異世界もラクじゃない!?
2話目!!
さて、念願の異世界に来たわけだが、なにから始めたものか。
普通、ゲームや漫画の世界だとギルドに行って自分が就きたいジョブに就くわけなんだが、右も左もわからない状態ではギルドにいくことすら困難だ。
とりあえず俺はポーチに何か入ってないかと探ると二枚枚の紙切れが入っていた。
一枚目の紙はどうやらこの街の地図らしい。
そして二枚目は手紙のようだ。
あの女神が書いたものだろうか?
とりあえず手紙を読んでみることにした。
「えーっと、なになに、今あなたがこれを見ている時は右も左も分からず、これから何をすればいいかと嘆いてると思われますので、ここに最低限必要なことは書いておきます。
先ず、このラムレーンの世界の言葉とあなたの世界の言葉とは異なるのですが、あなたの世界の言葉が通じるようになっています。
次に、あなたが今、装備しているのは、あなたが外の世界で着ていたものを、私の好みな見た目に変化させたものですので、防御力は布切れ当然です。
しかし、外の世界の住人ということで、多少はあなたのステータスは高い筈ですが、最初に言っておきます。
俺TUEEEEなんかはできませんよ。
次に、この街の地図が入っていますが、これはただの地図ではありません。
女神様特製の地図なのですよ。
あなたが行く街によって、その街の地図が浮かび上がるという優れものなのです。
どんな馬鹿でもこれさえあれば迷わないですね。
そして最後に万が一死んでしまうことがあっても私のところに戻ってくるので安心できますが、仕事を増やされたくないので死んでしまうのは勘弁してほしいですね。
P.S私に会いたいからってわざと死んじゃダメよ♡」
色々とツッコミどころのある手紙だが、まず言えることはただ一つ。
あの女今度会ったら一発引っぱたいてやりたい。
しかし、なんか日本語を通じるようにしておいたとか書いてたけど、この世界の設定をいじれる程の力があるなら、魔王もどうにかできるんじゃないか。
という疑問が生まれたが、あまり深入りしないでおこう。
とりあえず女神様特製の地図を頼りに俺は職業を得るべくギルドに向かった。
それにしても、この防具見た目に反して防御力1かよ、まるで無課金ユーザーがイベントでもらった防具を装備してるみたいじゃないか。
心の中で愚痴をこぼしながら、ギルドに向かう途中、たくさんの冒険者らしき人が俺の方を見てくる。
それもそうだろう、俺以外の人はいかにも駆け出しの冒険者が着ているような装備なので、ここは始まりの街と言ったとこだろう、そこに明らかに場違いな見た目の装備をしている奴がいるのだ、無理もない。
そして、俺を見ていた男女2人組がこんなことを。
「あの人すっげー装備してるよ、あれって神殿騎士が装備してるやつじゃないのか?」
「え、嘘! 騎士様がこの街にくるなんて。」
「きっと王様の依頼とかなんかでこの街に来たんだろう、いいな、カッコイイなー憧れるなー、俺決めた、騎士になる。」
「無理無理、アンタに騎士なんてなれるわけないわよ。」
「俺も、あの人みたいにカッコよくなりてぇんだよ!」
やっべー、すっげー恥ずかしい、この装備するぐらいならパンツ一丁になったほうがマシかもしれん、この装備、見た目だけで、防御力1にも等しいんですよー、そんでもって俺、いまからジョブ決めに行くんですよー、なんて言えねー。
女神ぶっ殺すー。
俺は、かなりの注目を浴びながら、ギルドに向かう足を速く進めた。
ギルドについた俺は、さっそく受付嬢であろう人に話しかけた。
相変わらず、周囲の目線がかなり痛いが。
「あの、すいません。ついさっきこの街についたばかりで職業を選びに来たんですが」
「ようこそ。新規の方・・・・・・じゃないですよね? どういったご要件で?」
やばい、受付嬢ちょっと怯えてる。
理由は分かってる、この装備のせいだろう。
ジョブ決めたらこの装備捨てに行こうそうしよう。
俺は怯える受付嬢に、できるかぎり優しい口調で
「あ、あー自分からこういうのも何ですが、金持ちの家に生まれたボンボンでして。冒険祝いに騎士の鎧を買ってもらったんですよ、ははは。」
そう言うとギルドにいる周囲の冒険者からは
「なんだよ、ただの格好つけの金持ち小僧かよ」
「あいつ、ちょっと痛い目にあわせてやりてぇ」
などと、俺に対する不満でいっぱいのようだ。
苦し紛れに放った言い訳だがちょっと無理があるかとも思っていたが
「そ、そうなんですか。騎士様ではないのですね?お祝いでもらったものだそうで、ちょっと言いにくいのですが、騎士様でもないのに、街中で騎士様の格好をすると色々と良くないことがありますので。」
なんとか信じてもらえたらしいが、よくないこととはなんだろうか。
「色々と良くないこと?」
と俺が尋ねると
「はい。例えば首を切られたりと色々・・・・・・」
俺は着てはいけないものを着ているのかもしれないていうか、騎士怖くない?
