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探しモノ~前編~



冬休みも終わり、憂鬱この上ない日々に慣れ始めた頃。

一通のメールが零奈から届いた。


夕飯の為にスーパーに行って、ちょうど帰ってきた時だ。

つまりは夕方だな。


「お、零奈か。

 どうしてまたこんな時間に・・・」


玄関で思わず独り言をこぼす。


だってつい一時間ほど前までは、一緒の教室にいたのにだ。

このタイミングでのメールは悪い予感しかない。


「どれどれ・・・・」


内容は面倒だから電話してとの事だった。


前の買い物に付き合った時もそうだけどさ。

何で誘われてる側なのにこっちから電話掛けるんだ?


零奈って意外とケチなんだな。。。



と、まぁ多少の不満はある訳だけど、後から五月蝿いからな。


俺は冷蔵庫までエコバッグを運ぶと、そのまま電話を掛けた。



「・・・もしも~し」


『あっ、もしもし?』


普段どおりの口調で零奈が応答した。


「あのな、電話ならそっちから掛けてくれば良いだろ?

 通話だってタダじゃないんだからさ」


『あれ、アンタってそんなケチだった?』


「お前がいうなよっ」


ったく・・・。


『あ、それでね。

 今から知樹の家に行くから。

 じゃねっ・・・(プツッ・・・)』


そのまま電話切るなよっ!!

おいおい、何だよ急に・・・・。


俺はこれから飯の準備を――――。


『ガチャンッ!』


ん?玄関から何やら音が。



「知樹~、勝手に上がるわよ~」


「って、早ぇよっ!!

 俺がどう返事しても来るつもりだったろっ」


俺は玄関から聞こえてきた声の主に届くように大声でツッコむ。


「当然でしょっ。

 私なんだから、断るわけ無いもん」


するとその声の主はリビングに入ってくるなり、自信満々にそう答える。


「まぁ、零奈なら仕方ないか・・・ってなるかっ!!

 ・・・それよりっ、何で冬香まで一緒なんだ?」


そう。

零奈が視界に入ると同時に、冬香の姿も後ろから見えたから少し驚いた。

これは更にややこしくなる予感が。。。


「私一人なんて言った?」


「いや、言ってないけどさぁ」


けど、二人って事も言ってなかっただろうが。


「・・・・お邪魔します・・・」


ん?余程外が寒かったのか、二人の顔はほんのり赤くなっていた。

二人とも、肌が白いから余計にそれが目立つ。


俺もさっき帰ってきたばっかりだけど、確かに寒かったからなぁ。。。

・・・飲み物くらいは出してもいいか。


「あ、あぁ・・・。

 ま、今日の所は良いけどさ。。。

 で?何か暖かい物位なら用意するけど?」




「気が利くわね。

 じゃあ私レモンティー」


「・・・私も・・・」


「へいへい。

 じゃ、座っててくれよ」



・・・あれ?

何でお持て成しをしてるんだ、俺は。

























「あいよ」


さて、俺の分も含め3つのティーカップを机の上に置いて、ソファーに座る。


「ありがと」


「・・・ありがとう」


余程外が寒かったのか、直ぐにティーカップに口を付ける二人。


「で?何の用なんだ?」


俺はすぐさま、二人に今日来た理由を聞いてみる。

それなりの目的があるんだろうし、さっさと本題に入って貰わないと夕飯の支度が・・・。

ニーナもその内帰ってくるし。





「・・・こ・・・」


「ん?」


俺が聞いて直ぐに冬香が何かを呟いたがよく聞こえなかった。






「猫が・・・逃げた」






「・・・猫?」












さて、話を詳しく聞いてみた所。

冬香が飼っている猫が、家に帰ったら居なくなっていたとの事。

そこで直ぐに探しに言った所、零奈と偶々出くわし、今に至るって訳だ。



「でも、また何で俺に頼むんだ?

 猫どころか、ペットすら飼った事ないんだけど」


猫みたいなヤツなら、居候してるが。


「アンタなら直ぐに見つけられるかなと思って」






「・・・俺を何でも屋か何かと勘違いしてないか?

