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おーっほっほっほ、フラグをへし折りますわぁっ!!  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第一章 おーっほっほっほ、1人目ですわぁっ!!
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第六話 おーっほっほっほ、盗賊(?)とエンカウントですわぁっ!!

………えっと、作者が寝惚けて予約日を1日ずれているのに気付いておりませんでした。

深く陳謝申し上げます。

次回の投稿日は…24日となります。

そして、ブックマーク数250件を超えました。

皆様のご期待に沿えるよう、今後も投稿を続けてまいります。

それでは、予告どおり王子様にお嬢様から先制攻撃が入ります。

 




 アドリアナたちが北の都ノルドラントへと馬車を進めて2日目。


 カインズたちは相変わらずアドリアナの通達していた旅程を悉くずらしていた。


 何とか帳尻が合っているのも辺境伯ドルンズからの計らいで、それがなければ公爵家の威光に笠を着たような強引な手法でしかない。


「…やってくれますわね、あの王子」

「…本当にあの方はお嬢様のいる公爵家に婿に来る気があるのでしょうか?」


 たった2日一緒の行動をするだけで精神的な疲労が溜まってきていて、ザックスとミスティが目の前にいるのにも拘らず、アドリアナとエヴァンスは愚痴を零していた。


「…何と言うか…心中お察しします」

「アドリアナ様、紅茶を飲まれませんか?

 ロンドン商会の保温ポットに紅茶がありますので…」


 しかし、ザックスとミスティは2人の疲労困憊振りに同情していた。


 この2人もカインズからの被害を少なからず受けてるからだ。


 旅の初日、アドリアナが事前に予約の通達をしていた宿屋に着いて馬車から降りた瞬間、ミスティに向かってこう言い放った。


『そこのメイド(・・・)、俺たちの荷物を宿屋に入れておけ』


 この文言にある『メイド』とは、ミスティを指していた。


 どこの国に着飾った淑女に対して使用人―――メイドなどと言えるのか、その場にいた者たちも一瞬にして固まってしまった。


 当の本人―――ミスティはといえば、まさか自分が使用人と間違われるなど思っておらず、当然だが無視した。


 アドリアナが連れてきた使用人たちの中にもメイドはいる為、そちらに向けてカインズが命じたと思ったのである。


 だが、この発言を笑って流す事が出来ない人物がいた。


 ミスティの婚約者である―――未発表だが両家から既に了承は得られている―――ザックスである。


『ぼ、僕の婚約者を使用人だと!?

 カインズ殿、貴方は僕の婚約者を侮辱しているのか!?』


 普段大人しい人間が一度怒らせると怖いとアドリアナは聞いた事があったが、ザックスの場合はそれが見事に当て嵌まった。


 なまじ顔が綺麗なザックスが激情を露にして、原因(カインズ)も目を見開いて何事かと驚いていた。


 アドリアナとしても一言どころか二言も三言も突然のチャンスを活かそうとしたのだが、今回ばかりは分が悪かった。


 結局、その日は1週間の旅をするとあって懇親会という名の顔合わせをする予定だったのだが、カインズの発言で完全に流れる事になったのだった。


 そして2日目、全員が一言も発さず朝食を終えるとそれぞれが馬車に乗り、出発する。


 エヴァンスが裏でカインズの側近たちに嫌々だが旅程の書類を渡していたので、側近の言葉にカインズは素直に従う事にしたのか、特に不平を口にする事はなかった。


「…殿下、次の街の宿ではカインズ王子とは別の宿に致しますので、今回の様な事は二度と起こりませんわ」


 まさかカインズがあのような発言をするとは予想だにしていなかったアドリアナは難しい表情をしながら、後方にあるカインズの乗る馬車へと向けて効くかも怪しい【彼女】がよく口にしていた呪いの言葉を内心口にしていた。


 ―――曰く、『もげろ』と。


 男女どちらにも口にしてた為、何がもげろなのかアドリアナには見当がつかなかったが、エヴァンスがその事を聞くと苦々しそうな表情をしていた、どうやら男性からすれば何か心当たりがあるのだろうとアドリアナは思ったのだった。


