奥山さんの合コン。3
奥山さんはモテたい。
「奥山さん、なんかごめん」
奥山さんの割りと片付いていない部屋で、ドライヤーと携帯用コテをもったあかりちゃんは伏し目がちに言った。
「あ……いや……」
「なんかもう、往年のモハメド・アリみたいにしてしまってなんかごめん」
「いや、そんな、ね?髪が短いのに巻きたいって言ってお願いしたの私だし、ね?」
「でもこれじゃない感丸出しだし、奥山さん」
「これじゃないと思ってはいるけど、うん、でもほらガチで謝られるとなんかもう私自身否定されてるみたいで」
「そこまで否定してないから!アリな奥山さんも有りだよ」
「うまいこと言ったみたいな顔してるけどそうでもないよ?」
右手に缶ビール、左手に手鏡、奥山さんは無表情にモハメド・アリを見ていた。
「やっぱりこれじゃない」
「逆にコレかもよ!?」
「あかりちゃん、必死になるポイント違う」
とりあえず髪を洗ってあかりちゃんみたいにふわふわになり直そう、奥山さんは缶ビールをぐいっと飲み干し立ち上がった。
「あかりちゃん、冷蔵庫にガパオライスの材料あるから作って食べて待ってて」
「ガパオ?」
「昨日買ったの」
バスルームに向かう奥山さんの後ろ姿を見ながら、ガパオライスを作るという選択をする女子力の使い方にあかりちゃんは感心した。
「なぜガパオライスなんだろう?」
もちろんあかりちゃんはガパオライス作りなどせず、奥山さんが飲まないからとくれたブルーベリーリキュールのソーダ割りを飲んだ。
「ガパオライスじゃないよ、チョイスはこれじゃないよ」
些か酔いが回ってきたあかりちゃんは小さく毒を吐きながら奥山さんを待った。
「お待たせ」
奥山さんの声がして、あかりちゃんは振り返った。タオルで頭をガシガシこする奥山さんを見てあかりちゃんは固まる。
「あかりちゃん?」
「奥山さん!なんでいっつもきのこ頭にしてんの!なんで象柄着てんの!!」
「え?何?」
「奥山さん!ちゃんと鏡見て!」
黒シャツと細身のジーンズに着替えた奥山さんは、スラリとしたイケメンになっていた。
「かっこいい!!奥山さんかっこいい!!」
「ちょっと何言ってるかわからない」
「奥山さんはイケメン過ぎるんだよ!!」
「だからわからない」
奥山さんはモテたい。