てる。疲れてたのかなぁ?」