「…うん、そうしてくれると助かるよ。

 父上…じゃなかった、陛下から聞いていたけど、彼…本当に酷いね。

 特に頭が」

「ザックス殿下、私はもう気にしていませんから。

 …と言いますか、気付いていなかったといいますか」


 本来最も怒るべき筈のミスティが怒らず、婚約者であるザックスが普段見せない怒りを見せるあたり、アドリアナはカインズを徹底的に潰す場面を間近に見せる事が出来て幸いと考えた。


 旅は順調に見えて思った以上に面倒が起きていて、この1週間の内にどれだけ舞い込んで来るのか、アドリアナは嫌な未来を幻視して辟易としていた。


 そんな時、馬車が突然止まった。


 まだ街を出て数時間、ちょうど森を抜けようと馬車が1台ギリギリ通れる道へと入り始めたころで、何かあったのかとアドリアナはザックスたちと顔を見合わせた。


「……お嬢様、外が何やら騒がしいです」


 すると、エヴァンスが外の様子を見て何かが起きたことをアドリアナに報告した。


「…何かしらね、すぐに解決出来そうな問題だといいのだけど…」


 しかし、アドリアナが口にした願望は虚しくも運命の女神に聞き入られることはなかった。


 だが、面倒と同時に好機を与えられた事に、アドリアナはすぐに気付く事になる。



 × × ×



 馬車を降りて、私が目にしたのは泥まみれの農民たちがひーふー…6人でした。


 手に持っているのは使い込まれた(クワ)(スキ)で、その先端は私たちに向けられています。


 えーと、これは…もしかしてそうなのかしら?


「しょ、食料と金をよこせっ!!」


 目の血走った彼らからは切実な脅し…いえ、要求がされます。


 私も北の領地の全ての街や村を知っている訳ではないのですが、この辺りの道は以前からよく通っていたので事前の下調べはしていますの。


 なので、この辺り限定で断言出来るのですが…この辺りには村どころか、集落があったという情報を私は持っていませんでした。


 手に持っている農具は脅しの為の武器なのでしょうが、残念ながらこちらの警備責任者の持っている武器はどれも一級品の、正真正銘人殺しの道具の代表格、刀剣です。


 農具も使い方次第で凶器にはなりますが、さすがに使い手も一流な騎士たちを相手に、素人同然の彼らが太刀打ち出来る訳もなく。


「ぐわっ!!」

「ギャッ!!」

「いだぁっ!?」


 1分と経たずに制圧されてしまいました、戦闘シーン、なんてものが存在しない位にあっさりと。


 剣なんて抜いていません、鞘で軽く殴っただけで彼らは立ち上がれなくなっていましたわ。


 打ち所が悪かったというよりも、彼ら自身がかなり衰弱しているようで、立っているのもやっとの事だったのでしょう。


 少し離れた場所でカインズ様が…もう様付けるのも面倒ですわね、カインズが喚いていますが、面倒なのでカットですわ。


「…ザックス殿下、ここは私にお任せいただけませんか?」

「うん、お願いするアドリアナ嬢。

 僕もなんとなくだけど彼らの事情が見えるから…それに、今回は未遂だしね」


 ザックス殿下からの許可も得られましたし、ここ最近の鬱憤を全て晴らす訳ではありませんが、丁度いいので利用させていただきましょうか。


「うぅ、くそぅ」

「いてぇよぉ」


 泣きが入り始めている彼らの前に立つと、彼らは慌てて両手を手に付けて頭を擦りつけた。


 いわゆる、土下座ですわね。


 とりあえずは事情を聞いてみましょう。


 こんな状態になってまで、成功するはずのない強盗行為に走るのです、のっぴきならない事情があるのでしょう。


「貴方たち、どうしてこんな事を?

 私たちが大人しく貴方たちに食料や金銭を渡すと、本気で思っていたの?」

「…仕方がなかったんだ。

 こうでもしなけりゃ、俺たちの村は…!!」

「…村ですって?

