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イルミネーションな夜


いやはや、今更だけど冬真っ盛りはやっぱり寒いね。


朝、窓を開けると冷たい風が入ってきてさ、何でこんな寒いのかなぁとか思っちゃうよね。

でもその反面、妙に朝飯の暖かいご飯や味噌汁が美味かったりもするけど。



まぁそんな事を思いながら俺は台所で食器を洗い始める。

水を出すけど、暖かくなるまでは触らない。

もうお湯だと手が荒れるとか言う事は、気にしちゃ負けだと思うんだよね。

だから少し暖かめのお湯で、朝飯で使った4人分の食器を―――。





4人分。。。





俺は一旦お湯を止めて、洗いかけの食器を放置して、テレビの前のソファーに向かった。






「・・・ってか、あんた等。

 家に急に泊まった上に、何も家事を手伝わないつもりで?」


あんた等ってのは、昨日の激臭香水破裂事件により、

急遽俺の家に泊まる事になった零奈とその母親の事だ。


俊一と零奈が家に泊まる事はあるが、大体が勝負に負けた罰ゲーム的な意味合いであって

俺に何かを言う権利は無い。


でも今回は違う。


俺が香水に当たったのは確かだけど、そのきっかけを作ったのは零奈だ。


でも何故か、4人分の朝飯を食い終えた後、何故か二人はニーナと一緒にソファーに座ってテレビを見ていた。


テレビ画面上には、今日がクリスマスである事を、忙しい俺に伝えようとしているかの様に、

どこぞの派手に飾られた巨大クリスマスツリーが映っている。


あぁ、そういや今日はクリスマスだったな。。。

昨日がイヴだって事も昨日の今日で忘れちまってたな。

まぁそんだけ忙しかった訳でして。


「何言ってるの?

 私は悪くないわよ。

 アンタがもっとちゃんと避けてくれれば良かったのよ」


「だからそれは可笑しいって・・・」


何故そうなるのか理解不可能です。


「まぁまぁ、泊めてもらってるのは事実なんだからぁ~。

 私達も何か手伝った方がいいと思うわよ?」


おお、流石おばさん。

こういう時は世の中の渡り方を知ってるって感じだ。


「そうだね~。

 二人共手伝った方が良いと思うよ~。

 トモって怒ると結構怖いからね~」


「お前はいつも何もやってないだろっ!!」


「いてっ・・・」


俺は冗談としか受け取れない事を、本気で言うニーナの頭を軽く叩いた。


何故そこまで、偉そうに振舞えるんだよ・・・。


「まぁ仕方ないわね・・・。

 それじゃ私は何やれば良いの?」


「そうだな、それじゃまだ食器洗い流してないから、残りを全部頼む」


「りょ~かいっ」


零奈は軽く返事をして、台所へ向かった。

って言ってもすぐそこなんだけど。


「じゃ~私は~・・・」


「え~と、そうですね。

 そしたらおばさんは―――――」


と、言おうとした瞬間。


『パリーーンッ!』




何かが割れた音。


も、もしやっ!?





嫌な予感を感じた俺は、おばさんとの会話を一旦切って、

すぐさまその場から数歩歩いて台所を覗きこんだ。


すると、そこには苦笑いをしながらこっちを見る零奈が。


「あははは・・・・割っちゃった」




何故だっ!?

洗剤で洗った皿を、水で流すだけの作業の何処に皿の割れる要素がっ!?


「割っちゃったじゃないだろっ。

 兎に角怪我してないよな?」


「う、うん」


「そんじゃまぁ、皿は触らないようにな。

 ちょっと待ってろ、丸める用の新聞紙持ってくるから」


ったく、やれやれだ。




・・・・ん?





