第一話 おーっほっほっほ、お父様とお話ですわぁ!!
第2話です。
続きは13日に。
王都郊外にある静かな貴族街、その最奥にロンドベル公爵家の邸宅があった。
他の貴族達の邸宅と違い、公爵家の邸宅は王宮から10人の近衛騎士達が派遣されていて、代々続いているとありその事に対して疑問に思うことは無い。
準王族、建国の英雄の一族とされているロンドベル公爵家をどれだけ信頼しているのか窺い知れるというものである。
そんな中、ロンドベル公爵家の門を通過した馬車があった。
ロンドベル公爵家の紋章を掲げた馬車が、その馬車の中に一族の誰かが入っている事を証明し、門番の近衛騎士達は馬車に敬礼をし見送る。
馬車から降りてきたのは、艶やかな黒髪を腰まで流し、公爵家の紋章入り刺繍のあるドレスを着こなしていた少女だった。
「お嬢様、執事の自分よりも早く降りられるのは…」
後から降りてきた執事服を着た金髪の青年が柔和な表情を苦々しそうにするが、きつい目つきをした少女―――アドリアナはくすりと微笑んだ。
「いいのよエヴァンス。
この程度の無作法、お父様と早く会いたいと思えばこそなのだから。
普段はきちんと守っているのだから、そう一々気にしなくてもいいわ」
「……畏まりました、急ぎ旦那様にお嬢様がお帰りになった事をお伝えしてまいります」
エヴァンスと呼ばれた青年はアドリアナに一礼すると、すぐに邸宅の扉を開き駆けていった。
擦れ違いに扉から現れたのは執事長のピンバッジをつけた総銀髪の初老の男性で、エヴァンスの上司でありロンドベル公爵家の家宰を任されているテイトである。
ロンドベル公爵家の分家出身で、アドリアナも幼い頃から世話になった人物である。
「…お嬢様、お帰りなさいませ。
エヴァンスが先程二階へと走って行きましたが、何か旦那様に緊急の御用が?」
背筋が歳に見合わず伸びている好々爺然としたテイトがアドリアナにニコリと微笑む。
笑顔に人を安心させる効果があるとすれば、それはテイトのような笑顔の事を言うのだろう、アドリアナはそんな事を考えながら邸宅へと入っていく。
「ただいまテイト、ちょっと入学式の時に問題が発生したの。
それで、間違いなく知っているだろうお父様からお話を聞こうと思いっているのだけれど…テイトは何か聞いている?」
「そうですな…わたしめには旦那様より伺ってはおりません。
…それと偶然かもしれないのですが、先日近くの屋敷から他国からのお客様…の、従者の方が挨拶に参られまして、その事が関係しているのかもしれませんな。
ノースエンド、サウスザスター、イストリア、ウェスタンスからという事で、使用人達が不審がっております」
「…最近公爵領へ戻っていたから、そんな事気付かなかったわ。
ありがとうテイト、それで十分だわ」
「もったいなきお言葉、旦那様の部屋へ紅茶を用意して参りますので、一度下がらせていただきます」
アドリアナはテイトを見送ると、自らも足早と父アリストのいる部屋へと歩いていく。
アドリアナは邸宅内の掃除をしている女中や執事に尊敬交じりの挨拶を受けながら歩いている通り、この公爵家に住まう者の中で、アドリアナを嫌う者は誰一人としていない。
過去、弟でありながらそのアドリアナの事を毛嫌いしていた者がいたが、現在では公爵家はおろかエイルネス王国にはいない。
「…お父様、入ってもよろしくて?」
『―――入ってきなさい』
落ち着いた声が聞こえてくる、親愛の篭った、家族に向けるような暖かい声音である。
了承の回答を得られたと、アドリアナは扉のノブを捻り開けた。
「…お帰りリア、思っていたよりも早かったな?
