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空と海の掌握者(コンダクター)  作者: 小田崎コウ
第一章
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第六話 仲良く食事のはずなのに

「到着! さぁ、今日はどのコースにしようかしら……」

 御笠大尉は、西欧風のレストランの駐車場に、車を入れていきました。

「ちょっと待ってくださいよ、大尉! あれって……」

 助手席にいた早坂サンがあわてて体を起こしました。

「ん? どうかした? 早坂」

「あの趣味の悪い外車に、見覚えはないんっすか?」

 指をさした先には、銀色に輝く、きれいな車がとまってました。

「はちあわせたか、行動を推測されたのかしらねぇ……」

 御笠大尉は、あわてて駐車場から車を出して抜け出しました。

「あの車……何ナンですカ? ナニか不都合デモ?」

「あれは昼に会った、天城のご自慢の車なんっスよ――」

「たしかに……あんな人がいたら、落ち着いて食事できないです」

 昼間の事を思い出して身震いをしてしまいました。

「一度会っただけで、その感想? まったく仕方ないわねぇ」

 御笠大尉は、ため息をつかせて、うつむいたです。

「天城になびく子がいるのが、自分には理解できないっすよ」

 早坂サンはよっぽど、天城大尉が嫌いなんですネ。

「うーん。順風満帆な時にはよくても、逆境に弱くちゃ、即応の部署は任せられないわね……」

 御笠大尉は、なにかをためらっているようでした。

「じゃあ、計画部か総務部の部長あたりなら、どうっすか?」

「本人はそれを嫌がるかもしれないのが、問題よね」

「あんなやつ、市ヶ谷とか霞ヶ関の相手でもさせればいいんすよ」

「イチガヤが国防省で、霞ヶ関は官公庁ですよネ?」

「家柄はいいから、年寄りの相手は向いてると思うんすけどね」

 そういえば、七光りがどうとか言っていたですネ。

「じゃあ……どういう部署なら、本人がいやがらないと思う?」

「情報分析官なら聞こえもいいし、どうっすかね?」

「一人で部署を任されるより、その方がよっぽどいいわね」

「上に准将とか偉い人もいるから、でかい顔はできないっすよね」

「悪くないわねぇ。その線ですすめてみようかしら……」

「御笠大尉は、ジンジにも意見を言えるんですか?」

 なんだか、そういうカンジに聞こえたんですけど。

「まっさか……。そういうわけじゃないんだけど、ちょっとねぇ」

「天城氏の父親に相談でもされてるっすか?」

「まぁ、天城の伯父さんには、いろいろとお世話になっているし」

「天城大尉のおじさんに、お世話になってるんですカ?」

「えっと……天城大尉の父親は、私の母方の伯父に当たるのよねぇ」

「じゃあ、血がつながっている血族ですカ!」

「見た事あるから親せきだとは思ってたっスけど、伯父さんっすか」

「だから、天城大尉は私の従弟いとこになるの」

 少したってから、大尉の話を理解して、わたしは驚いたです。

「それもあって、国防大学時代に世話を頼まれた事があるのよ」

「だからっすか。当時会ったころから、なんか失礼なヤツだったすから、よく我慢したっすね」

 そういえば早坂サンが、二年後輩だとか言ってましたですね。

「うーん。当時は頭にきて、よっぽど見放してやろかとも思ったんだけど」

「あー……やればできるくせに本気出さないって言ってたすよね」

「いまとなっては……骨の髄までたたき込んでおくべきだったかな……とは思うわね」

 スっと目を細めた御笠大尉はチョット怖いですネ……。

「御笠大尉は有能だったから、頼られたんですネ?」

「まさか……ほかに頼れる人がいないから、おはちが回ったのよ」

「まーたまた……。度を過ぎる謙そんは逆に嫌みっすよ? 大尉!」

「それは、どういう意味になるんですか? 早坂サン!」

「何と言っても、国防大学を首席で卒業してるっすから、そりゃ、すごい事なんっすよ」

「ちょっと……そういう持ち上げ方はやめてって言ってるでしょ」

「えとイチバンってコトですネ? スゴイです!」

「情報部門専攻で首席ってのは、十年来ない希代の天才だとか!」

「んもうっ……そういうコトをいわれると、なんだか背中がかゆくなるのよねぇ」

「新設された戦略幹部候補生学校では、教師役も務めたそうっす」

「センセイしてたですか……頑張ったんですネ」

「もう、なによこの空気。これは新手のいじめなんじゃないの?」

「うーん。それに天城閥の助力があったなら、いまごろ中佐でも、不思議ないっすね」

「そうですネ。早坂サンが、御笠大尉に出世して欲しいと思うのは、理解できるです」

「ちょっとやめてよ……幹部任官してから五年目なんて、まだまだひよっこみたいなものよ?」

「国防大学首席ってのは、将官になるための必須条件なんスから」

「じゃあ、御笠大尉はもっと偉くなれるんですね? これで日本も安心なんですネ?」

「あーあー聞こえなーい。お願いだからプレッシャーかけないで」

「まーたまた。将来の情報本部長だって、当の本人にまで言われてるそうじゃないスか」

「ちょっとそれ、どこ情報? いくらなんでも公言はしないわよ」

「そのあわてようを見るに、本当のコトだったんすね」

「統合情報部長の頭を越すような事は避けたいんだから、そのあたりは配慮してよ」

 お二人は目の前で、高度な情報戦(?)を繰り広げていました。



「えーと、そろそろどこに行くか、決めないといけないんだけど、どっちがいい?」

「ここで聞くって事は、料亭かイタリアンの二択っすね」