ひとまず新聞紙を取りに、台所から出た俺が見たものは。



「おばさん?」


「あ~、知樹君。

 私はとりあえず洗濯物を干そうと思ってね~」


先程まで洗濯機を回していたのを聞いていたらしく、洗濯物を取り出して歩いてゆくおばさんの姿。

流石主婦だ。

自分が何をやるべきかを熟知してる。


「で~、零奈は何をやったのかしら?」


「あぁ、ちょっと皿を割っちゃったみたいで。

 怪我は無いみたいなんで、良かったですけど」


「あらぁ、本当にごめんなさいね~。

 零奈ったら家事とかやらせたら、結構不器用な所が多くてねぇ~。

 母親の私もビックリしてる位なのよ~」



文武両道なのに家事だけは出来ないのか・・・・。

何とも変わった奴だ。




そこで会話が終わったと思った俺は、リビングの新聞が束ねてある箇所から

数日前の新聞紙をまとめて手にとって、零奈の元に戻ろうとした。


「あ~、そうだ知樹君。

 一つ聞きたいんだけど~」


でもどうやらまだ会話は終わってなかったらしい。


「何ですか?

 干す位置とかは、特に決めてないんで、適当で良いですよ?」


「ううん、違うわ」









そう言うと、おばさんは洗濯物の入った籠の中から、ある物を取り出した。






「このパンツってもしかして勝負下着かしら?」


「何なんですか、その質問っ!!!」


勝手に人の下着をピックアップ!?






「あら、やっぱり聞いちゃまずかったかしらぁ~」


普通は聞かないでしょ。

仮にも良い歳した大人なのに。


「一応答えると勝負下着なんかありませんよ」


「あらそうなの?

 へぇ~」


何答えてるんだ、俺っ・・・。





「因みに私の勝負下着はね~~」


「ニーナもいつの間にやら現れては、いちいち話に首突っ込むなっ!!

 そして洗濯物にも手を突っ込むなっ!!!」






「これっ!」





「本当に出すのかよっ!?」


「何で怒るの~。

 ど~せいつも干しながらニヤついてるくせにぃ~」


「ニヤつくかっ!

 てか、俺に見られたくなかったら自分のは自分で洗えっ!」


「見られたくない訳じゃないよ~。

 むしろ見せてる感じ?」


「見せるなよっ!!」


「あ~赤くなってる~」


「あら知樹君って意外と子供なのね」





・・・もうやだ、この人たち。



「トモってムッツリスケベだよね」


「だから、そういう日本語を何処で覚えたんだよっ!?」




「これはね~、確かD組の村木君だったかな?」


「誰だよっ、それっ!?」















その後、結局俺一人で家事をこなした。


リビングに戻っても、女性3人の会話にどうも割り込む事が出来ず、

俺はひたすらボーっとテレビを眺めていた。

番組の内容は相も変わらずクリスマスの特集をやっており、

今度はどこぞの限定スイーツやらの紹介をしている。


どれもこれも美味しいと言ってるけど、真相は定かじゃない。

実際行ってみるとイマイチって事も良くあるんだよな~。

まぁ少なくとも日本のテレビ番組で紹介する料理を貶すシーンは見た事が無いし、

きっと不味くても美味いって言ってるんだろうな。


食べる前から美味いって言う暗示を掛けられない様に、見てる側も気をつけないとな。

先入観にとらわれちゃ、本当に美味いもんにありつけないし。



『ピンポーン』





俺が熱心に語っているところに、インターホンが鳴った。


「ん?一体なんだ?」


まぁ身に覚えもないし、きっと訪問販売か何かか。





「あ、そうだっ、そろそろだった!」




と思いきや、身に覚えがある人物がいたみたいだ。


「ニーナ・・・また何か厄介なものを家に送りつけたんじゃないだろうな?」


「へへ~ん、それは見てのお楽しみ~」


そう言って自身有り気に胸を叩くと、ニーナは勝手に家の印鑑を取り出して玄関へと向かっていった。


あ、あいつ、何時の間に印鑑の位置まで覚えやがったんだ。。。









そして一分後。


ニーナは高さ50センチ、縦横1メートル程の大き目のダンボールを押しながら、リビングに戻ってきた。


「何だよそれ」


「これはね~~・・・じゃ~ん!!」


ニーナはやけにワクワクした様子でダンボールを開けた。

こ、これは多分、まずいタイプのワクワクだぜ、きっと。




「な・・・何だコレ?」


ニーナ以外の三人が、ダンボールの中を覗き込むと、そこには何やらゴチャゴチャしたコードやら電球やらが所せましと詰まっていた。


「これはね、いわゆるデコレーションっていうか、まぁイルミネーションだよ。

 コレで家を飾ると、すっごくキレイになるんだよ~」


「ちょっと待てっ!