私も今帰ってきた所だ」
上着をエヴァンスに渡した金髪の美壮年がスカーフタイを緩めながらイスに座っている。
彼がこのエイルネス王国宰相にして貴族の中の貴族、ロンドベル公爵家当主、アリスト・ピスタリオ・ロンドベルである。
リア―――アドリアナを親しみをこめてそう呼ぶ姿はただの親バカにしか見えないが、その智謀と交渉術で自国を守り、他国との交渉を有利に運び続けてきた筋金入りの曲者である。
「座りなさい、テイトがもうすぐ紅茶を入れに来るだろうから、それまで『雑談』でもしようか」
勧められるがままにアドリアナはソファーに座ると、対面するようにアリストもソファーの上座に座る。
エヴァンスは上着をクローゼットに片付けると、アドリアナの座っているソファーの背後で控えた。
「久しぶりだなリア、2ヶ月ぶりか。
公爵領に入学式ギリギリまでいるとは、何か領地で問題でもあったのか?
それとも、ミリィに付き纏われて公爵領から出るのに時間がかかったのか?」
矢継ぎ早の質問に不安そうな表情は、公務では絶対に見せない素の彼がどれだけアドリアナの事を愛しているかという証明でもあるのだが、それだけではないということをアドリアナは知っている。
「お久しぶりですわお父様、2ヶ月ぶりです。
はい、問題は既に解決済みで、報告書を既にテイトに渡しています。
おそらくその机の上のどれかにあると思いますので、詳しくは省きますわね。
簡単に言うと隣国の内戦の影響の所為で難民が押し寄せてきていまして、その対処をしていましたの。
それに乗じて間諜も入り込んでいて、その掃除をしたりと面倒でしたわ。
あとの面倒は全部ミリィお母様にお任せしようと思ったのですけど、仕事量が多くてお母様がダダを起こされまして…結局半月前に戻る筈が、強行軍で今日王都に到着して、学園の入学式に参りましたわ」
現在この邸宅にはアリストを筆頭にアドリアナ、エヴァンス、テイト、そして多くの使用人たちがいるが、アドリアナの母ミリアリアは公爵領にいる。
普段から王都には滞在せず、公爵領でアリストやアドリアナの不在を補うため、執務を代わって執り行っているのだ。
決して、夫婦間の冷戦でも別居でもない、2人は貴族の間でも珍しい恋愛結婚をした万年熱々の夫婦である。
公爵領と王都の距離も、遠距離とあって久々に会うと一日中愛を囁き合うほどのオシドリ夫婦振りだ。
夫婦共に優秀とあって、2人が留守の間公爵領を切り盛りしているのだ。
「そうか、やはり内戦を恐れた民たちが流れ込んできたか…面倒な。
ミリィにはこちらから手紙を送っておくとしよう。
…ところでリアよ、どちらかの勢力に秘密裏に味方してあの忌々しい国の国力を削ぐ…という素敵な策があるのだが、実行した場合どれくらい勝算があると思う?」
「内戦が終わった後、それを理由に宣戦布告されるのがオチですわお父様。
よって、その最悪な策は却下いたします」
どちらの陣営に秘密裏に協力したとしても、どちらの派閥も領土拡大主義の第一王子と王弟である。
どちらかが勝利したとしても秘密裏に味方した事を逆手に取り、宣戦布告の理由とする可能性の高さをアドリアナは指摘した。
アリストはアドリアナに指摘された事を嬉しそうに笑っているあたり、冗談の類で終わらせた気でいたが、アドリアナとしては気が気でなかった。
アリストは愛国者である。
しかも、『重度の』という物騒極まりない補足がついてしまうほどだ。
おそらくはこの策もアリストがその気になれば相手の宣戦布告を利用し、周到に用意した軍で『御出迎え』して事を終えてしまうような、えげつない策を用意しているに違いないからだ。
「…ふむ、その様子からしてまた『魔女』からろくでもない未来でも見せられたのか?