「料亭なら下士官はいないけど、イタリアンの方ならいるかもね」

「ぶっちゃけ、ゴチになれるんなら、どちらでもいいっすけど……ここは中尉を優先で」

「リョーテイだと緊張するですから、イタリアンでお願いシマス」

「了解。軍都だと選択枝が少ないけど、外出許可がまだねぇ」

「相模原まで出たらいいお店あるっすから、今度案内するっすよ」

「ハイ……楽しみにしますです」

 落ち着くまでは、外に出られない事を心配してくれてるですね。

「御笠大尉……実際、天城氏の昇進速度って問題になったりしてないんすかね」

「うーん。信賞必罰の実力主義になった国防軍的には、あまり問題じゃないわね……」

「エエッ? あの天城大尉にそんなに実力があるんですか?」

「天城氏が第一で少尉だったころに、大手柄を上げたんっすよね」

「天城の伯父への、義理を返しておきたかったからね」

「という事は、あれって天城大尉がつかんだ情報だったんスか?」

「まぁね。けど、第二で中尉だった私が、第一の職分にまで関与するのは問題でしょ?」

「はっはぁ……。じゃあ天城氏は、大尉のおかげで第一の室長になれたって事なんすか?」

「そうじゃなくても、昇進は時間の問題だったんでしょうけど……名目が整ったわね」

「どうして天城大尉の昇進が時間の問題だったんですカ?」

「御笠大尉の伯父でもある、天城氏の父親が超大物だからっすよ」

「そんなにナナピカってるですカ……もしかして、国会議員サンとかですカ?」

「伯父は国防大臣政務官という、国防省の軍官僚のトップなのよ」

「本人や父親が望まなくっても、影響下にある人が、いくらでも、気をきかすんすよね」

「そうだったんですか……なら、御笠大尉も出世できますよネ?」

「んなっ! お手盛りで昇進だなんて、死んでも勘弁してもらいたいわよう」

「天城氏は御笠大尉みたいに内示をける気概ないっすからね」

「まぁねぇ……本人は本人で、親の期待に添うために、努力してるんだろうけど」

「父親が偉大すぎても、苦労があるって事なんですかねぇ?」

「そうなんですか……ワタシには、そういうのが分からないです」

「んじゃ、天城氏が、国防大学を三席で卒業したってのも、大尉の尽力なんすか?」

「ええ……尻を相当たたいてそれよ。幹部候補生学校では誰かが手を回して首席だったのよ……本人のためにはよくないわ」

「本人が、それを望んでなかったんデシたら、かわいそうですネ」

「大尉を現場から外そうとするのは、天城氏の父親なんすかね?」

「いえ……天城の伯父は、情報の分野で私に彼をサポートして欲しいと思ってるはずよ」

「それはそれで親バカではあるっすけど、わからない事もないっすねぇ……」

「あとは……伯母の実家とかが勝手に動いている可能性は捨てきれないわね」

「え? たしか、国防産業の筆頭の四菱でしたっけ。天城氏って、半端ないっすねぇ……」

「生臭い話はヤメにしましょ。もうすぐ着くと思うけど、すいてるかしらね……」

 時計を確認すると、午後七時になろうとしているところでした。



「久々にゴチになったっス。ウチのビルの中とかに出店しないっすかねぇ?」

「さすがに軍都内にまでは、宅配ピザも配達してくれないのよね」

「本格的なピザで、トッテモおいしかったです」

 食事を終えたわたし達は、上機嫌で駐車場に歩いていきました。

「ピザを食べると、お酒が飲みたくなるのが問題よね」

「なら部屋に戻ってから、二次会って事でいいんじゃないすか?」

「私はいいけど、中尉はお酒を飲めるの?」

「向こうでは、水で割ったワインを飲んだ事が少しだけアルです」

「じゃあワインと念のためジュースも買って行きましょう」

「飲み物と乾き物ぐらいなら、近くのコンビニがいいっすよね?」

 最寄りのコンビニに寄って、三人で朝食をふくめた買い物をしていきました。



「ここっすよ、中尉……ひととおりの物はそろってるっすよねぇ?」

 御笠大尉が飲み会の準備をしている間に、早坂サンに部屋を案内してもらいました。

「ハイ。思ってたより広い部屋ですネ……。冷蔵庫もあったです」

 朝食のサンドイッチと飲み物を冷蔵庫にしまいました。

「本来は独身の高級幹部用っすから、ベッドも広々としてるっスね」

「これならベッドから落ちる心配ないですネ」

「あ、枕のチェックをしておいた方が、いいんじゃないですか?」

「そうですネ。うーんと……これなら、前使っていたのとほとんど同じような感じです」

 わたしはベッドに転がって、枕の高さとかを調べました。

「えーと、目覚まし時計があったら、明日のセットをしておいた方がいいっすよ?」

「あ、持って来てますです。何時ぐらいに起きたらいいですか?」

 カートを開いて、目覚まし時計を取り出しました。

「常勤ですから、八時が課業開始なんんすけど、七時半には着いて、準備しないといけないんス」

「ご飯を食べて用意して……じゃあ、六時三十分にしておくです」

 一時間も見ればじゅうぶんですヨネ?

「自分は二階なんで、なにかあったら、声をかけてくださいっス」

「ハイ! ありがとうゴザイマス」



 御笠・早坂の、ワンポイント・コーナー

御笠:「軍都と作中で呼ばれる国防軍の本拠について説明するわね」

早坂:「作者は現地に足も運ばずに書いたので、メチャクチャっす」

御笠:「座間市・厚木市・横須賀市のあたりは、接収されているの」

早坂:「全九州人だけでなく、神奈川県民まで敵に回すっすか……」


壮絶な、セリフがほとんどのターン。

って、これでついていける人がどれだけ(ry

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