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第十五話 告白

別に女が特別好きだったワケじゃない。

異性が異性のことを好きになるのは当然のことで、だからといって女が好きだったワケではない。

彼女の表情、声、性格。

彼女が、性別など関係なく彼女が好きだったのだ。

別に女が特別好きだったワケじゃない。


別に気持ちを伝えたくなかったワケじゃない。

伝える気で居たのだ、数年前の自分は。

だからそれを否定するということは、昔の自分を否定していることになってしまう。

まだ彼女のことを好きだった自分は、ほんの少しの可能性を夢見ていた。

別に気持ちを伝えたくなかったワケじゃない。


別に悔しかったワケじゃない。

彼女が他の男子と仲良くしているからって、嫉妬しているつもりはなかった。

ただ単に、彼女にとって自分はどうでも良かったとわかっただけだ。

別に悔しかったワケじゃない。


だけど、

もし本当に彼女のことが好きだったのならば、

もし本当に気持ちが伝えたかったのであれば、

もし本当に彼女が自分のことを好きならば…


「…なんだ、疲れてるのかな俺。」

人志はやっと自分を取り戻す。

さっきまで考えていたことは、なんなのだろう。

人志は暗闇の部屋の中で目を開ける。

「もう寝なきゃな。」

本来寝ている時間はとっくに過ぎているはずだ。

今日に限っては何故か寝れなかった。

仕方ない、音楽でも聴くかと携帯に手を伸ばす。

触れた瞬間、ブルッと震えた。

なんだと思い、画面を見ると通知が来ていた。

――――――――――――――――――――――――――

加藤希です。

友達から聞いちゃいましたw

良ければ友達追加よろしくね

――――――――――――――――――――――――――

加藤希からだった。

人志が昔、好きだった女性。

最近の接点といえば、この前途中まで一緒に下校したぐらいだろうか?

何にせよ、とても嬉しかった。

彼女がまだ自分のことを覚えていてくれて、しかも話そうとしてくれている。

返事をしないわけにはいかなかった。

――――――――――――――――――――――――――

追加したよ

よろしくね!

――――――――――――――――――――――――――

とりあえずスタンダードに返す。

変な印象を持たれたくないからだ。

――――――――――――――――――――――――――

よろしくーw

夜遅くにごめんm(_ _)m

この間会ってさ、また話したいなって思っただけだから

――――――――――――――――――――――――――

そんなことを言われて、嬉しくないわけがない。

そして人志は、気づいたのだ。

この感情は、数年前と同じ…

彼女に恋をしていた、あの頃の気持ちと同じだと。

――――――――――――――――――――――――――

嬉しいよ、ありがとう

俺も話したかったからw

――――――――――――――――――――――――――

素直に自分の気持ちを伝える。

彼女の返事が待ち遠しい。

やはりこの感情、気持ちは――

――――――――――――――――――――――――――

うんうん

じゃあ色々いっぱい話そうよ!

例えば、恋の話とか?

――――――――――――――――――――――――――

恋の話…

直球すぎる内容に、人志は少し戸惑う。

彼女としたいのはそういう話じゃなくて、もっと普通の会話だ。

だから丁寧に拒否して、別の話題を問いかける。

素直に話してくれている彼女のことは…

「やっぱり、好きだ。希のことが。」

つい、好きだと送ってしまいそうになったがそれは止めておく。

そういうことは直接言った方がいいからだ。

だから明日の朝、待ち合わせ場所と時間を決めて彼女に思いを伝える覚悟を決めた。

好きだ、と。


「ごめんね人志君、待たせちゃったかな。」

この前と同じ制服姿で登校していた彼女は、やはり自分の好みの女性だ。

「大丈夫だよ、それよりさ…」

「どうしたの?」



「好きです。」



言葉を飾らず、素直に気持ちを伝える。

恥ずかしくて胸がドキドキしている。

目を開けるのが怖くなって、今すぐここから逃げ出したくなる。

だが。


「うん、私も好きだよ。」


帰ってきたのは、心の奥でずっと願っていた言葉。

だけどそれは、友達としてという意味ではないのか…?

という疑問は、彼女の表情を見て打ち砕けた。

とても嬉しそうな、だけど少し恥ずかしそうなその表情は…

「綺麗だ」

「人志くん!?突然何を」

「ああ、ごめん。あまりにも美しすぎて」

「や、やめてよ急に!もう!」

少し怒ってしまったが、そんな彼女も可愛い。

「それよりさ…両思いなんだから、その」

希が顔を、少し下にして隠すように話す。

人志が気持ちを察するのは容易だった。

何故なら、自分も同じ気持ちだから。

「そうだな、しっかり言わないと――俺と、付き合ってください」

希は満面の笑みで、

「うん!」

と返事を告げた。









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