 そんな事やるなんて聞いてないぞ!?」


「うん、だって私が勝手に取り寄せたんだもん」


「さも当然かのように受け答えするなぁ~!」


大体、色々と配線とか面倒くさそうだし、隣近所に迷惑かもしれないし。。。

メリットが少ないっ!






「何でそんなに怒るの~?

 あ~~~、さては電気代が掛かるとか考えてるんでしょ~。

 そこは大丈夫だよっ、全部の電球がLEDだから省エネ対策もバッチリッ!!!」


「そこは大した問題じゃねぇよっ!」


笑顔で親指立てるなっ!


「ぶ~、じゃ何なの~」


口をタコのようにして、不満を露にするニーナ。


「大体なっ、そんなキラキラ光ってたら目だって仕方ないだろっ!

 近所にも迷惑かもしれないだろっ!」


「すでに隣近所には許可はとってるもんね~。

 凄いでしょ~」



「くっ・・・この手際のよさ。

 お前本当にニーナかっ!?」




「むっ、失礼なっ。

 朝起きて、家事もしないでテレビ見てる私を見てたでしょ~」


「自分が一番失礼だろ、それ」


・・・てか、だらけてる事自覚してるなら手伝って欲しかった。。。







しかしこのままだと、この家をクリスマス仕様にする事は確定か。。。




いや、待て。




今日この家にいるのは、俺とニーナだけじゃない。

流石に零奈とおばさんが否定すればっ・・・!!





「あっ、可愛いわ~、このトナカイの形したライト~」


「やっぱり女子なら一度は憧れるわよね、こういう綺麗で可愛いデコレーションって。

 馬鹿な知樹は女心が分かってないみたいだけど。

 ・・・あれ?この大きなリースは何処に飾るの?」


「え~っとね。

 これもちゃんと光るようになってるから、目立つように二階のべランダにぶら下げようかなぁって思ってるの」


「うんっ、それ良いかもね。

 やっぱりコレだけ大きいと目立った方が良いと思う」


「う~んっ!ワクワクしてきたっ。

 やっぱり家は綺麗に飾らないとっ!」


「「「ね~~」」」









いや、全員メッチャ盛り上がってますやん。

メッチャ息ピッタリですやん。









どうしようも、ないっす。


これ。


ギブ・アップ。




「ねぇ、知樹っ。

 この大きいリース、取り出して二階まで運んでベランダに取り付けてくれる~?

 ちょうど家の正面からきれいに見える様にお願いね」






そして男は俺一人なので、こき使われる事は確定な訳でして。






「ほら、知樹っ、動きなさいっ」


「へいへい・・・」


「悪いわねぇ~、知樹君」


とか言いつつ、おばさんも完全乗り気だったでしょっ!




てか痛っ!?

この無駄にでかいリースッ!

チクチクするっ!!




「だ、誰か助けて・・・・」




「うん、この白色のLEDは星みたいに散りばめたら良いんじゃない?」


「だね~」


「だったら外に出た方が良いわねぇ。

 下から順番に取り付けて、高い所は脚立を使ったら良いと思うわ~」






しかし、3人の会話は熱を増す一方で俺の助けを求める声は誰の耳にも入っていない様だった。





くっ・・・くそぅ・・・・。


いつから男はこうも弱くなったのかっ!

男女平等と言う言葉は女性の為にある言葉ではないのだっ!!!





「あれ、知樹?

