パキパキッ
パキパキッ
足を踏み出し、地につく度に、破片が砕け散る。
辺り一面、ビルなどの残骸とおぼしきコンクリート片が、散らばっていた。
パキッ
そんな環境の中、女は何かを探すように、時折あたりを見渡し、視線と長い髪を揺らしながら歩いていた。
転んだり躓いたりといったことは一度もない。
バキッ
時々、誤って木片を踏んだときだけはたたらを踏むが、それ以外は、歩調を変えずにただただ歩いていた。
パキッ──……ン
数日間、コンクリート片しかないこの広い場所で、女は歩き続けていた。
昼も夜も、飲まず食わず、寝ることもせずに。
ガララッ
その女が、歩みを止めた。
そして、足下の瓦礫を素手で、傷が付くことも厭わずにずらし始めた。
カラッ
ひたすらに、何かを探すよう、破片一つ一つを目を凝らして観察しながら。
ゴルッ
「あっ」
女は久しぶりに声を出した。
とても、うれしそうだった。
腕に巻き付けて陽に翳したそれは、土埃のヴェールを被りながら、輝いていた。
カタンッ
持ち上げていた腕が落ちると、巻き付けていたそれが緩くほどけて破片にあたった。
ガランッ
女はそれを護るように、その上に被さった。
パララっ
女が掘り起こした、かなりの高さの谷へ、周りの瓦礫が流れ込む。
パキパキッ
大きな瓦礫も支えを失い、蓋をするように、その上に被さる。
しばらく続いていた瓦礫の崩壊は、止んだ。
その後に残るものは、女が現れる前と同じ。
強い日差しと弱い風、瓦礫の海だけだった。
仮想国家イズルヒ、この地はかつて、豊かな自然と近代的な高層建築たち、そしてヒトが溢れていた。
この国は増え続ける国民を養うために、長い平和を捨て、戦争をした。
結果は惨敗。
国土の7割は焦土と化し、残った3割もみる影はなく。
短期間のうちに、人口は1割以下にまで減った。
かつて世界の最先端を駆けていた技術も豊かな自然も、忘却の彼方へと投棄された。
比較的被害の少なかった都市の、破壊されつくしたビル群だった場所に、彼女は今、眠る。
…………的な?
後から付け加えた設定です。
読者の貴殿が考えた設定が、きっと最も正しいものです。