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ネットサーフィンから始まる異世界生活  作者: ミネラル
プロローグ
1/24

始まりの日

俺は普通だ。

頭が言い訳でもなく、運動ができるわけでもない。

他人より秀でた物なんて一つもない。

普通の顔をした、21歳のフリーターだ。


そんな俺だって子供の頃は、確かに夢があった。

スポーツ選手、弁護士、バンドマン、目につく色んな職業に憧れた。

なんだってできると思ってたし、何にだってなれると思っていた。




現実は厳しかった。


色んな事をした。憧れた物全てに手を出した。

俺にだってできる。何かの才能があるはず。

こんなもんじゃない。こんなやつに負ける訳がない。

俺だって練習すれば、時間さえかければ。



でも、いつも気づくんだ。

本物には勝てない。

何時だって、何処にだって、天才って呼ばれる奴がいる。

いくら負けたくないと思っても、けして届かない。

あぁ、無理だ、止めよう。

そうやって、俺は全てを諦めた。

頑張るのをやめた。


気づけば平凡な毎日を過ごし、自宅近くのコンビニでバイトをしている。

普通な俺は、平凡な時間を過ごし、無意味な人生を終える。


そう、思っていた。




今日は、バイトが休みなので、自宅でネットを泳いでいる。

今の俺の唯一の趣味だ。

ネットは情報に溢れている。

暇潰しになるネタを探して、この電子の海を漂流する。

別に知りたいことなどないが。



何か、面白いことねぇかな。


こんな事を考えていたせいだろうか。

変な広告に目が止まった。



「……『人生をやり直しませんか?』」




俺の手は吸い寄せられるように広告へと向かった。

表示されたのは、まるで我が国の国旗のような色使いのページだ。

真っ白なページの真ん中に、赤い字で一言。



『人生をやり直しませんか?』


それだけが書かれていた。



俺はこの文字がとても気になった。

惹かれたと言っても良いだろう。

文字にカーソルを合わせる。


リンクがあるみたいだ。


続いて表示された画面には

『やり直しますか? はい/YES』


選択肢、ねぇじゃん…。

横暴な質問だった。


…イタズラか。

そりゃそうだ。

そんな簡単に人生をやり直せたら、この世は大富豪ばかりだ。

競馬もロトなんちゃらも、その機能を果たせない。

一気に熱が引いていく。


「…………。」


…ブラウザが閉じない。

ウィルスか、なんかか?

めんどくせ。



放置して、コンビニに行くことにした。

バイト先のコンビニは、徒歩5分のところにある。

コンビニへの往復の間、先ほどの質問が頭を廻っていた。

コンビニで買ったサンドイッチを頬張りながら考えた。



もし本当に、人生をやり直せたら。

俺に何ができるのだろうか。

今より頭が良くなるのだろうか、今よりスポーツが上手くなるのだろうか。

今より何か才能に恵まれるのだろうか。

何か変われるのだろうか。

この無意味な生活も、変わるんだろうか。



自宅に着いても頭から考えが離れなかった。

思えば、いつも退屈な日々だった。

何かに挑んでは、中途半端で諦めて、次こそは。

その繰り返し。

つまらない。こんな人生、TVドラマになんか絶対にならない。

なったとしても視聴率なんてお察しだろう。

1話打ちきりだ。

例え、人生をやり直したとしても、それが変わるとは思えない。

今もサイトを表示したままのPCを見つめる。



でも、ここと違う世界だったら。

ゲームの様なファンタジー世界だったら、平凡な生活なんてないかもしれない。

そこがどんなに厳しい世界でも、どんなに辛い世界でも、

今の理不尽よりずっといい。


もし、こことは違う場所で、やり直すことができるなら。

今度こそ、平凡とは無縁の日々を。



「……異世界希望で。」


俺はPCに回答を打ち込んだ。




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