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おーっほっほっほ、フラグをへし折りますわぁっ!!  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第一章 おーっほっほっほ、1人目ですわぁっ!!
4/18

第三話 おーっほっほっほ、王城へ御呼ばれですわぁっ!!

遅くなりまして、申し訳ありません。

第三話です。

まだまだカウントダウンが長い…頑張って一章完結を目指します。

次の投稿日は1……ご…いえ、6です、16日です。

連続投稿が潰えまして大変申し訳なく、16日に頑張って2話投稿します。

 



 アドリアナは現在、緊張した面持ちである場所を訪れていた。


 ノースエンド王国第二王子カインズとの(フラグ)を完全にへし折る為の準備を中断され、不機嫌であった。


 しかし、呼び出したのがエイルネス王国国王マリウスからの登城要請とあれば話は別である。


 王族専用の居住区画にある庭園で待つアドリアナは何度もこの場所へ訪れているが、元婚約者に暴言を吐かれたり叩かれたりと余り良い思い出がない為、綺麗な庭園を眺めても心が落ち着くことはない。


 むしろ碌な思い出の無い場所に案内されて、内心で何度も溜息をついている始末だ。


 庭園にはエヴァンスがアドリアナの背後で佇んでいて、内心沈んでいるアドリアナになんと声をかければいいのか迷っているようである。


「…お嬢様、陛下がいらっしゃったようでございます」


 庭園の入り口の扉が開く音がした瞬間、アドリアナは椅子から立ち上がり臣下の礼をとる。


 今日呼ばれたのは、ロンドベル公爵家代行、アドリアナ・ピスタリオ・ロンドベルという半ば公式のものなのだ。


 半ばというのは、呼び出された場所が王族専用の居住区画にある庭園だからだろう。


 極一部の貴族にしか立ち入る事が許されないこの庭園に、新たな住人が加わった。


 庭園の主、否、このエイルネス王国を統べる至尊の君。


 マリウス・ロマノフ・エイルネスという韻を踏んだ金髪碧眼の偉丈夫が豪奢なマントをはためし侍従長、そしてアドリアナよりも幼い少年と共に現れた。


「陛下、この度は…」

「―――よい、長ったらしい挨拶は不要だ」


 重苦しい声音をした偉丈夫、マリウスがアドリアナとエヴァンスに臣下の礼をとくことを命じた。


「…失礼いたしますわ」


 アドリアナは即座に立ち上がるとマリウス、そして少年が椅子に座りアドリアナに座るように命じ、彼女が座ると侍従長が用意していた紅茶を3人に配るとエヴァンスと同様に後ろに佇んだ。


「…まずは突然呼び出した事を詫びよう、北への支援の為に商会を動かしていたのだろう?

 そなたの配慮には常日頃から感謝している」

「頭を上げてください陛下、勿体無いお言葉ですわ。

 私はこの王国の為に良かれと思って務めているのです。

 そのお言葉だけで、その労苦が報われましたわ」


 王であるマリウスが軽くとはいえ頭を下げるという事を他の貴族が見れば卒倒するだろう光景だが、ロンドベル公爵家の功績は至尊の君であるマリウスに頭を下げさせるほど無視出来ないものなのだ。


 しかし、アドリアナやアリストたちロンドベル公爵家は常日頃から貴族家筆頭として他の貴族よりも貴族らしく、誇りと責任、そして義務を何よりも重視している。


 当然の事をしている以上、頭を下げられるとアドリアナの頑丈な胃にもくるものもあるのか、冷静に返すが内心は酷く焦っていた。


「…加えて、ノースエンドのカインズとかいう第二王子を潰す準備にも励んでいるようで何よりだ。

 先日ドルンズから手紙がきてな、随分と楽しそうな事を仕出かす様ではないか」

「それは…」


 アドリアナは、まさか協力者のドルンズ辺境伯がマリウス宛に手紙を寄越しているとは思わず、顔を引き攣らせた。


「よい、お前達の事だ、大方事後報告で済ませるつもりだったのだろう。

 親子揃って優秀なのは余としても誇らしいが、後になってとんでもない報告を読まされる身にもなって欲しいものだな」

「…大変、申し訳なく」


 親子揃って、というマリウスの言葉に思うところがあるのだろう、複雑な気持ちが声に出ていたのか歯切れの悪いアドリアナの言葉に、マリウスの隣に座っている少年が目を丸くしていた。


「アドリアナ嬢も、その様な顔をされるのですね、はじめて見ました」

「…ザックス殿下、大変見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ございません」


 深々と頭を下げるアドリアナに、恐縮するように慌てる少年、エイルネス王国第二王子(・・・)にして次期後継者とされるザックスは身振り手振りでアドリアナに弁解しようとしていた。


「えええっ!?