 まだそこにいたの?」


「トモ~頑張って~」


「知樹君、男の子なんだから頑張りなさいっ!」







「・・・・頑張って運ぼう・・・・」


ちくしょう・・・。










とは言ったものの、俺の作業は上に運ぶまでが難しかっただけで、

二階に上ったら俺の部屋にあるベランダの柵にしっかりと結びつけて終了。


ものの十分で終わってしまった。


んじゃま、下に言って女子達の様子でも見に行くか。

いや、むしろ終わったのバレバレなんで、行かないと後が怖い。


俺は下に降りてから、冷蔵庫にあるお茶を少しだけ飲んで女性陣のいる玄関先に出た。


う~ぃ、寒い寒い。。。



「おっ、結構進んでるな」



うん、まだ下の方だけだけどな。


細いロープの様な電線に電球が取り付けられていて、

それが家の下の部分にバランスよく張られていた。


「あっ、知樹。

 やっと着たわね」


零奈、何だ。

その明らかに俺に何かを頼もうと企みが見える笑みは。


「今から高い所になるから、知樹お願いね」


零奈は自分の持っている電線の端を家に張り終えると、何故か脚立を俺の前に置いた。


「な、何で俺がっ!?」


「決まってるじゃない、ここ足場不安定だから脚立だと危険でしょ?

 だからよ」


「理由になってないだろっ!?」


てか本当に危ないし、ここ下柔らかめの土だぞ?

下手すればバランス崩して、硬い所に頭をぶつけよう物なら・・・。





「あ~、男子なのに女の子に仕事やらすんだ~」


急に零奈が態度を変えて、こちらを蔑むような目でこちらを見た。


「「「サイテ~~」」」←女子一同







「あんた等。。。

 そのセリフせいぜい言って良いの中学生までだぞ・・・」















「それじゃ、頑張ってねぇ~」


「頑張ってね~、トモ。

 たまに暖かい紅茶くらいは持ってくるからね~」


「怪我しないようにね」


3人がそれぞれの言葉を、バランスを取るのに苦労している俺に投げかけて家の中へ消えていった。


家の主は俺であり、その俺がこの装飾を認めていない。

それなのに俺が一人で外で作業って・・・・。







世の中不平等だぜ・・・・。






仕方ない、今から黙々作業を進めるしかない。。。

集中すれば、2時間って所だろ・・・。










そして、2時間後。。。


「で、出来た・・・」



俺が見事に家の正面に電線を張り巡らした頃には、すでに時刻はお昼時。

俺の手はすっかりと冷たくなっており、真っ赤になっている。

軽い霜焼け状態かも。。。




見るも無残な姿になった手を見つめて、俺はある事を思いついた。


いや、実にしょうもない事なんだけどもね。





俺はゆっくりと音を立てない様に玄関の扉を開ける。

そして、風が入るまでに即座に音を立てぬ様扉を閉める。


よし・・・第一関門クリア!


靴を脱いで、リビングまでの直線上に誰もいない事を確認っ!

後は目標までに声を上げられない事が肝心だ。


まずはおばさんだが、この食欲を誘う匂い、きっと昼食に料理を作ってくれているに違いない。

とするとここからリビングへ直行すれば、リビングの左にあるキッチンからはこちらは見えない。

よっておばさんはクリア。


ニーナは冬休み中、昼になると某お昼のバラエティー番組に集中しているから、見つかるはずが無いっ。


とすると、零奈もきっとその隣だ、おばさんは零奈の料理下手を知っている。

つまり手伝わせる訳は無いし、かといって手伝っていてもこちらを確認できないっ!


よし決まったっ!!





俺は作戦を実行すべく、抜き足差し足でリビングの入り口へと進む。

そしてキッチンからの音を確認してから、

テレビの方向をリビング入り口の扉のガラスから覗き込む。


やっぱりな。

零奈とニーナはソファーに座って、テレビを見ながら声を揃えて笑っている。。。。






俺が寒い中苦労して仕事してたのに、お前ら・・・!


俺はより一層、決意を固めてリビングへとしゃがみながら侵入し、

息を殺しつつ、いよいよソファーの直ぐ後ろへと潜り込んだ。




俺は気づかれないように、慎重に零奈の頬の両サイドに両手で狙いを定める。







今だっ!

ゆっくりと、零奈の頬を両手で挟みこむっ!!!





『ペタッ』







「きゃっ!?

 い、嫌っ・・・ちょっと・・・!

 冷たいっ!何、何!?」



おおっ・・・まずまずのリアクションだ。

手も温まるし、一石二鳥だ。


「こんの~!!俺が寒い中仕事してたってのに、こんな所でぬくぬくとテレビなんか見やがって~」


俺は本音を吐き出しつつ、更に零奈の頬を押しつぶす。


「知樹っ!?

