第三話 計画
花乃子はやはり彼のことが腑に落ちなかった。
彼とは、人志のことである。
かつて自分に話しかけられ、オドオドしたことのない男子はいない。
それほど自分は、美少女だと確信していた。
だがしかしそれは勘違いなのか?
と考えを改めてしまうほど、人志の存在は大きかった。
そこで。
花乃子は、信頼できる友人達を呼んだ。
彼女は友人を作るのが得意で、今は入学してから間もないがもう友人はたくさんいた。
「ねえ、どうしたの花乃子」
「そんな焦ってるの初めて見たよ」
「うるさい!これも全てあいつのせいなの...」
あいつとはもちろん、人志のことである。
「あー、あの苦手名人志?あいつって、明らかに女目当てだよな」
「絶対そうだよ。顔は普通だけど、なんか行動が変態っぽいもん」
「......愚かね」
「え?」
「誠に愚か!あなた達!」
「何?何が?」
「あいつは、女に興味がないのよ!」
花乃子が叫んだ、衝撃の事実。
「そんなハズなくない?」
「そうだよ、証拠は?」
「私が話しかけてやったのに、メールアドレスまで教えてあげようとしたのに―― 興味が無いって!それの一点張り!」
「う...うわぁ」
「それは重症っぽいね」
花乃子は普通に可愛い部類に入ると思うし、そもそも女に話しかけられてそんな態度をとる男子はいないとみんなは思う。
「デブ専門なんじゃない?」
「SMじゃないと興奮しないとか」
「......そう、さまざまなケースが考えられるわ、だからあなた達を読んだの」
花乃子は机を強く叩き、
「みんなあいつ...苦手名人志に惚れているフリをして!ハーレムを作って...あいつを...あいつを絶対に私に惚れさせてみせるから!」
その場にいる、10人ほどの女子にそう言い放った。
「それってもっと広めたほうがいいんじゃない?」
「ええ、なるべく大勢でやったほうが効果があると思う、だからみんなよろしく頼むわ!」
花乃子にもプライドというのもがある。
なんとしてでも、彼を惚れさせたいのだ。
なぜなら、花乃子は自分が完璧な女だと、自負しているのだから...