 や、やめてください、そんな!!

 そんなつもりで言ったんじゃないんです!!

『完璧な淑女』といわれるアドリアナ嬢が父上の言葉でうな垂れている姿が新鮮で…っ!!」


 口を開けば開くほど墓穴を掘っていくザックスなのだが、不思議とアドリアナはザックスの言葉を不快と感じなかった。


 ザックスの仕草がどこか小動物のような可愛らしさがあったからなのか、密かにアドリアナはザックスの事を『アライグマザックス君』と呼ぶ事にした、心の中で。


 12歳とアドリアナより4歳ほど年の差のあるザックスは天使の様な可愛らしい顔立ちでこれでもかというほどに必死な様子なのだが、それすらも可愛らしく映るのは生来の魅力というものなのだろう。


 元ではあるが、アドリアナの婚約者であったアーサーとではまるで違うのだと思うと、ザックスが次期王として立派に成長する事を願わずにはいられない。


 マリウスとアドリアナはザックスが落ち着くまで可愛らしい仕草を堪能していた。


 どうやらマリウスはザックスの事をよほど可愛がっているのか、ごつごつとした大きな手でザックスを不器用ながらも撫でて落ち着かせていた。


「その辺で落ち着くのだザックスよ。

 アドリアナ嬢に呆れられてしまうぞ?」

「そんな陛下、その様な事は滅相もございませんわ。

 私はザックス殿下が健やかに成長されているのを間近で見られてとても光栄な事と思っているだけですわ」


 からかうようなマリウスの言葉に、アドリアナは遠回しに『もっと猫を被る努力を頑張りましょうね』とザックスに伝えたのだが、伝わったのかザックスはがくりとうな垂れた。


「うぅ、もっと精進します」

「…さて、話が逸れてしまったな、話を戻すとしよう。

 そなたがしようとしている件だが、止めよなどというつもりで呼んだのではない。

 むしろこちらから協力しようと思い呼んだのだ」


 まさかマリウスからの協力宣言に、思わずアドリアナとエヴァンスが揃って大きく眼を見開いた。


 国王からの協力ということは、アドリアナにとって渡りに船、もはや向かうところ敵無しの状態となった。


 国のトップから協力ということは、多少の無茶も国がどうにかしてくれるという事でもあり、まだ余裕がある内から計画の上方修正が必要だとアドリアナは内心飛び上がってガッツポーズをしていた。


「だが、もちろん無償ではない、少なくはないがこちらとしても対価を要求したい」

「…と仰ると、何か陛下の御心を騒がすような懸念があるという事でしょうか?」


 内心小躍りし始めていたアドリアナだが、それを一時中断してやはりタダほど高いものは無いという事を思い知った。


「…そなたには、ザックスの婚約者、ミスティ嬢の王妃教育を見て欲しいのだ」

「ミスティ嬢…というと、南のアズライト候の?

 既に決まっていましたのですね」


 ミスティ・ドラクルワ・アズライト侯爵令嬢、南を治めるアズライト侯爵家の長女で、ザックスと同じ12歳と記憶していたアドリアナは、彼女が次期王妃となるのかと思い納得した。


 既にアドリアナはロンドベル公爵家の次期当主が内定している身だ、よって他の候補を探す場合、王家に迎え入れる爵位を持つ家柄とすれば、最低でも伯爵家、公爵家が無理な以上は侯爵家まで探す事となるだろう。


 南のアズライト侯爵領はロンドベル公爵家に次ぐ侯爵位を持つ家柄で王族に連なるとしても申し分のないものだ。


 鉄鋼が盛んなアズライト侯爵領は工業都市としても有名で、国内における鉄の6割以上のシェアを保有している。


 公爵家との関係強化が今回は難しい以上、侯爵位を持つアズライト侯爵家に白羽の矢が立ったのだろう。


「内々だがな、時期を見て発表する予定だ。

 バカな元息子が見出した女よりも遥かに良識と常識のある少女と評判で、何度かザックスとも顔合わせをしているのだが、お互いに乗り気なようなのだ」

「まぁ、それは素晴らしいですわ。

 ザックス殿下、おめでとうございます」

「あ、ありがとうございます、アドリアナ嬢」


 顔を赤らめてはにかむザックスに、よほど相性がよかったのだということが窺い知れるもので、これくらい可愛げがあれば、とアドリアナは元婚約者であるアーサーを思い出していた。