 てか、警察に連絡は?」


「・・・こんな事で・・・お巡りさんの厄介になるのは・・・ちょっと。。。」


「そうよ、知樹。

 少しは警察の事も考えなさいよっ」








「警察に遠慮して、俺には遠慮しないのかよっ!?」







いや、確かに雪山の時仲間には頼れと言ったのは俺だ。

でも仲間の力を濫用しろとは言ってないぜ・・・。





時刻は午後5時。

現在は冬なので、既に辺りは暗くなり始めている。


これは少しキツイかもな。。。


「まぁいいか。。。

 兎に角、探すなら人数は多い方が良いし、俊一と涼にも連絡するぞ」


「そうね」


どうやら零奈と冬香もそこには賛同らしい。




巻き込み?

何を仰りますか。



『もしもし、何だ?』


俺がすぐさま携帯で電話を架けると、いつも通りの様子で俊一が応答した。


「もしもし。

 俊一、悪いんだけど猫を探してくれ」


『猫・・・?

 あぁ、もしやお前の家に居る猫と喧嘩でもしたか?』


「いや、ニーナじゃなくてさ。

 冬香が飼ってる猫が逃げちゃったらしいんだ」


そういやアイツと喧嘩して家出みたいな事は一回も無いなぁ。。。

てかニーナって本気で怒る事があるのか?


『それで?

 種類や特徴は』


「おぉ、探してくれるのか」


『当たり前だ。

 ・・・・ふふ・・・新作がここで試せるとは・・・』


「あ?何か言ったか?」


『いや、何でもない。

 それで特徴は?』


「あ・・・そう言えばまだ聞いてなかったな。

 冬香、その猫の種類とか特徴って?」


「灰色と黒色の・・・アメリカンショートヘア。。。

 一応白色の首輪も付けてる・・・」


「灰色と黒のアメショーだと。

 白色の首輪も着けてるってさ」


『うむ、了解』





・・・妙に俊一の聞き訳が良いな。

そこは少し気になる所だけど、次は涼だ。






『うい~っす。

 どした?こんな時に珍しいな』


「いや、頼みたいことがあってさ。

 猫、探して欲しいんだよ」


『猫・・・・。

 あ、もしかしてニーナ先生と喧嘩でもしたか?

 ったく、女を怒らせると後が怖いぞ~』




「だからニーナじゃねぇってっ!」



俺の二度目のツッコミに、俺の言葉を聞いた零奈と冬香はクスリと小さく笑った。

・・・どうもニーナが猫っぽい事は周りからも公認らしい。



「本物の猫だよっ」


『あ?お前猫なんか飼ってたか?

 ったく・・・自分で飼ってるなら管理くらいキチっと・・・』




「冬香の猫なんだけど」




『それを早く言って貰わないとっ!!

 今すぐ探させていただきますッ!!!・・・・(プチッ・・・・)』






よし、完了。

あ、そう言えば涼は猫の特徴も聞かずに、どうやって探すんだろうな。

まぁいいか、放って置けば。


え、お願いしておいて酷いだろうって?

何時もの事だろ、まぁその内気が付くさ。


「よぅし。

 じゃあ俺達も繰り出すか」


「うん」


「・・・うん」

















一月と言うと、ちょうど冬真っ盛り。

雪が降って、路面が凍結って事もあるけど、幸い今夜はそんな事は無さそうだ。


それでも冷たい風が、顔に染みる様に吹き付けるから痛い事この上ない。

日も沈んできてるし・・・。


「しっかし冬香が猫飼ってたなんて知らなかったぞ、俺は」


「私も知らなかったわよ。

 さっき冬香の話を聞くまでは」


「・・・4年前から・・・家で飼ってるの。

 私・・友達少ないから・・・凄く嬉しくて。

 ペットって言うより・・・友達とか家族みたいなもの」


冬香は猫の姿を思い浮かべているのか、少し嬉しそうにそう話した。


「へぇ、それは一層頑張らないとなっ」


でも、何でまた逃げ出したんだろうか。

そんな風に接してたら懐いてるはずなのにな。


「でも・・・本当にごめんね。

 一人で探すつもりだったのに。。。」


「良いわよ。

 私は好きでやってるだけだから、気にしなくて。

 知樹もあ~だこ~だ言ってる割には、結局協力しちゃう奴だから。

 ねっ、知樹っ」

 