 こらっ、離しなさいよっ!」


「フフフ・・・謝ると言う選択肢は無いのかね?

 ならばもっと押しつぶしてやろうかっ」


「あ~、もうっ、分かったわよ~!

 ごめんねっ、私が悪かったからっ!」


「よしっ、では離してやろうっ!」


思った以上に暖かくて、離すのは名残惜しい気もするけど謝ってくれたし離してあげよう。



「あ~、冷たかったぁ・・・。

 急に後ろからなんてビックリするじゃないっ!」


零奈は元々お化け屋敷等のビックリ系が苦手だからか、真っ赤になった頬を涙目で抑えていた。


「だってそっちの方が面白いだろ?」


「あはは・・・うん、私も凄いビックリしたよ~。

 急に隣で叫ぶんだもん」




「ニーナ?人事みたいに言ってたらだめだぜ?」


「へ?」


「零奈っ、頼むっ!」


俺の声に反応して、零奈がニーナを後ろから羽交い絞めにした。


「えっ、零奈っ!?」


ニーナが驚いて、目を見開いて後ろの零奈を見ようとするが、勿論目で零奈を捉える事は不可能だ。


「ニーナも一緒にテレビ見てたでしょ~」


「ふふふ、そういう事だっ!

 ニーナ堪忍しろいっ!」


「そ、そんなぁ~・・・。

 あっ、でも零奈の頬に手を当ててたから意味ないでしょ~」


ニーナは一瞬落ち込んだ表情を見せたが、すぐさま調子を戻した。


「確かにすでに使っちゃったな・・・『手の平』は」






「あ・・・・・・・」


「くらえぇい!!!

 『手の甲』アタァ~~~ック!!」




『ペタッ』



「っ・・・冷たいっ!!

 ごめんなさい、ごめんなさいっ」


「ふふふ、気持ちを込めていいたまえっ!」


「・・・本当にゴメンなさ~い・・・・」





















さて、その後昼食を食べ終えた俺達は、また作業を再開した。

今度は他の皆も一生懸命に動いてくれている。


まぁ、あの奇襲攻撃が嫌だ、と言うよりはやっぱり皆で作業した方が楽しいって思ったのかな。

何はともあれ時間はあっという間に過ぎて、時刻は夜7時。


夕飯を食べ終えた俺達は、皆で揃って玄関の外に揃って出ていた。



どうやらニーナが挨拶に回った際に、点灯時間まで知らせたようで、隣近所の人もちらほらと見える。

まぁ、近所付き合いも悪くないし、結構和気藹々とした雰囲気。





点灯のスイッチは俺が持っている。

他の三人が、俺が一番頑張ってたから、と言う事で点灯は俺がした方が良いって事になったらしい。

まぁ皆で作った物だから、気が引けるけど皆に言われちゃ仕方がないから引き受ける事にした。





「それじゃ、付けますよ~。

 5、4、3、2、1」




俺は0を言う代わりに、スイッチを押した。




すると、闇夜で何も見えなかった我が家が突如現れた光に囲まれた。

家の所々に付けられた星や雪を思わせるような白い光。

トナカイの鼻の先やサンタクロースの赤い光。

クリスマスツリーの形で囲った緑の光。




今まで住んでいた家とは違う『風景』があった。



「わぁ~綺麗ねぇ・・・」


「すっごい、綺麗~」


「幻想的ね・・・」



どうやら女性陣も思った以上に美しいと思ったらしく、その見事な雰囲気に見せられながら言葉を漏らした。

近所の人からも溜息のような声が漏れるのを聞いた。





少しして、妙に明るい事に気が付いたんだろうか。

徐々に見知らぬ人までも集まってきた。


やっぱり遠くからでも目立つんだってさ。


それでも、見に着た人は皆驚いてくれてるし、中には携帯で写真をとる人まで現れた。





何か・・・嬉しいな、こういうの。





「ねぇ」


俺が一人でニヤついていると、横から零奈が声を掛けてきた。


「何だよ?」


「まだやらなければ良かったって思ってる?」




零奈・・・確信犯で聞いてるな。。。





「・・・さぁな。

 ま、良いんじゃないのか、たまにはさ」


「正直に言いなさいよ」


『ギュッ』と零奈は俺の頬を抓った。


「いててて・・・・分かったから。

 やって良かったって思ってるよ、皆楽しんでくれてるし。

 結構楽しかったしな」


「うん、よし」




無理やり言わせるなよっ。





「・・・来年もやりたいね」


「・・・そうだな」















さて点灯から一時間以上が過ぎると、流石に集まった人々は徐々に各自の家へと戻っていった。

残ったのは俺達4人のみ。


「さて、そろそろ消すか?」


「え~、消しちゃうのっ!?