 始まりからして元婚約者アーサーは―――現在は継承権を破棄され、王族から籍を抜かれた上ノースエンドに追放されている―――自尊心が高く、沸点の低い、要するに次期王として失格な人物だった。


 しかし、アドリアナとしてもその性格を矯正し次期王として相応しい人物になってもらおうと努力はしていた。


 それが(かえ)って逆効果だったのか、記憶にあるアーサーは余計に頑なになってしまった。


 最終的にはマリウスがアーサーを見限り、ザックスを次代の王に据えようと教育を始めた事でアドリアナもアーサーを見限り、数ヶ月前、『ヒロイン』という平民の少女とアーサー以下3人の貴族の青年たちをこれでもかというくらいに叩き潰した。


 この時点で未来が変わり、アドリアナが生き残るという事態となったのだが、生き残った以上責任を放棄する訳にはいかない。


 アドリアナは元ではあるが、次期王妃として相応しい人材になれるよう、そういう教育を受けた経験者だ。


 仮にだが、もしこの場でアドリアナが妃の1人―――すでに正妃がいるので側妃だ―――となろうが、他の妃と遜色無い立ち振る舞いが出来るだろう。


 その教育は、並大抵の努力で積み上げられるものではない。


 ミスティに淑女教育という下地があるとはいえ、ザックスとの婚約を発表し、王族に迎え入れられるまでの猶予は間違いなくアドリアナの時よりも短いだろう。


 アズライト侯爵家の面子に泥を塗らせない為にも、次期王妃とのコネを作るという為にも、そして何よりエイルネス王国に必要な事だとアドリアナは感じ、その場で即答した。


「はい、微力ながらミスティ嬢の為にも、私が立派な次期王妃となれるよう支援させていただきますわ」


 その返事を待っていたのか、『そうか』と返したマリウスは侍従長に声をかけた。


「ショカット、ミスティ嬢(・・・・・・)をここへ」

「畏まりました陛下」

「………え?」


 ショカットと呼ばれた侍従長は一礼すると、庭園から去っていく。


 アドリアナはマリウスの言葉に驚き、庭園の入り口とマリウスを往復して見て、そして気付いたのだろう。


「実はだなアドリアナよ、ちょうどそのミスティ嬢もこの王城に登城しているのだ。

 余はこれから公務があるので席を外すが、後はそなたが責任を持ってミスティ嬢を教育してくれ。

 なに、言われなければ何も出来ない人形ではない。

 付きっ切りで教育する必要もない、あくまで仕上がりを見てもらう程度でよいから、1ヶ月に二、三度の頻度で見てやって欲しい、頼んだぞ?」

「へ、陛下っ!?」


 マリウスは席を立つと、足早に庭園をそそくさと出て行った。


 余りの身軽さに、アドリアナとエヴァンスは目を見開いて愕然とした。


「…この協力の対価、割に合うのでしょうか?」


 ぼそりと呟くエヴァンスの声が聞こえたのか、アドリアナがエヴァンスの方向を見てきつい目で睨み付ける。


 口は災いの元、エヴァンスはこれ以上アドリアナを不快にさせない為にも、知らぬ顔をしてただ(アドリアナ)の矛先が過ぎ去るのを待った。




 ■ ● ■ ● ■ ● ■ ● ■




 あの筋肉ダルマ…もとい、陛下からの対価がもしかすると高い買い物になったのではと思い始めた時、陛下と入れ違いに1人の少女が庭園の入り口から現れました。


 目鼻が整っていて、よほど両親から愛情を受けてきたのか彼女から漏れ出る空気は色で喩えるならピンク…間違ってもドレスの色がピンクだからという訳ではありませんが、そう喩えるのにしっくりと来るような、可愛らしい少女でした。


 入り口から一歩も足を踏み入れないのが不思議なのだけど…陛下から庭園へ入る事を許可されているはずよね?


 きょろきょろと辺りを見回していますけど、そちらには誰もいませんわよ?