 この辺りに村落があるとは聞いた事がないのだけど…」


 すると、聞きもしないのにマーニという男の方が事情を説明し始めた。


「最近領主様が作ったのさ…けど、この前の大雨で作物が根腐れして食糧難になった。

 配給される分じゃ足りないからって、貴重な種芋を分けてもらったのに腐らせちまって…それで…」


 止むに止まれず、村の皆の食料を確保する為にこの道を監視して通りかかった私たちを襲ったと。


 …確か、この辺りの領地はスファーニ子爵だったかしら。


 北の領地でも特に厳しいとされている土地の一つね、新しく村を開墾しても、こうした事態になると町から遠いとなると援助が難しくなるから、農民が盗賊に身をやつしてしまうという事態にもなっているのでしょう。


 この国には物語によく出る『腐った貴族』という者たちは存在しません。


 いえ、正確にはいたとしても内々に『病死』してしまいますの。


 国家は民という手足や体がいかに大切かということを学院で学びますので、それで理解できない、権力を笠に着て横暴を振るおうとする貴族が現れると、陛下の持つ特殊な諜報機関が秘密裏に【処理】するのだとか。


 貴族たちもそんな末路を味わいたくないので必死になって働いていますの。


 おかげで、この国では実力の無い者はないなりに頑張り、ある者はそれ相応の待遇や褒章を与えられますのよ。


 今回のスファーニ子爵は別段陛下の持つ諜報機関が怖くて働いている訳ではなく、本当に民の為に尽力してくださっている貴族です。


 そんな彼の領地で大貴族の娘である私、そして王族であるザックス殿下のいる馬車を襲ったとなれば、その土地の管理者として責任を問われる事になりかねません。


 未遂だったので今回は内々に処理されるでしょう、私も殿下も優秀な北の人材を減らしてしまうなんてまね出来ませんし…なまじ権力者の血縁だと私たちはよくても周りが許さないという場合がありますから大変ですわ。


「…仕方ないわね、そういう事なら物資を分けてあげますわ。

 …エヴァンス、物資管理の担当者に物資の一部を持ってくるように伝えなさい。

 そうね、2週間分あれば次の配給される物資が少し遅れてもどうにかなるでしょう」

「よろしいので?」


 エヴァンスが問い返してきましたが、本当に問題はありませんわ。


 持ってきた物資は余剰分もあって少々減った所で問題なんて発生しませんもの。


「ここで見殺しにするだなんてあり得ないわ。

 元々持ってきた物資はこうした食べる物に飢えている民たちに分け与える為に持ってきのだから、それが少し早まっただけよ」

「…畏まりました」


 エヴァンスはアドリアナの言葉に頷くと、後方にいる物資管理をしている担当者の元へと走っていった。


 不満なのかしら、まぁ彼らは犯罪者なのに見逃されようとしているのだから、納得し難いのでしょうね。


「ほ、本当に食料を分けてくれるんで…しょうか?」

「もちろん分け与えるに決まっていますわ。

 この食料はその為に商会を通じて集めたのだから。

 …ただし、条件がありますの」


 タダほど高いものはないというのは、よくある話ですわよね。


 恐る恐る、マーニとその仲間たちは私からの言葉を待っています。


「この中の首謀者を引き渡しなさい。

 そうすれば、他の5人は見逃してあげますわ」


 未遂とはいえ、下手人を全員見逃すのは流石に問題ですしね。


 彼らがどういう決断をするのかを見ていましたが、すぐに話がついたようですわ。


 マーニが私の前にまで歩いてくると、その場で再び私に土下座をしてくる…正直絵面が最悪ですわね、まるで私が悪女みたいじゃありませんか。


「俺がこいつらを無理矢理連れてきたんだ。

 だから俺の首で済むなら喜んで渡すから、こいつらのことだけは見逃してくれ!!」

「いや、こいつらはここで殺すのだアドリアナ!!」


 …あらあら、邪魔(カインズ)が入りましたわね。


「こいつらはこの俺を、ノースエンド王国第二王子である俺の命を奪おうとしたのだぞ!?

