第六話 強制
今日も人志は眠りにつく。
だが今日に限っては、そう簡単には寝られそうになかった。
「なんでみんな俺を...」
今日起こったことが、あまりにも衝撃的だったからである。
だが人志の通っている高校はほとんど女子高のようなもので、男は人志しかいない。
それは人志もわかっていることだし実際にそれは人志自身が一番わかっていることだろう。
だが、今日に限っては...理解が難しかった。
「なんで俺が選ばれんだ?」
もちろん、あの高校には人志しか男子がいないので、彼氏が欲しい人は他の高校に求めに行くことになる。
だが何故自分?しかも周りで寄ってたかって...
「不思議だな、女って」
人志の悩みは全て花乃子のせいだったのだが、そんなこと人志は知るわけがなかった。
「今日は成功だったのかな」
一方花乃子は、自分で今日を振り返る。
たくさんの女子に弄ばれている人志を眺めていたからだ。
「うーん...だけど惚れそうにはないな」
彼女はまだまだ、納得が行かないようだった。
「そもそもなんで女が好きじゃないの?」
不思議で仕方がなかった。
彼は男が好きなのではないか?と思う程不思議だったが、どうやらそうでもないみたいらしい。
「もっと育成しないと」
彼女は人志の女嫌いを直そうとしていた。
「いい加減にしろよ...」
人志は朝早くから不機嫌だった。
原因は自分の机の周りに群がる女子共のせいである。
「人志君、今日私と遊ぼ?」
「ずるい、遊ぶのは私!!」
「抜けがけしてんじゃないわよ!!」
...ただでさえ昨日眠れなかったのだ。
今日ぐらいゆっくりさせてくれ...と人志は疲れきった心で思う。
「みんな静かにしなさい、人志君だって嫌がってるでしょ」
そこへ花乃子が来た。
「どう人志君、あなたみたいなクズに群がる女達を見て、興奮しない?」
「しませんよ...あなたを見るよりかは、興奮しますがね」
皮肉だった。
「...喧嘩売ってるの?」
「いえいえ、そういうわけではないんでね」
「敬語止めてくれない?異常にムカつくから」
「お前がそういうならやめるけどよ」
人志はもうめんどくさくなったので適当に話を終わらせようとする。
「今日、放課後私と遊びなさい」
「断るどっか行け」
「来ればきっとあなたの世界が変わるわ」
「どこへ連れてく気だ俺は世界が変わるところに行きたいわけじゃない」
「そう......じゃあ、世界が変わらないところへ行きましょう」
「.........は?」
「今日、絶対に逃がさないから、安心してねクズ」
笑顔で言う花乃子を張り倒したくなったのは誰か言わなくてもわかるだろう。