「なんで俺のメアド知ってんの!!?」
楽しんで書きました。暇つぶし程度に見ていただけたら幸いです。
どの世界にも、勇者という者はいる。
魔王だっている。きっと世界によって違いはあってもベースとなっているのはこの2人なのではないか。
言わずもがな、この話もきっと勇者と魔王はいるんだろう。
だって、俺が魔王だもん。
……一応だけどね。
「ふあーあ」
うん。今日も平和だ。いや、魔王が平和とか言っちゃ駄目なんだけどさ…
「ちょっと魔王。欠伸してるヒマあるなら仕事して下さいよ」
「えー」
部下に生ゴミを見るような顔されてしまった。
…一応俺上司なんだけどな。
大きく伸びをして、気が乗らないままパソコンを開く。
なんかよくある魔王の
世界征服してやるぜヒャッハァァァ!!!
とか、
この世を悪で染めるのだヒャッハァァァ!!!
みたいな感じはいっさいなく…。
「ねぇベルゼブブ。ひたすら机に向かって事務作業してる魔王とか新しくね?」
「ハイハイそうですねというかアンタひたすら机に向かって事務作業とかしてないじゃないですか死ね」
「ちょっ死ねは無いでs「死ぬがよい」
むぐぐぐかなりツッコミが辛辣。豆腐メンタルな俺としては挫けそう。
ああ、そうだよ。俺はへたれさ。だからなんだ。俺がへたれでも誰も困らないし。え?「魔王なのに」って…?
魔王=格好いいって誰が決めたの?いいじゃんへたれでも。知るかよ…もう…。
「あれ、メール来てる」
気を取り直してパソコン画面に目を向けると一通のメールが。
「おや、友達一人としていない王にしては珍しい」
「うるせー!」
部下たちの歪みない突き刺さるツッコミを流しメールを見る。
俺は固まった。
「?どうしました?なにか問題でも…」
「…………」
「あの、王?」
「………どどどどど」
どもりまくって何かが突撃してくる擬音みたいな言葉しか出てなかった。
前言撤回。平和なんてものじゃない。
「どどどどーしよう!!!?なんか勇者って奴からメール来た!」
「「「はああぁっ!!?」」」
まさかの事態(本当)にツッコミどころありすぎるし急展開すぎるしで部下たちはパニック状態。
唯一、冷静沈着なアスタロトが内容は何かと聞いてきた。
「ほら、早く見てください」
「う、うん…えーっと……」
To 勇者(゜ω゜)
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やっほー魔王さん!勇者でーす丶(・ω・)ノ
突然だけど、君のことぶっ飛ばしにいくね☆
そうだなぁ…今から行くから3日くらいかかるかも。
なんて言うんだっけ。ほら、「首の裏よく洗って待ってろ」だっけ。
ま、そんな感じ!
じゃあ、また後でね(`・ω・´)
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From勇者(´ω`)
「「「ぎゃあああ!!!!」」」
もう勇者のキャラよりも内容が分かりやすすぎて泣きそう。
何気に顔文字が多すぎてムカつくんだが。いや、顔文字はどうでもいい。
「なんで俺のメアド知ってんの!!?」
「そこかよっ!?ほら、魔王それは…」
「怖っちょう怖っ請求メール送ってきたのコイツだ!地味にめっちゃ焦ったんだよアレ!」
「魔王勇者に超地味な嫌がらせされてたよ!!」
うわあああどうしようまじヤバい。勇者が来るからってこんな焦る魔王もそういないんじゃないか?
「直ちに迎え撃つ準備を!「まっ待って!!」
「どうしました時々刻々と時は迫っているというのに!」
「…ほら、俺ら悪さしてないじゃん?勇者とかも来るはずないって思ってさ…武器とか売っちゃったんだけど」
「「何故!!!?」」
「売る必要あったんですか!?」
「あ、あの…冬コミ参戦しちゃってenjoyしちゃったからお金なくて……」
どうしよう。俺が馬鹿だった。うん。冬コミ超楽しかった。
「大丈夫ですよっ僕たちには呪文があります!」
呪文だと?そんなもの使えたのかこいつら。
俺使えないのに。
はたと気づく。
「…やべぇ俺無能だ…!!」
「今気づいたか。どうしましょうか私たちは自分の身はなんとか守れますが王」
「やべぇ俺自分を守る術がねぇ…!!つか自分の身よりも俺優先で守れよ!」
勇者がもたらした平和の終わり。
本気で焦る魔王とその部下。
その魔王は無能である。
勇者が来るまであと3日。