まったく、リアを悩ませるとは困った奴だ」
「お父様ったら…【彼女】をそんな悪し様に言わないでくださいな」
アリストはアドリアナの内にいる『モジョ』と呼ばれる人物の事を怪しげな知識と力でアドリアナを悩ませる『悪い魔女』と見ていて、アドリアナも彼女の事をアリストと同じく魔女と見ているが、彼女の場合は助けられた事が多かったため、彼女の事を『善き魔女』と認識していた。
アドリアナが5歳の時、その変調を即座に察したアリストは事情を聞きだし、モジョとの関係を知った。
それ以来アリストは【彼女】の事を毛嫌いしていて、愛娘の言葉と言えど曲げるつもりはないらしい。
「…お父様、本日の入学式の終わりに面倒な方々と遭遇してしまいまして、その事についてお聞きしたい事がありますの、なるべく誠実な対応を願いますね?」
「ふむ、あの4人の王子たちのことだな?
無論だとも、あの4人の婿入りの申し込みを条件付きで受け入れたのは私だからな」
極自然に、アリストは頷いた。
理由を尋ねると、周辺国の世情に不審なものが見られるとの事で、それ以上アリストは何も答えようとはしなかった。
それ以上は知る必要がないとアドリアナは受け取ったが、情報が欲しかったアドリアナは視点を変え、どう対処すればいいかを尋ねた。
自国の扱いはどうあれ、他国の王族となればそれ相応の対応が必要となるだろう。
「……理由さえあれば、お断りしてもいいのですよね?」
「もちろんだとも、元よりあの4人にはリアの婿になど役者不足だ。
野心家でリアの事を道具にしか思っていないクズなど不要の極みだからな。
徹底的に潰してやるといい、機会を与えられてもどうせ満足に活かし切れずに墜落する連中だ。
公爵家の力を使ってでもいい、女だからと下に見ているゴミクズを一掃しなさい」
口を開くたびに過激になっていくアリストの言葉にアドリアナは了承したのか『わかりましたわ』と短く答え、内心ため息をつくのだった。
その後、紅茶を用意してやってきたテイトの登場で話題は切り替わり、現在の王都の状況を根掘り葉掘り聞くアドリアナとそれに答えるアリストの姿をエヴァンスとテイトの執事2人は黙って見守っていた。
年頃の娘とその父親の会話となれば私的なものが多くを占める筈なのだが、2人にはそんな気配が露ほどもない。
お互いの状況を報告し合い、現在の王都の状況、公爵領での状況、今後の法案や公爵領での新たな試み、等々を話していき、満足してアドリアナはエヴァンスと共に退室していったのだった。
「……本当に旦那様とお嬢様はよく似ていますな」
「そう褒めるなテイトよ、書類を書き損じてしまうではないか」
テイトのぼやきともつかぬ言葉にアリストはくくっと笑いながらも出て行ったアドリアナとエヴァンスのことを考えていた。
アドリアナは親の欲目からしても常軌を逸した才を持つ人間だ。
それは『モジョ』等という怪しげな者の記憶を持っていても、それを以ってして上回るほどだ。
アドリアナを公爵家の代行として以来、公爵領は目覚しい発展を遂げている。
アリストの目から見ても、それは異常とも言える速度であり、第二の王都と呼ばれる公都の方が王都よりも発展しているのではと思えるほどだ。
そして、それを支える執事エヴァンス、彼もアドリアナ程ではないが卓越した処理能力を持つ人材だ。
執事の領分を超えた執務もしているが、その能力を疑う者は公爵家の文官たちの中では誰1人としていない。
それでいて執事としての本分を忘れず、アドリアナに付き従う姿は職務に忠実、とだけでは言い表せないだろう。
エヴァンスの内心を知るアリストから見ても、涙ぐましい努力の結果、アドリアナの側にいられるだけの実力に至ったエヴァンスの事を認めていた。
その努力に報いたいという気持ちもあるが、今のままではまだ不十分なのだろう。
「…これを機に、何か決定的な功があれば、私としても後押ししてやれるのだが…予想通りに事が進めがいいのだがな」
