第二話 クラス
「ここが俺のクラスか...」
それぞれ配属されたクラスに入っていく。
そして人志も、自分が入る事が決まっている「1年C組」に入ろうとした。
...だが、無理だった。
「女の匂いが...強すぎる...」
そう、そこの教室には女しかいなかったのだ。
体の匂いか香水の匂いか知らないが、とにかく女の香りがする。
女が苦手な人志にとって、とても過酷な条件だった。
そんなこんなで、入るのに戸惑っていたところ...
「あ、さっきのクズ」
花乃子が、人志を笑顔で見て声を上げる。
「ねえねえクズ、あんたなんでこの学校入ったの?」
「...うるさいですよ」
女に話しかけられるなど、不愉快極まりなかった。
「照れ屋さんなの?」
「そんなわけ無いでしょう」
事実、照れているわけではないのだ。
純粋の、ただ純粋に女が苦手なだけ。
それが特別心配と思ったことは、人志はないのだが。
「まあ、過ごしてみればわかるわ」
「何をですか」
「私の素晴らしさを」
人志には絶対わからないだろう。
「それじゃ、僕はこれで行くんで」
「ちょっと待って!」
「なんですか」
「メールアドレスとか聞かないの?」
「興味が無いので」
「興味が無いって...仕方ない!私が自ら教えてあげる!」
「いらないんで、もう行かせてください」
人志にとっては、心底どうでもいい話だった。
いつから女を苦手になったのか、わからない。
幼稚園の頃からだろうか、恋愛を意識し始めたのは。
一般的に見れば、それは早すぎるのかもしれない。
だが、何故か人志には自然に体に身についているように、その感情がわかった。
小学生の頃は、普通に女子が好きだった。といっても、今は男子が好きなわけではないが。
もちろん初恋の相手も、女子だった。とびきり可愛いと思っていたが、今となっては顔すら忘れている。
だがすべて、どうでもいい話だ。
恋愛が出来なかったら出来なかったで、それでいいとさえ人志は思い始めている。
親は立派は社会人になってくれればそれでいいと言ってくれたし、わざわざ直す必要もない。
だから、女ばかりのこの学校を選んだのは失敗だった。
もちろん人志のいい加減さと、情報の曖昧さが関係していたのだが、それ以上に人志はこんなに女子がうるさいものだとは思っていなかったのだ。
中学の頃は、男達と遊びまくった。
だが、男に恋心は浮かばなかった。
だから同性愛者でもないし、だからといって自分が女だとも思っていない。
自分は男なのだ。普通の。
人志はそう思い、毎日を過ごしていた。