 不敬罪で即刻処刑するのが当然だろうが!!」


 言ってる事はまぁまともなのですが、正直未遂、しかも実現不可能な彼らの罪に対して、あまりに罰が大き過ぎますわ。


 マーニに関しては処刑せず、スファーニ子爵に預けて下働きを半年ほどさせようと考えていますわ。


 そしてそれが終わればそのまま下働きで働くもよし、村に帰って生活するもよし。


 下働きに出る事で、少しは生活の知恵を他の使用人や料理人たちに聞いてみれば、少しは足しにもなるでしょう。


 マーニは…カインズがノースエンド王国の人間だと知ると物凄い形相で睨んでいました。


 まぁ、当然でしょうね。


 彼らが住んでいた土地を滅茶苦茶にして、土地を荒廃させるまでに至ったのはノースエンドが原因なのですから。


「罪に対して罰が大き過ぎますわカインズ様。

 未遂未満なのです、今回の件は下手人のマーニをスファーニ子爵に引き渡してそれで終わりですわ。

 …そもそも、この北の地へと来てノースエンド王国の要人であるカインズ様が好意的に歓迎されると、本気で思っていますの?」


 だとしたら、彼は本当のバカですわね。


 現実が見えていませんわ、国の賓客にするのも嫌な相手なのに、こうも図々しいと怒りを通り越して呆れてしまいますわ。


「そっそれは…っ!!」

「他国の批判をしたい訳ではありませんが…この者たちを盗賊になるようになったそもそもの発端は貴国の侵略が原因で、北の地の殆どを戦場に変えたからでしてよ?

 見てください彼の顔を、目元のクマも酷く頬が痩せこけていますわ。

 腕にしてもこんなに痩せ細ってしまって、これでは農作業も辛い筈です。

 北の大地を焼き払ってまで侵略してこなければ、北の地の復興はもっと早まっていたはずです。

 彼らもここまで飢えずにこの様な強盗行為をする事もなかった筈なのです。

 家族の為、村の為に行動した彼らに対して、貴方様が振るうのは剣ですか?

 でしたら…私とは意見が合いそうになりませんわね。

 私は彼らに手を差し伸べるのが当然だと思いますし、申し訳ない気持ちがありますから。

 私たち貴族が、もっと早く対処出来ていれば、貴国の軍隊を国境で退けていれば、この様な悲劇が起こる事なんてなかったのですから。

 簡単に頭を下げる事が出来ない身分ですので彼に頭を下げる事は出来ませんが、もし私に身分というものがなければ、先ほど彼がしたように土下座してでも謝罪をするべきなのです。

 それが彼らから奉仕され、彼らを守るべき筈の私たち王侯貴族が彼らから財産と平和を奪ってしまった罰なのですから。

 それが分からないようでしたら…カインズ様とは、一生(・・)分かり合うことは無いでしょう」


 …随分と不敬な事を言ったものですわね、ザックス殿下もミスティ様も、カリギュスト様も目を丸くしています。


 カインズ、分かりますか、これが私という存在なのです。


 ちょっとばかし頭が回るからといって、この私に嘗めた真似してくれた礼は万倍にしてもお返ししてあげますわ。


「…勝手にするがいい!!」

「はい、勝手にさせていただきますわ」


 捨て台詞も陳腐なもの、興醒めですわね。


 立ち去っていくカインズは忌々しそうに何度も振り返って私を睨み、私はその不愉快な視線を扇子を出して遮ります。


 鬱陶しい、早く叩き潰したいわ。


 その後、マーニを連れて私はスファーニ子爵のいる街へと向かった。


 事情を説明すると、子爵は申し訳なさそうに私たちに謝罪し、マーニを引き取った。


 マーニは別れる際、私にある事を伝えてきた。


『…あの日、赤い頭巾をした連中が教えてくれたんだ。

 食料を積んだ馬車がいっぱい通ってくる。

 護衛も少ないし、うまくいけば手にはいるかもしれないぞ…って』


 赤い頭巾…まさか…ねぇ。


 私はその赤い頭巾に関して、残念ながら非常に有用な情報を持っていました。


 血霧の傭兵団、彼らの装束の1つに赤い頭巾をしているという事に。


 茶番劇と思いきや、どうやらとんでもない事態になってきているようですわね。


 ですが…最後に笑うのは、私でしてよ?






…この時点でジャブどころかストレートな気もしますが、まだトドメは先です。

読んで頂き、ありがとうございました。

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