不敵な笑みを浮かべるアリストに、テイトはエヴァンスに同情した。
気に入った者をどこまでも追い詰め、鍛えるというアリストの教育方針の被害者―――筆頭は愛娘のアドリアナ―――であるエヴァンスは、アドリアナの部屋で悪寒を感じ、珍しく失態を犯すという事態となったのだった。
■ ● ■ ● ■ ● ■ ● ■
お父様との楽しい会話を終え、自室に戻った私はエヴァンスと今後の対応を考えた。
「という訳でエヴァンス、作戦会議よ」
「はいお嬢様、旦那様から許可も下りましたし、あの4人をどう始末するか知恵を絞らせていただきます」
物騒な発言が飛び出ているエヴァンスのやる気は大変結構なのだけど、それは最後の手段よ。
結論ありきなのも悪くはないけど、まずは計画を立てないと。
「…その通りですね、失礼いたしました。
では、まずは情報収集から、隠密…オニワーヴァンを呼びましょうか?」
「そうね、私も【彼女】から得た情報の確認もしたいし、呼んでちょうだい」
エヴァンスが部屋においている特殊なベルを振る。
しかし、そのベルからは音は聞こえてこない。
けど、彼らは違う。
彼らはこの特殊なベルが聞こえる特殊な聴力を得ているから。
『オニワーヴァン』とは、私が【彼女】から得た知識から新たに発足した隠密たちの事ですの。
何でも私たちの国にいる隠密と同等かそれ以上の能力を持っていて、『ニンポ』という不思議な術を操る人たちの事をいうらしいの。
公爵家で雇っているオニワーヴァンの中には何人か【彼女】の見た記憶に近い力をも持っている者もいるし、お父様に相談したら渋い顔をしていたけど聞き入れてくれたわ。
実際領分としては別段変わらないし、名前が変わるから問題はないわ、彼らには不思議そうな表情をされたけど。
公爵家には結構な数のオニワーヴァンがいて、代々仕えてくれているからとても重宝している。
以前ノースエンドが南下した際、何とか撃退できたのは彼らが裏で暗躍してくれたお陰だとお父様は仰っていたわ。
『情報を制する者は世界を制する』、【彼女】の知識には感銘を受けるものが多いけど、この言葉は特にそうね、感動ものよ。
私の狙いは4人の本国にある。
私たちのいる国に対して何を狙っているのかは心当たりが多過ぎて分からないけど、いつ行動するか見抜ければ対処もまた早く出来る筈よ。
何としても、彼らを出し抜いて、徹底的に潰して、私たちの国を薄汚い手を伸ばさない様にしないといけないわ。
『…お呼びでござるか、お嬢様?』
天井裏から声が聞こえてくる、オニワーヴァンの中でも選りすぐりの人材が私の元には派遣されてくるから、察するに【ジョウニン】の1人でしょう。
オニワーヴァンたちには4つの階級があって、最上位が【ヒットウ】、上位が【ジョウニン】、中位が【チュウニン】、下位が【ゲニン】となっています。
【ヒットウ】の彼は今他国に派遣しているから会えないけど、国外の情報を得るなら最低でも【チュウニン】以上の者たちで構成してもらいたいわね。
ああそうそう、『ござる』とうのは知識で見た彼らの口調にあったからやってもらっているの、特に意味はないわ。
「降りてきてちょうだい、直接指令を与えるから」
「ははっ、失礼いたします」
天井の一角を開け、音もなく降りてきた身のこなしはまるで猫のよう、そう、まるで黒猫ね。
黒装束で目元だけ開いた彼は【ジョウニン】のミハヤと名乗った。
公都から連れてきたオニワーヴァンの1人で、現在は私の手駒として動いてもらっています。
「貴方に来てもらったのは他でもないわ、急ぎで調べて欲しい事があるの」
「何なりとご用命を、お嬢様。
我らオニワーヴァン、その公爵家並びにお嬢様の御為に、死力を尽くす所存…でござる」
…ミハヤはあんまり慣れていないみたいね、別に強制しているわけじゃないから、やめてもらってもいいのだけど、言い出した手前撤回しにくいのよね。
「北のノースエンド、南のサウスザスター、東のイストリア、そして西のウェスタンス。