「そ、そうなんですか。この装備、職業を選んだら捨ててきますので早く職業を選びたいんですが。」
と言うと受付嬢は焦りながら一枚の紙を渡してきた。
受付嬢も、あまりこの恰好でここにいられるのは都合がいいものではないようだ。
渡された紙にはパラディンや魔法剣士、魔道士やプリースト等と言ったゲームでも親しみのあるジョブ名が載ってあった。
特にパラディン、魔法剣士、といった類はゲームでは上級ジョブとして扱われており、序盤ではなれないジョブなのだが、この世界ではそういった概念はないのだろうか。
「この魔法剣士で」
「すみませんあなたは今魔法剣士を得ることはできません。魔法剣士になるには剣士と魔道士の熟練度をある程度あげないとなれないようになっております。普通考えたらわかりますよね?馬鹿なんですか?」
そこまで言う? ひどくない?
当たり前といえば当たり前なのだが、いきなり上級ジョブになれるはずもないだろう。うん。知ってた。
「すみません・・・・・・剣士で。」
「剣士ですね。わかりました。では、これを」
と言って受付嬢が差し出してきたのは、一つの巻物だった。
「では、ここにあなたの名前を書いて頂くと正式に剣士となることができます。」
これがゲームでよく見るスキルやステータスを確認することができるといったものだろう。
それには名前を書く欄があったので、そこに桜井恭介と書き込んだ。
「サクライ・・・・・・キョウスケ様ですね? 変わった名前をしてらっしゃいますね。」
たしかにここは異世界なのだから、ここの住人は桜井恭介と言った感じの名前ではないだろう。
俺が考えていると受付嬢が巻物と剣を渡してきた。
「はい、これであなたは正式に剣士となることができました。
この剣は正式に剣士となった際に送られる
《ブロードソード》です。
職業は好きなときに好きなものに変えることができるので、色々職業を楽しんでみるのもいいですね。
では、あなたの旅が良い旅でありますように。」
「ありがとうございます。いつか魔王を倒すほどの大物になって帰ってきますよ!」
そう言うと、周囲の冒険者たちは静まり、受付嬢は、何言ってんだコイツ、ていうか早く出ていけと言わんばかりの目で俺を見てきた・・・・・・ような気がしたので俺は足早にギルドを後にした。
ギルドを後にした俺は、あの女神、改め疫病神に勝手に防具の見た目を変えられ、装備しているだけで命の危険を感じる、この見た目だけの騎士防具をどう処理するかを考えていた。
捨てに行こうと考えたが、これを外すと下着だけで街中を歩くことになり、楽しい異世界生活も牢屋の中で過ごさなければならなくなってしまう。
しかしこの防具本当見た目だけはいいよな、騎士に間違えられる程だし、なんていうか、高級感に溢れているよな。
ん? 高級感溢れる・・・・・・?
俺はある事を思いついた。
早速疫病神特製の地図で、ある場所に向かった。
「ようこそ! この街のたった一つの防具屋へ! ひっ、騎士様でございましたか! 失礼しました!こ、このような小汚い防具屋へどういったご要件で!」
そう、俺が思いついたある事とは、この高級感が溢れるだけの防御力1の防具を売りにきたのだ。
それにしてもこの街の人は、どうにも騎士とやらにひどく怯えているようにも見えるが・・・・・・そんなにやばい連中なのか?
俺は怯えている店主になんとか、騎士ではないことをわからせ、この防具を格安で売りたいと言った。
「こ、こんな高価な鎧を買いとるお金なんて僕の店にはありませんよ!」
ほう、格安と言ってもそこまでいうほどの代物なのか、店主は防御力1ということには気がついていないようだ。
なんだか俺は偽ブランド品を売りつけているような気分になったが気にしないでおこう。
「いくらでもいいんだ、いくらなら買い取れます?」
と尋ねると店主は少し考えた。
「10万程でなら買い取れますが・・・・・・」
「よし、売ります」
俺は即答した。
「で、でも、この位の防具なら50万はしますよ? あなたにとっては損ではないのですか?」
店主はオドオドしたような口調で尋ねてきた。
ふむ、大体買うとなると50万はするのか、まぁ本物での話だろうけど。
「いえ、大丈夫ですよ、どうせ使わないんで」
そういうと店主は今、目の前にいるヤツがなにを言ってるのかという顔で俺を見て、悩んだあげく
「わかりました。では10万で買い取らせていただきます」
俺は小さく、店主に気づかれないようにガッツポーズをした。
「あ、あとこの店で一番高い防具セットください。代金はその10万から差し引いておいてください」
そう言い、この店の一番高い防具を購入し、ようやくまともらしい駆け出しの冒険者の装備になり、俺は防具屋を後にした。
財布の中には9万前後はいっており、これからの宿にも困らないだろう。
幸先のいいスタートをきった俺は、あと一つやらなければならないことがあった。
「・・・・・・パーティーメンバー探すか」
そう、魔王を倒すとなれば勿論一人の力では到底かなわないだろう、なので同じ魔王討伐という素晴らしい志しを持った仲間を探さなければならない。
そして俺は期待と不安を感じながらも再びギルドへと向かった・・・・・・




