表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おーっほっほっほ、フラグをへし折りますわぁっ!!  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第二章 おーっほっほっほ、2人目ですわぁっ!!
17/18

第十六話 おーっほっほっほ、武装メイドゲットですわぁっ‼︎

予定は未定、詰まりいつでも投稿可なのです!!

では、どうぞ!!

 

 アドリアナはミランダ・コァザート・マシュー―――アキ・スギノキの話を聞いて一言、呟いていた。


「………なんか、思ってたのと違いますわ」

「お嬢様、本音が漏れています」


 マシュー男爵の名をアドリアナは知っていた。


 ロンドベル公爵家が統括をしているエイルネス王国東部―――イーベンリック州の東端に小領地を持つ男爵家。


 そして、マシュー男爵はイーベンリック州が誇る『十三騎士』と呼ばれている最高戦力、その第三位の実力を持つ騎士でもある。


 純粋な剣術のみでいえば、エイルネス王国でも五本の指に入る剣士を師に持つ目の前の少女は既にその実力は師を超えているという。


 確かに容姿は整っているが、それだけだ。


 容姿に頓着していないのか、髪の毛は肩口でばっさりと切って枝毛があちらこちらに出来てしまっている。


 服装も、傭兵ギルドに所属しているとあってか軽装の皮鎧と最低限清潔に見えなくもないシャツとズボンという女性らしさの欠けたものだ。


 これで男爵家令嬢というのだから、彼女の父は子育てに完全に失敗しているといえよう。


 いくら騎士爵から陞爵した男爵とはいえ、貴族令嬢としての教育を怠ったのはいかがなものかと思ったアドリアナであった。


 これではアドリアナの探していた『儚げな笑顔の似合う、まるで白百合の様な少女』など見つかる筈もない。


 ―――そもそも、何を以ってアドリアナがミランダを『件の少女』と断定したのか、エヴァンスにはそこが謎だった。


「……エヴァンス、こちらの被害は?」

「…オニワーヴァンの中忍が二十名近く重軽傷、更に上忍のミハヤ殿のが手傷を負っています」

『……軽い手傷を負った程度、任務に支障はないでござる』


 足元で『あーあのすっごい面倒なニンジャだー』と気の抜けた声を出しているミランダは無視した。


「特化型の準達人、達人級が夜に襲いかかってくるとかスッゴイ燃えたんですけど、結局こうしてグルグル巻きにされたんで負けですねー、ニンジャマジ怖い」

「…最悪の被害ね、王都での活動に確実に支障が及んでしまうじゃない」


 思った以上の被害、そしてミランダの令嬢らしからぬ発言にアドリアナは思わず二重に頭を抱えた。


 オニワーヴァンが二十人以上欠員が出る、それは情報を先取りして様々な交渉に役立てる優位性に遅れをとってしまいかねない事態だった。


 その被害を出した張本人はのほほんとゴロゴロと床を転がり始めていて、思わず蹴り飛ばしてしまいたい衝動に駆られたアドリアナは、一瞬でもそのような衝動に駆られたことを恥じた。


 自分は目の前の野生児とは違う、そう一人頷くと考えを巡らしエヴァンスに指示を出す。


「―――中忍は全員里に戻します、欠員は公都から非常用プランBの発令を。

 ミハヤは王都(ここ)で静養させて、回復次第復帰してもらうわ。

 ………今日の担当は…ミハヤね。

 …そのままでいいわ、聞きなさい」

『はい、お嬢様』


 天井裏で控えているミハヤはしんとした声でアドリアナの命を待つ。


「非常用プランBを発令するわ、伝令用のオニワーヴァンを公都へ走らせなさい。

 それまで王都での活動は一時中断、商売筋からの情報で持たせるから、2週間で王都へ交代要員を寄越す様にお母様に伝えるように。

 以上よ」

『御用命、承りました』


 短く応えると、ミハヤはその場から去っていく。


 そして、アドリアナは足元に転がっている野生児(ミランダ)に目を向けた。


「……ねぇミランダ嬢、取引をしないかしら?」

「命綱そっちが持ってるのに取引を持ちかけてくれるなんて、やっぱ変な人ですねアドリアナさんは。

 やっぱ転生者(・・・)って私も含めてどっかおかしい人です」


 ここでようやく、アドリアナはミランダがアドリアナのことを『転生者』と見ていた事に気付いた。


「……ミランダ嬢、私は転生者じゃありませんわよ?」

「え、でもアドリアナさん異世界の知識でお金儲けしてるジャン?」

「私にはかつて異世界で過ごした人の『記憶』を持っているだけなの。

 あなたの世界風に言うなら…そうね、『外付けハード』っていうのかしら?

 本体である私とは別個の記憶(データ)を私は持っているのよ」


 アドリアナは目の前の首を傾げている少女が胸襟を開いてくれている以上、最低限の礼儀として、オニワーヴァンを排したこの状況下で秘密を明かした。


 ミランダはよくわかっているのか微妙な表情をしていた、どうやら分かっていないようだったので、今度は『記憶を持っているだけの現地人』といってようやく納得したのだった。


