その願いは?~前編~
俺以外の人間は年末って言うと、何を思い浮かべるのか。
まぁ国・・・いや人によって違うだろうけど、大体は『呆気なかった』って思うんだろうな。
んで、もって俺もその一人である訳でして。
俺は今とある一撃から目覚めたばかりだった。
『ペシィィィーーーン!!!』
朝日も驚くほどの快音が俺の頬から聞こえてきた。
間違いなく打たれたんだろうけど。
「・・・いってぇ・・・・・ん?
朝か」
「朝か、じゃないよ~。
一緒にカウントダウンしようって言ったのにぃ~~~!!」
目を開けると、ソファーにもたれて寝てしまった俺の真横に、涙目で怒っているニーナの姿が。
「いや・・・だってさ」
それは昨日の夜の事だ。
冬休み半ばで、俊一の計画していた『俺の家で年越し&お正月大パーティー』
が急遽中止になった為、俺とニーナはほぼ何時もどおり夕食を済ませて、
ソファーの上で年末恒例の歌番組を見ていた。
クリスマスも俊一はいなかったし、一体アイツは何をやってるのやら。。。。
まぁこっちも家の中荒らされなくて済むから、正直ホッとしたけどさ。
「フ~ン、フ~ン、フ~ン♪」
風呂が沸いた頃だったか。
ニーナが上機嫌にテレビから聞こえてくる音楽に合わせて、
小さく鼻歌をしている事に気が付いた。
「ニーナどうした?
今日は機嫌が良いみたいだけど?」
「もうっ、分かってないなぁ~。
年越しだよっ、大晦日だよっ!
お・お・み・そ・かっ!!」
「耳元で言わなくたって分かってるって・・・。
どうして年越しだとテンションが高いんだよ?」
「それを言われると・・・分からないけどテンション上がるでしょっ」
ニーナは少し困った後に、ニッコリ笑って誤魔化した。
やっぱりそんなんかいっ。
「へいへい、分かったから。
とりあえず、冷めない内にお風呂入ってこいよ」
「はぁ~い。
・・・・・・・・・」
と、返事をしたものの、数秒間俺の顔をじっと見つめるニーナ。
未だに、この青い瞳に見つめられるのは慣れなかったりする。
「な、何だよ」
「覗かないでよ~」
「それは、初めて家にお泊りする奴のセリフだろっ!?
今更、覗くかよっ!」
「あ、じゃあさ。
この間の一緒にお風呂に入る件は・・・・」
「どうやって繋いだら『じゃあさ』になるんだよっ!?
早く入れっ!」
「う~、おめでたい時なのに、怒ってばかり・・・」
「いや、そこまで怒ってるつもりは」
「じゃあ、一緒にお風呂に――――」
「いいから入れやっ!!!!!」
「きゃ~、怒ったぁ~~~」
ニーナはそう言って、駆け足でお風呂場へと向かっていった。
ったく・・・。
そして、一時間後。
ニーナがお風呂から出てきてから、俺も直ぐに入浴して風呂から上がる。
こんだけ寒いと風呂のガス代も勿体無いからな、早めに済まさないと。
一緒に風呂に入るのは御免だけどな。
「あ~・・・いい湯だった」
親父臭い事を言うのは何時もの事なので、ご愛嬌。
自分で分かってても止められない、止まらない。
そんでもって台所の冷蔵庫に直行しようとする時に、ソファの方向を見てニーナを確認しようとした訳だ。
どうせ年末恒例の歌番組でも見てるんだろう、そう思ってた訳だが。
そこにはソファーで『爆睡』中のニーナの姿が。
「・・・12時位までなら、起きてる時結構あるのに。
何で今日に限って寝てるんだ・・・?」
思わず独り言が漏れた俺だけど、まぁいい。
後で起こしてやれば良いか、と一先ず目標の牛乳を飲んでソファーへと向かった。
「すぅ・・・すぅ・・・・」
小さな寝息の音が、テレビの音に混じって微かに聞こえる。
ニーナの寝顔は良く見るけど、お風呂から上がって間もない事もあってか
髪が濡れていて妙にセクシーで、寝ている横顔からチラリと見えるうなじも妙に・・・・。
って、おいおい。
何を涼みたいな事をやってんだか。
と、まぁ平常心を取り戻した俺だった。
この時午後10時。
あと二時間、適当に潰せば良いんだろ。
「おっ・・・この歌手は・・・・」
が、何故か朝起きたらこの様だ。
最後の記憶が、少し気になっていた歌手が歌い終わった辺りだった。
「もうっ!!何で起こしてくれなかったの~!!
「だからっ、あれはニーナも寝てたからっ。。。
同罪だろっ!」
「むぅ~・・・・」
零奈と違って正論にはあまり反論しない所辺りがニーナの分かり易くて良い所だったり。
「そうだ。
朝飯に年越し蕎麦を食べよう。
食べたがってただろ?」
「・・・なんでそこで年越し蕎麦なの~~~。
もうとっくに年跨いじゃったから、それはタダの蕎麦だよっ。
あぁ~、年越し蕎麦食べたいなぁ・・・・」
「ワガママ言うなって・・・」
「あっ、そうだ。
今すぐに真東に飛行機飛ばせば、まだそこは年末だよね?」
「・・・ニーナの家庭ならそれ位出来るかも知れないけどさ。
そこは止めとこうぜ」
「何で~?」
「蕎麦の為に飛行機運転するパイロットの身にもなってみろ」
「う・・・・確かに・・・。
そっかぁ・・・また一年待たなきゃいけないのかぁ・・・・」
急にニーナの表情が暗くなる。
くっ・・・そこまで落ち込まれると何だか罪悪感が。。。
いや、俺は悪くない・・・・俺は悪くない・・・・あ。
そうだっ!
「ニーナ、初詣行こう!!」
「はつ・・もうで?」
・・・何だ、初詣は知らないのかよ。
変な所で知識不足というか。。。
「まぁ超簡単に説明するとだな。
多分正月に神社へお参りに行く事を初詣って言うんだけど、
今年の運勢を占う為におみくじ引いたり、絵馬に願い事書いたり、
色々縁起がいい事が多いんだよ。
つまりさ、今年一年が良い年でありますようにって、神社にお参りする行事って訳」
「へぇ~・・・なんだか楽しそうだねぇ」
どうも暗い気持ちは一瞬で吹っ飛んだらしく、
すでにニーナは大きい瞳をキラキラさせていた。
やっぱり日本文化への興味なのか?
「それじゃ行くか?」
「うんっ」
「よしっ、んじゃ準備するか」
「あ、今日は皆は呼ばないの?」
ニーナは早速準備に取り掛かろうと二階の階段に昇る途中で、俺にそう言った。
「流石に年末年始は急に呼べないって。
あっちにはあっちの都合があるだろうし。
ま、運がよければ、放浪してる涼くらいには会えるかもな~」
「はははっ、何それ?
じゃ着替えてくるね~」
そう言って、途中まで昇った階段をまた駆け足で昇り始めた。
あぁ着替えと言えば、本当は晴れ着とかあると良いんだけど。
家のは何処にあるのか分からないし、見つかってもサイズ合わないし、着付け出来ないし。
ま、いっか。
さてさて準備だ、準備。
さて、グダグダ年末イベントをやるのも嫌なので一気に飛ばしました。
と言うのは冗談で、一応俊一も色々あるのです、はい。
(・・・この伏線回収出来なかったらドウシヨ。。。)
うむ、その時はその時ですかね(ォィ)
さぁ年越し蕎麦を食べ損なったニーナと知樹は初詣をどう楽しむのか。
後半へ続くっ!!
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