第五話 意思
その日の放課後は人志にとってはまさに地獄という名の地獄だった。
「おいなんだよこいつら...」
門には、総勢10人ぐらいだろうか。女子が人志を待ち伏せている。
「怖いな...なんか睨んでくる奴いるし」
だがしかし無視も出来ないわけで、強引に門を出ようとする。
「待ってください人志さん!!」
誰かが人志を読んでいるが人志はお構いなしに、門から出ようとすると
「待てよ変態」
急にハスキーなボイスが聞こえてきた。なんだ?次は変態呼ばわりか、と人志はそっちに振り返る。
「誰が変態だって?」
「人志...お前のことだ」
「俺は別に、変態じゃないですけど」
「わかっている...わかっているぞ」
「何をわかってるつもりなんですか?」
「男はみんな変態だ!!」
急に大声で叫んだ彼女は、大川恵子。ハスキーなボイスが特徴的である。
「...は?」
「いいだろう...今夜ホテルに行こう、私と夜を共に」
「誰が行きますか!!」
「なんで来ないんだ!!」
恵子はなんとか人志を惚れさせたかったのだが、そうもいかなかったらしい。
「お前は女に興味がないのか?」
「だから言ったでしょ、僕は...」
「じゃあ何故私の誘いを断る?」
もちろん、行きたいというわけでもないし、行くつもりも無い。
だが、何故私の誘いを断るのか、と恵子は疑問を抱いたのだ。
「怪しいからですよ」
「怪しくなかったら来たのか?」
「...いや、行きません」
人志の気持ちはやはり、変わらない。
何故なら...
「僕はそういうのはまだいいかなと思っているだけです」
「ちょっとぐらい早くたっていいじゃないか」
「いや、そういうのは段階を踏むべきだと思うんですよ」
人志にはその段階すらも踏む意思が無いが...
「......意外と真面目なんだな」
「違いますよ。女が苦手なだけです」
「嫌われるぞ?」
「貧弱!貧弱ゥ!」
「......お前は本当にそれでいいのか?」
「ええ、僕はこれでいいです」
人志には、前から思っていることがある。
「僕は女と関係を持つ気はありませんから」