 話してみてわかったのだがこのミランダという少女、前世ではまだ学生だということもあり、興味のある事しか知らなかったのだろう、あまりに物を知らなかった。


 加えて深く物事を考えることをしないようで、今生を剣士として生きている彼女は剣の道を極める以外に興味がなくなっているようだった。


 計画に加えるのは難しいかもしれない、とアドリアナはそう思わざるをえなかった。


「へー、じゃあ、アドリアナさんはこの世界が『ファンタジー&ラヴァー』シリーズにすごい似た世界だって知ってるんだ?」

「ええ、『彼女』の知識を知って、私は自分の運命を変えたんですからね」

「あー、だから『隠しキャラ』のエヴァンス君もいたんだ」


 いつの間にか君付けされていたエヴァンスは苦々しい顔をするが、一瞬でその表情を隠した。


「…お嬢様に良くも悪くも影響を与えすぎです『彼女』は」

「んー、隠しキャラだけあってエヴァンス君の『ステータス』は第一作じゃ最高値だったからアドリアナさんはお目が高いね。

 第二作の隠しキャラはヴォルフガング(・・・・・・・)君っていう傭兵家業の人なんだけど、知ってる?」


 ここに来てアドリアナはミランダの言葉が理解出来なかった。


 ―――ステータス、それは社会的地位、身分を表す言葉だったはず。


『エヴァンスのステータスが最高値』という言葉とどう繋がるのか、アドリアナには意味がわからなかった。


 そして、それがヴォルフガング―――アドリアナの配下にいるあのヴォルフガングのことなのだとしたら、余計に意味がわからないとアドリアナは首を傾げてしまった。


「あーそういうことかぁ。

 あのねアドリアナさん、『ステータス』っていうのは私のいた世界じゃいろんな意味があって…確かに社会的地位とか、身分を表すんだけど、他にも…能力値(・・・)っていうのかな?

 その人の能力とか、技能とかを表す事を指したりするんだよ」

「なん…ですって?」

「ちなみにアドリアナさんは公式じゃ『使い方を知っていれば万能』、エヴァンス君は『戦闘特化』だったっけ。

 悪役令嬢っていう役だったアドリアナさんは能力値は全作品中で一番平均値高かったのに第一作で退場っていうすごい不遇キャラだったんだよね。

 エヴァンス君は能力値はアドリアナさんほどじゃないけど平均的に高くって、特に高かったのが腕力と技能、知能…な順だったと思う。

 戦闘特化だね、ヴォルフガング君は公式最強キャラだったと思うよ。

 それから…」

「ま、待ちなさい!!」


 アドリアナはミランダからの情報を整理、そして『彼女』からの情報と照らし合わせて精査を始める。


 そしてわかったことなのだが、『彼女』は思っていた以上にこの『ファンタジー&ラヴァー』シリーズの『公式設定』をよく知らなかったということだった。


 おかげで、それらしき本はあっても『彼女』がそれを読んだ記憶が出てこない以上、情報の照らし合わせは不可能だ。


 ミランダの言葉を鵜呑みにすることは出来ないが、確かめる事は可能だろう。


 新たな情報も知れた以上、彼女にはもっとこの地に『滞在』してもらわなければならなかった。


「…三食オヤツお風呂メイド…執事付き。

 ミランダ嬢、当家に逗留していただけないかしら?

 情報料も支払いましょう、加えてコゼッタ村の支援も今後10年約束します」


 無論、支援金については公爵家からとロンドン商会からのバックアップだ、王国東端の村のどこかを中核に10年後要塞都市にする計画をここでアドリアナはコゼッタ村を中核にすると確約した。


 そして、アドリアナが計画していた『新たな主人公(ミランダ)に面倒事をまるっと押付けてしまおう作戦』は完全に頓挫したのだった。


「……あー、出来れば行儀見習いとしてメイドさんしたいんですけど、ダメです?」


 ミランダは情報料や支援金を受け取ることには頷いてくれたが、『食客』の立場だけは受け入れなかった。


 少し考えて、アドリアナは合点がいったのか、それを受け入れた。


 本来、ミランダは今頃アルドア学園に通っている学園生になっているはずだった立場だが、学園生になり損ねてしまった。


 貴族の子女として、これほどの醜聞はないだろう。


 平民ならば単純に学力不足で説明がつけられてしまうが、貴族の子女が学力不足(・・・・)で試験に落ちたとなれば醜聞でしかない。


 ミランダとしても、実家の父に申し訳が立たないのか、ここでロンドベル公爵家の行儀見習いとして取り立ててもらえば、辛うじて貴族としての面目は立つだろうと、計算したのであろう。


「…まぁ、貴女がそれでいいというのなら、構わないけど……厳しいわよ、ここの仕事は?」

「体力には自信があります!!」

「自慢ではありますが、淑女の自慢とは思えませんね」


 エヴァンスの笑みがどことなく引き攣って見えたのはアドリアナの気のせいではないだろう。


 というより、アドリアナ自身の笑みも引き攣っていたと感じていた。


 エヴァンスは懐から短剣を取り出すと、ミランダをグルグル巻きにしていた糸を切り解いていく。


 ミランダの荷物は仮宿としている宿屋に預けたままなので、一時帰宅を命じたのだった。


 そして数日後―――、


「それではミランダ嬢、挨拶を」

「ミランダ・コァザート・マシューです!!

 奇縁あってロンドベル公爵家で行儀見習いをさせていただくことになりました!!

 得意なことは剣術、鍛錬です!!

 体力には自信があります、力仕事は任せてくだたい!!」

「…一応ですが、アドリアナお嬢様付として彼女には頑張って貰います。

 皆さんもお分かりのように、彼女は…こういう子なので、暖かく指導してあげてください」


 ロンドベル公爵家に、新たな行儀見習いがやってきた。


 後にミランダを題材とした小説『女公爵と行儀見習い』がエイルネス王国で爆発的ヒットするのだが、それはまた別のお話。





?????「話を進めるわよ!!」

?????「進むのですか?」


次回、『第十七話 おーっほっほっほ、ターゲットロックオンですわ‼︎』

予定は…未定‼︎

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