うっ・・・これを見ている皆は『NO!!』と言える人になろう。

じゃないと良い様に使われるぞ。



「それでも何でも屋みたいに使われるのは勘弁だからな」


「うん・・・・ありがとう」








「で、アイツは何をやってるんだ?」



歩きながら話している途中で、さっきから何となく気になってる人影があった。

ソイツは道端にしゃがみ込んで、なにやら妙な機械を触っていたのだ。

間違いじゃ無ければ、ソイツは俺の知り合いな訳で。


「私も気になってたけど、どこからどう見ても俊一よね」


零奈も同じ様に、その怪しい姿を見て俺と同じ推測に至ったらしい。


それに加えて、ここは奴の家の前。

確定だな。




「おい、俊一」





「・・・ん?・・・あぁ、知樹か。

 今夜は冷えるな」





「その奇妙な姿で、よく普通の挨拶が交わせるな、お前は」





「お、やはりコレが気になるのか」


俊一が言うコレとは、俺がさっき言ってた妙な機械の事だ。

直径30cm程の大きさで、高さは膝元くらいの高さ。

何処かの惑星探査機の様な形状をしている。






「気になるって言うか・・・下手すれば、通報されるぞお前」


「ならば教えてやろうっ!

 コレはありとあらゆる動物を集める事が出来る機械っ。

 『アニマルアトラクション』だ!」




あ、あにまるあとらくしょん???



「使い方は至って簡単。

 この機械の中には、様々な薬品が入っておりボタン一つで

 指定した動物が好む臭いを生成。

 更にその動物の嗅覚にあわせ、最大で半径1kmの範囲の動物を集める事が出来るのだ!!」


俊一はいつもどおり、この訳の分からない機械を自信満々に説明しだした。

でも説明を聞く限り、あまりにタイムリーな機能じゃないか。


「そ、それは凄いな・・・・」


「今、すでに動物は猫に指定されている。

 このボタンを押せば、半径1km以内の猫が全てここに集まるという訳だっ。

 スイッチ・・・オン」





『アニマルアトラクション・・・・起動。

 成分を合成します・・・・発射』



すると、機械から小さなポッド状の何かが飛び出し、空中で破裂した。

あれから飛び出した成分が猫をおびき寄せるのか?




「よくこんなの作るわね、アンタ」


零奈は呆れ顔で、俊一に言うが、今回は冬香の手助けになっている事は確かなので

その表情は穏やかだ。


「コレくらいの開発朝飯前だ」






確かに凄いけど、これはどういう時に使うんだ・・・?





「・・・見ろ、一匹目の猫だ」


俊一が指を指す所は、俊一の家の屋根の上。

そこからひょっこりと顔を出した後に、飛び出して機械の横に付いて寝転び始めた。


「あ、本当だ・・・。

 俊一の機械もまともに成功する事があるのね・・・」


「待て、俺は未だ嘗て失敗作を作った事があるか?」





どちらかと言えば、ほとんど失敗だったかと。




「まぁまぁ、その議論は後にしてさ。

 どんどん集まってきたから探さないと」


零奈と俊一のやり取りをしている間にも、続々と猫が集まって来ていた。

その数凡そ10匹。




す、凄いな。


「どうだ冬香。

 この中にいるか?」


「・・・ううん、いない」


「そうか。。。。

 ・・・・待てよ、ちょっとコレは大変な事になってきたぞ・・・??」




その猫の数はあれよあれよと増えていき、いよいよ数を数える事までも不可能になってしまった。

道路一面、機械を囲む様に猫だらけ。

そこら中で喧嘩が起こり、猫の鳴き声で周りの声すら確認が出来なくなってきた。


仕方ないから、猫を避けるように皆で機械から10m程の所に避難する。

猫好きにはたまらないかもしれないが、今の俺達にとっては地獄でしかない。



「おいっ、俊一どうすんだよ!!」


「解除ボタンを押そうにも、コレでは押しようが無いだろう」


「諦めてるっ!?」




その時。

俊一宅の二階の窓が開いた。





「俊一!!!