 ていうか、何故まっすぐこちらに来ないのか本当に不思議です。


「あ、ミスティっ!!」


 アライグマ…いえ、ザックス殿下がその少女の名を呼ぶと、彼女―――ミスティ嬢がザックス殿下の顔を見るなり―――たぶん隣にいる私の顔には気付いていませんわ―――こちらへと歩いてきました。


「ざ、ザックス殿下、お久し振りです。

 へ、陛下から登城の要請があり、馳せ参じましたわ。

 再びお会いできて、光栄です」

「久し振りだねミスティ」


 と、努めて明るい声で挨拶したミスティ嬢はこの時ようやく私に視界を入れたのでしょう、大きく目を見開いて花開いていた表情が一変、緊張して閉じてしまいました。


「あ、アドリアナ様!?

 ご、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんっ!!」

「構わなくてよミスティ様、遅れたと感じるほど待たされていた訳ではありませんわ。

 王族であらせられるザックス殿下に最初にご挨拶するのは当然なのだから、そう畏まらないでちょうだい」

「あ、ありがとうございます!!」


 …私、ミスティ嬢に警戒されるようなこと、したかしら?


 南部とはそこそこ交易もしているし、何度もパーティーも御呼ばれしていて以前は楽しくお話しができていたと思っていたのだけど…思い違いだったのかしら?


「そ、そのアドリアナ様も陛下に呼ばれていたという事は、もしかして…」

「そうなんだ、聞いてよミスティ!!

 ちちうえ…陛下がミスティの為にアドリアナ嬢が王妃教育を見てくれるんだって!!」


 あの、ザックス殿下…ミスティ嬢が何か言っていたのですが、興奮して会話を遮るのはあまりよろしくないですわよ。


 まあ、教育が始まって間もないという事もあって感情の起伏が年相応という所なのでしょう、教育係が誰なのかは知りませんが、頑張って教育してください。


「はい、陛下からの依頼でミスティ様の王妃教育の監督をさせていただく事となりました。

 月に二、三度ほど見させていただくので、頑張ってザックス殿下の隣にいても恥ずかしくない王妃となってもらえるよう、私も出来る限りの支援をいたしますので、よろしくお願いしますね」

「そ、そうだったのですね…よかったぁ。

 アドリアナ様がザックス殿下の婚約者になるのではないかと、わたし不安で…」


 なるほど、警戒している理由はそれだったのですね。


 見当違いな警戒に脱力しましたが、まぁ可愛らしいものではないですか。


 よほどお二人は相性がいいのでしょう、ほっとしたのか、わたしを除け者にしてキャッキャと楽しんでいます。


「ふふ、ミスティ様、私は次期公爵家の当主となるので、ザックス殿下と婚約を結ぶなんて不可能ですのよ?」

「そ、そうでした、お父様からもアドリアナ様は公爵家を継ぐと聞かされていましたわ…申し訳ありませんアドリアナ様、不愉快な思いをされたのでしたら、お詫び申し上げますわ」

「構わなくてよミスティ様、気にしていませんから。

 それよりも羨ましい限りですわね、お二人の仲がよいようで、この段階でもお二人の将来が想像出来てしまいましたわ」


 別に元婚約者のアーサー様を思い出して、私もザックス殿下みたいな素直で可愛らしい婚約者がいればなぁ、なんて思ってもいません。


 背後からエヴァンスの生暖かい視線が鬱陶しいです、あとで説教ですわね。


 まったく、昔は私が何かする度に面白いくらい反応してくれたのに、今では何を考えているのか分からない笑顔で猫を被っているしで天と地ほどの差がありましてよ。


「ほ、本当ですか!?」

「ええ、ですからミスティ様、これから何度か厳しいことを何度もいうかもしれませんが、それを耐え、乗り越え、ザックス殿下の隣にいても誰からの非難の声の無い、素晴らしい王妃様になってくださいね?」


 ミスティ嬢を育てたアズライト侯爵家の教育方針におかしなものが無い事を祈りながら、私たちは再びこの庭園で会う事を約束しました。


 後日陛下から手紙が届いて、『協力者にザックス、そしてミスティ嬢を伴い北へ向かうように』とあり、心強い協力者が出来たと思うよりも、不安定要素が加わっただけではと思う私でした。


 まぁ、この程度の難局、見事乗り越えて見せなくてはいけませんわね。


 観客(エキストラ)兼協力者が増えたことですし、更なる計画の上方修正をしなければなりませんわ。



読んで頂き、ありがとうございました。

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