第七話 場所
人志は必死に考え込んでいた。
授業どころでは無かった。
今日の放課後...自分と遊べと花乃子から誘ってきたからである。
ふざけるな...誰がお前と遊ぶか、と人志は正直言ってやりたかったのだが、何故か花乃子を真っ直ぐ見てそうは言えなくなっていた。
「どうするかな...」
逃げ出す気にもなれなかった。
「待ってたよ人志君」
やはり門のところに彼女はいた。
しかしその周りには、数名の女子が...
「なんでこんないるんだ...」
「仕方ないじゃないみんなが付いてきたいって言ったの」
「おかしいだろ...」
つい先日まで使っていた敬語すら忘れ、人志は動揺を隠さない、いや隠せない。
「まあ早く行くわよクズ」
...人志は呆れることしかできなかった。
「っつかよ...」
人志は何故か、みんなで歩いているのに疑問を感じた。
「これからどこ行くってんだ?」
「行き先など知らないよ」
「嘘をつけ嘘を」
実際そんなわけあるはずがない。
それにこの方向は明らかに...
と人志が思ったときには、もう目的地だった。
「駅前だ」
「うわぁ...」
人志はここの前を通ったことは、もちろん何度かあるが、入ったことは一度も無かった。
理由は女がたくさんいるからである。
「なに、うわぁって」
「いや、ここ入ったことないからさ」
「はぁ!?入ったことない!?この街に住んでるのに!?」
「...悪いか」
人志は、花乃子のせいでこれまで来なかった事を少し後悔した。