 一体何やってんのっ!!!」





「・・・チッ。

 ここに来て、五月蝿いのに気づかれたか・・・」


俊一が軽く舌打ちをしてそう言った。

舌打ちしたいのは、お前以外の全員だろうよ。




「つ~か、コレだけ五月蝿かったら気づくのは当然かと」




家の二階の窓から顔を出しているのは、俊一の姉である聖奈さんだ。

もうすぐ受験が始まると言う事もあってか、かなりお怒りの様子。




「どうした。

 何か様か?」




俊一は少し離れた場所にも声が届くよう、声を張り上げてそう言った。


すると、この声の数倍の大きさで二階の窓から返事が降ってくる。


「どうしたって・・・分かるでしょっ!

 もうすぐ一次試験なのに、五月蝿くて勉強に集中できないのっ!!

 何よ、その群れはっ!!!!」






尤もな指摘ありがとうございます。






「猫だ」


「見れば分かるわよっ!!」





あ、あの~大変な状況なので、姉弟コントはそろそろ終いにして欲しいのですが・・・。







「・・・もう、いいわ。。。

 どうせそこにある妙な機械が原因なんで・・・しょっ!!」


そう言って、聖奈さんは手に持っている鉛筆を思いっきり投げた。

すると目にも止まらぬ速さで、軽い木の鉛筆が機械に突き刺さり、機械からモクモクと白煙が上がり始める。


『・・・システムエラー発生。

 機能を停止します』


そしてその様な機械音声と共に、猫達は機械に興味が無くなったのか、一斉に四方へ散らばり始める。





「俊一ッ!

 帰ってきたら・・・・分かってるわよね?」



『ガタンッ!!』



先程の人間離れした芸当も相まって、聖奈さんの醸し出す殺気が半端じゃない状態のまま窓は閉められた。



「お前の姉さんって・・・一体」


「まぁ気にするな。

 機嫌が悪い時はあんなものなのだ」


そ、そうなのか?


「でも凄い人だって事は分かるわ。。。

 夏休みの時もホテルの部屋で必要以上に迫られたし・・・」


零奈は何故か表情を硬くして、そう呟いた。


一体何のことだ?


「は?」


「あ、う・・・ううん。

 何でもない、夏休みに旅行に行った時ね、色々とあったの。

 聞かないでよ、あんまり思い出したくないから」

 

「はぁ、そうっすか」


二人が一緒の部屋になったのは、二日目の夜だったか?

まぁ女子達の部屋の中で起こった事は、あまり聞くべきじゃ無さそうだな。

どうせニーナは一番に寝ただろうし。


「あっ、そうそうっ。

 猫よ、猫!

 冬香の猫は居たのっ!?」


そうだ。

厄介事になったせいで、本題を忘れる所だった。


零奈も忘れかけてたみたいだけど、慌てた様子で冬香に問い質す。


「・・・・」


冬香は落ち込んだ様子で、首を横に2回振るだけだった。


「いなかったのね・・・・。

 こんな事があった後に言うのは何だけど、俊一。

 もっと使える道具は無いの?」


零奈はより真剣な表情で話す。

当の俊一は、壊れた機械の後片付けを行いながら、小さく笑いこう言った。







「任せておけ。

 このような事は想定内だ」


「「なら最初からやるなよっ!!!」」





俺と零奈の見事なツッコミが炸裂した後。




「・・・・やるなよ」



冬香も遅れながらに、小さく俊一にツッコミを入れた。




冬の夕暮れ時。

乾燥した風が俺達の頬を染めようと吹き付ける。


あ~、寒い。。。

本当に探し出せるのかよ・・・・。











後編へ続くっ。












皆様、明けましておめでとうございます。

今年も私の小説をよろしくお願いいたします。


さて、ちょうど小説とリアルの季節が重なってしまいましたね。



いやはや、もう何回追い越されたか。。。



おっほん。

さてそいつは置いといて、今回はペット探しですね。

次回も俊一の秘密道具が登場する予定。


乞うご期待。


あと、ブログも良かったら見てってね。

小説成分5パーセント位だけど↓


http://u0831.blog89.fc2.com/


ではでは。

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