この国の情報を先に言った順番通りの優先順位で調べてきなさい。
そうね、特にノースエンドは3ヶ月以内が望ましいわ、少しくらい足は出てもいいから、逐一情報を送ってきて」
「どのような情報を所望されているのでござるか?」
ミハヤは私にそう尋ねてきた、確かに命令が広過ぎたわね、正確に言い直しましょうか。
「そうね…政治、経済、民草、そして傭兵ギルドの情報が欲しいわ。
傭兵ギルドからは大手の傭兵団の動きを調べて欲しいの。
特に…『二つ名持ち』の影を感じたら、何としても情報を持って帰ってきなさい」
傭兵ギルドの中でも【二つ名】という称号持ちの傭兵団は通常の傭兵団とは一線を隠した存在です。
戦場における死神…とでも言えばいいのでしょうか。
超一流の戦闘集団である彼らは、文字通り戦の気配…血の臭いに敏感です。
それが何を意味するのかミハヤにも理解できたのでしょう、目つきを鋭くして、指令の重大さに声を硬くした。
「委細承知いたしました、お嬢様。
このミハヤ、一命を賭してでもその指令全うしてみせまする」
「賭して貰っては困るわミハヤ、他の何を犠牲にしても、貴方だけは帰って情報を持ってきなさい。
これは公爵家の…このエイルネス王国の未来が掛かっているのだから」
「ははっ!!」
ミハヤは威勢よく応えると、天井裏にまで飛び上がり、蓋をきっちりと閉じて出て行った。
「…お嬢様、情報収集はミハヤ殿に任せるとして、明日からはどういった方針で行動されますか?
優先順位からして、ノースエンドのカインズが標的のようですが」
エヴァンスの切り替えの速さはさすがね、敵であるけどカインズ王子も敬称無しな所が減点だけど。
「今最もこの国で情勢が不安定な地は北よ。
辺境伯のドルンズ様も執務に励んでいるようだけど…」
「8年前の侵略戦争の爪痕ですか…何度かお嬢様とご一緒して領地を見させていただきましたが…北の爪痕は深いですね」
8年前のノースエンドからの侵略戦争によって、北部全域が戦火に包まれました。
東と西を守護する役目を陛下から仰せ付かっているお父様とベルグラム辺境伯が領邦軍を派遣され、南のアズライト候が物資を輸送したことで戦線を後押ししてノースエンド王国軍を撃退し、勝利する事となったのです。
しかし、ノースエンド王国の電撃的な南下作戦は北部に深い爪痕を残していました。
それが現在に至るまで癒えず、ノースエンドからの賠償金で復興費用を賄い切れない程となっていたのは戦争というのがどれだけ凄惨なものか、想像を絶する所がありますわね。
ですが、宰相としてお父様が北部全域の支援を陛下に取り次いで現在は私が出資している商会も協力して、ようやく軌道に乗ろうとしているところなのです。
ドルンズ伯とも良い関係を築いていますし、将来の事を思えばここは公爵家の為にも、王国の為にも引く訳には参りませんわ。
道筋を全面的に信用出来るのは彼ら個人の過去や性格まで。
『ファン&ラブ(ファンタジー&ラヴァー)season2』には物語終盤まで目立った大きな事件はありません、なのでギリギリまで国を守るための策を練れるというもの。
現在の目的を知る為にも、まずは慎重に行動しましょう。
「…待っているといいですわカインズ様。
この私が、アドリアナ・ピスタリオ・ロンドベルが、その浅ましくみすぼらしい計画をズタズタに引き裂いて、徹底的に縁をへし折って差し上げますわぁっ!!
おーっほっほっほ!!」
「…お嬢様、お声が大きいかと。
外の者に聞こえますよ?」
エヴァンスのため息交じりの注意が入るけど、外敵を…いえ、害虫を倒すと宣言をした以上、か細い声でする訳に参りませんもの、聞きませんわ。
その後、公爵領から持ってきていた仕事を片付け、お父様と久々に食事をしました。
明日からの学園生活に向けて、私は意気揚々とベッドについた。
……それにしても、何か忘れているような?
私が何を忘れているのか寝ぼけ始めていた頭では良く回らず思い出したのは朝の事でした。
読んで頂き、ありがとうございました。