第十五話 おーっほっほっほ、とある男爵家令嬢の呟きですわぁっ!!
遅くなりましてすいません、作者は急性咽喉頭炎ーーーいわゆる喉風邪でダウンしてました、最終的に点滴打ってようやく落ち着き始めてる次第です。
深く陳謝するとともに、このお話を投稿します。
では、どうぞ。
この日、私杉之木亜貴は交通事故で死んだ…はずだった。
次の瞬間、自分が古臭い映画のセットみたいな場所に居た時は何の冗談かと思ったけど、一年も過ごしていれば、どういう状況下は理解できた、はぁ。
私は、杉之木亜貴は転生していた、マジびっくりだよね。
エイルネス王国の東端、コゼッタ村のミランダ・コァザート・マシューとして生まれ変わっていた。
そして、私は自分の置かれている状況をこの村周辺で知りうる限りの情報を集めに集めた。
結論として、この世界は私が前世でハマっていたゲーム、『ファンタジー&ラヴァー』シリーズの世界にそっくりだということ。
やったーと喜んだと同時に、どうして私が転生する羽目に…と思わずにはいられなかった。
私は特段すごい能力を持った人間じゃない、ちょっとゲームの好きなごくごく平均的な人間のはずだ。
『ファンラヴ』の世界を知っているけど、それでも私の望んだ結果になるとは思えない。
だって、このゲームの舞台設定中世期じゃん、衛生観念未発達、現代日本の女子高生じゃ何やっても悲鳴しか起きないわオワタ。
父ロビンは元騎士の貧乏男爵、領地はこのコゼッタ村と周辺の森という小領地の主だ、執務はいつも午前中に終わってしまうほど仕事がなく、午後からはいつも畑作りに勤しんでいる。
母はいなかった、私が生まれて少し経って亡くなったらしい、おそらく産後の経過が悪かったんじゃないかと思う、会いたかったな二人目のお母さん。
貴族だけど、私の家には執事が一人しかいない。
父の元部下で執事服が全く似合わないロジャーという、前世の私の知っている執事とは思えないほどに豪快で温かみのある人だ、そしてたまに酒臭い。
執事としては三流でも、剣士としてのロジャーはすごく強いんだと父は言ってた、ホントかどうかは素人な私には分からない。
生活は厳しく父も質素倹約を主とした人柄なのだけど、暦を聞いた私は何としてもこの世界で生きる為、五歳の時、私は父に剣を習い始めた。
一人娘の私が剣を習い始める事を最初父は渋っていたけど、自警団との訓練の休憩中だけ、という条件付きで何とか許可を貰ってから、私は最初の一年を素振りと走り込みに全てを費やした。
それが最善と知っていたから。
それからは父に弓術、槍術も習い始め、次第に自警団との訓練にも正式に参加出来るようになった十歳の頃、父もさすがにおかしいと思ったのか、私に聞いてきた。
―――どうして、そんなに生き急いでいるのだミランダ?
嘘をつきたくなかった私は、父に死にたくないからと答えた。
将来起きるだろう大戦を乗り切るために、私は二度目の死を床の間…じゃなくて、ベッドの上で迎えたい。
その為にも、この平和だけど前世以上に厳しい世界を生き延びたい。
その思いを父に伝えた。
父には私が転生者であることを包み隠さず伝えた、父の性格から私の言葉が嘘じゃないこと、近い将来起きるだろう事件を覚えている限り順番に語っていく。
このことは私と父の秘密になった、ロジャーにも教えてはいけない、大事な秘密。
それから私は父と一緒に領地改革を始めたけど、実際にやったことは少ない。
というか、私のやろうとしたことは、『ある人物』が既に始めていたからだ。
エイルネス王国の東の統括者、ロンドベル公爵家当主アリスト・ピスタリオ・ロンドベル。
その娘が新たに創設した『ロンドン商会』が立ち上げた事業が破竹の勢いで数多の商会を吸収合併時々潰したりとかなりやらかしているのを見て思った。
アドリアナ・ピスタリオ・ロンドベルも『転生者』だと。
そうなれば、私の知っている未来は違ってくる。
彼女に待っているのは全てがバッドエンド、これを座して無視するとは思えない。
領地改革は失敗したけど、損という損もしていなかったのでやはり堅実に行く事にした私は勉強そこそこ、そして訓練をしていた。
うん、『ステータス』から見てやっぱり私は武力特化みたい、と思った私はやれる事はやりきったんだと思う。
大凡一人で生きていくのに十分な知識と経験、そして武力を持った私は立派な男爵令嬢に…なれなかった。
私は立派な戦士になっていた、十三歳の頃には父とロジャーを二人相手取って完勝するくらい強くなっていた。
どうしてこうなった?
いや理由は分かっている私だよ、身体を動かすのは好きだったんだけど、ここまでになるとは思わなかったなぁ。
正直人殺しも経験して『あ、こんなもんか』程度には頭ぶっ飛んでいる辺り、色々と脳筋肉な私だった。
まぁ、学園の中等部入試にギリギリ間に合ったことだし、良しとしようと皆から見送られて王都を目指した私は思わぬ現実を突きつけられてしまった。
入試の問題がメッチャムズカッタイヤナニコレ事案発生。
何この微分積分とかベクトルとか解析理論とか父の通っていた頃の教科書にこんなのなかった。
これ高等数学ジャン舞台中世で数学がここまで発展してる訳ないジャン原因は犯人はアドリアナだ!!
―――結果、
「―――試験に落ちるなんて、運営間違ってるでしょうっ!?」
という情けない声を出してしまった私は、父に呆れられた。
『シーズン2』の時期と重なっているから、ちょっぴり逆ハーとか狙ってみようかなーという私の邪念を神様がキャッチしたのだろうかと思う私なのだった。
んー一芸入試みたいなのあれば得意の剣戟で出来そうなんだけど…残念無念。
罰として領地には一人で帰って来いと一本の剣と最低限の金銭を渡され、仕方なく『傭兵ギルド』へ加入して金銭を稼ぎながら日々を生活していた私は怪しい黒服たちに不思議な技で拘束されて、何故かロンドベル公爵家の別宅へと連れて来られたのでした。
「………なんか、思ってたのと違いますわ」
私の話を聞いて、どんどんアドリアナさんの私を見る目が残念な者を見るような目で見て来るから、私は早くこの不思議な糸でグルグル芋虫にされた状態を何とかしてほしいと懇願するような目で見つめるのでした。
?????「なんだか、残念な娘ね」
?????「お嬢様とはまた違った意味で残念な方ですね」
次回、『第十六話 おーっほっほっほ、武装メイドゲットですわ‼︎』
予定は…未定‼︎
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。