駐車場4 #『鍵』
駐車場4 #『鍵』
そろそろおっかない紛い者の戦いが終わっただろう、とタイミングを見計らって、春川は自動車の陰から這い出して、法華津をしとめた西川に近づく。
「こいつ『塵芥』に引き渡す手筈になってるんだ。ったく、内田さんが直々に説教だとさ……つか、俺どうしよ。肋骨折れてそう」
「救急車でも呼ぶか?」
先輩殿が、おそろしく意地の悪い笑みを浮かべる。
「やめてくれ」
「ああ。手伝い業者のヤツらに頼もう」
手伝い業者、というのは、『塵芥』や『鍵』といったグループの補助をする為の団体である。例えば、トワイライトホテルの一件で、法華津穂高をライトバンで輸送、及び運動エネルギーを吸収させたのも、彼ら手伝い業者である。
「しっかし、裏切った相手でも、見殺しにはできないなんて、甘いよ、こいつは」
西川は、まるで後輩を心配するような視線を、年上の少年に向けていた。
春川は、冷静に後のことを考える。一度敗北を知った法華津は、もう裏切ろうとは思わないだろう。そうなれば、北池にぶつける事ができるかもしれない。
「でも、人質のハッタリで、北池にぶつけることもできたんじゃね? 北池倒せば開放するぜ、とか言ってさ」
「バレたら面倒そうだろ。個人的な恨みとか買いそうで」
まぁ、それもそうか。春川は納得した。
「さってと。俺は先に行くぜ」
言って、西川が背を向ける。法華津の引渡しは俺一人でやれってか? 疑問に思いながら、春川は質問する。
「どこにだよ?」
決まってんだろ、と西川は吐き捨てる。
「折笠のトコさ」
「折笠さん、どこにいるんだよ」
俺知らねぇぞ、と春川は言うが、
「たぶん、竹内の所だろう。ま、場所を特定する方法はあるさ。なぁ春川。お前、どうやって法華津の位置を特定した?」
ああ、なるほど。春川が納得するのと、西川が電話を掛けるのは同時だった。
「あ? もしもし? 内田さんすか? 明智さんいます?」




