#17 ?(1)
まったく余計なことをしてくれる。
斉明と雅が、情報部の大船課長に携帯電話で連絡しているのを聞いた青年は、心の底からそう思った。このままでは彼の計画が破綻する。予定を繰り上げなくてはいけない。
電話による連絡が先にいった以上、郵送による文書が届く前に、上宮邸には情報員が来るだろう……それまでに上宮家の方で偽装が終わらなければ、委員会によって正確な調査が行われ、青年まで辿り着く危険が大幅に高まる。
なんとしても避けなければならない。そしてその為には、上宮家に来る情報員が邪魔だ。
理想的なのは、上宮側の偽装が完了し、事実が闇に葬られることだった。孝治あたりが気付くかもしれないが、その場合は各個に潰していくか、内争に見せかけて葬れば良かった。
だが、現状では使えない。内争に見せかけようにも、全員が揃っているので規模が大きすぎて手に余る。
ふと、妙案を思いつく。そうだ――情報員を消しつつ、証拠を委員会自身の手で消させてしまえばいい。
だが可能だろうか? 青年は考える。
裁定委員会実働部が動くに足る理由が揃うか否か――どちらかといえば是だろう。
現当主の殺害と、その揉み消しを行っているというタレコミ、そして上宮斉明という貴重な人材の後見人の選定役から勝手に解かれた現状で、その上、話を伺う為に派遣した情報員が死んだとなれば……委員会も実働部を出さざるを得ない。たとえ上宮家の裁定委員会への反発と情報員の殺害に、繋がる証拠が無かろうと、前者と後者の『上宮』というキーワードが、二つ事柄の連続性を主張する。
それに委員会としては、上宮家以外にも、再度実力を示しておきたいところだ。委員会に逆らう追求者が増えれば、裁定委員会の存在価値が無くなる。
中国には、一人を殺して大勢の見せしめにする、という意味の言葉があるらしい。まったくもって物騒な手段だが、効果的なのも事実だ。
どうせなら徹底的にやって欲しいものだ。誘導し、最大の結果を出してくれそうな裁定委員会の実働部の人間……一人だけ、心当たりはあった。
まずは前座だ。青年は情報員へ探りを入れるため、本土へ戻る事にした。




