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沖ノ浜の紛い者  作者: 指猿キササゲ
$1$ 本章
19/42

『烏』のアジト3 #『鍵』


    『烏』のアジト3 #『鍵』


 折笠崖梨は、とある場所に向かっていた。

 それは『烏』に貸し与えられているアジトだった。

 おそらく何もないだろうが、『なにもない』ということを知っておくことも重要だ。白黒つけておいて、損は無い。

 鍵を開けて、土足のまま部屋に侵入する。洋式のマンションではないが、足元に罠があるとも限らないので、靴は履いたままだ。

 部屋はもぬけの殻だった。人もいなければ情報機器もない。テレビやテーブルはあるが、こんなものは、手がかりにならない。

 テーブルの上に紙片を見つけた。どうやら地図のようだった。赤い丸がついているのは、どうやら沖ノ浜の港にある、輸入した食品などを置いておくのに利用される、冷凍保存庫集合区画の一つのようだった。

 罠だ。こんなあからさまなのは、直感以前の問題で察せる。

 ――『いや、この女は本当にここに来る。ちょうどいい。ここで殺してしまえるな』

 まるでもう一人の人間が、自分の中にいるようだった。声は鼓膜を震わせず、直接、折笠の頭に語りかける。

 ――馬鹿な。できたとして、『上』にどう説明する?

 ――『連れて来られて、突然襲われたとでも言えばいい。あとは正当防衛と緊急避難だ』

 思考には、自身の意識とは別の返答があった。

 無意識の囁きと意識の否定。二つを天秤に掛け――折笠の思考が、無へと変貌する。

 視界だけが、ゆっくりと映像を映し出す。自分自身が紙を手に取り、『烏』のアジトを後にしていく光景を、ただぼんやりと眺めていた。


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