 これって普通はクリスマスシーズン中は一晩中付けておくのに~」


ニーナが名残惜しそうに、飾られた家を見る。


「そう言っても・・・こんだけ明るいとやっぱり迷惑だろ?

 それにさ日本の文化はさ、消えてくからこそ綺麗だって思う事もあるんだ。

 ほら、例えば花火なんて、一瞬光っただけで消えるだろ?

 ずっと光ってるより、儚いけどその分綺麗なんだよ」



欧米の文化とごちゃ混ぜになっちゃてるけど。

やっぱり消える瞬間も綺麗だと思うんだよね、俺は。


「流石、知樹君ねぇ。

 いい事言うわぁ~。

 でも、何か思い出に残す方法は無いかしらねぇ~。

 やっぱり何かを残すのは大切だと思うの」




「あっ、そしたら涼呼べばいいんじゃない?

 写真を撮るのが好きだったし。

 きっとクリスマスの夜でも暇でしょ、きっと」



何気に酷い事言ってますね、零奈さん。


零奈は携帯電話を取り出して、メールを送信した。








すると、数分で涼が自転車に乗って現れた。


「ちぃ~っす・・・何だこの光はっ!?」


涼は軽く挨拶をして登場するつもりだったんだろうけど、異様な光を遠くから察したのか、

見事なまでのリアクションをしながら自転車を降りた。


「今日一日掛けて作ったんだよ、それでさ写真に撮って欲しいんだよ。

 俺達と一緒に」


「へ?それだけの為に呼ばれたの?」


「そうよ?」


「ヘイヘイヘイッ!

 ちょっと待ってくれよっ!

 このメールの内容を見てくれっ!」


涼は徐に懐から自分の携帯電話を取り出し、画面を俺に見せた。


「ん?・・・何々?

 『今、お母さんと一緒に知樹の家から家に帰るんだけど、女二人じゃ不安だし

 どうせまだ時間もあるし一緒に何処か食べに行かない?』って・・・。

 つまり零奈、お前はクリスマスに暇な男子の心を弄び、尚且つ利用したのかっ!?」






「・・・さっ、それじゃ早く撮ってね~」






ま、魔性の女やっ!


クリスマスの夜に魔女を見たんやっ!







いや、その前に涼。

お前、冬香一筋だって言ってたろっ!?

なぜ軽く零奈に釣られてるんだっ!?









「うっ・・・はい・・・チーズ・・・・・・」


『パシャリッ!!』


涙目でシャッターを押す涼。


おお、何と可愛そうな涼だっ!









「良しっと、あ、そろそろ24時間たったよね?」


24時間?

あぁ、俊一の消臭剤が匂いを除去するのに必要な時間か。

そういやもうそんな時間だ。


「そう言えばそうねぇ~、じゃあそろそろ帰ろうかしら~」


おばさんは携帯電話の時計を見ながら、言った。


「じゃあね、知樹、楽しかったわ。

 ニーナもね、バイバイ」


零奈は俺とニーナに手を振った。


「あぁ、じゃあな」


「バイバ~イ」






「・・・それじゃ俺も帰るよ・・・じゃあな」


「・・・涼・・・気を落とすな。

 いい事あるさ、何時か」


「あぁ、ありがとよ。

 クリスマスの夜に慰めてくれるのはお前だけだっ!!」


俺は涼とガッチリ抱き合った。

すばらしき友情っ!!








「ちょっと・・・・何してるの?」


「なっ・・・零奈っ。

 帰ったかと思えば、男の友情を侮辱するとは――――」





「違うわよ、涼を待ってるだけ」





「へ?」


涼は何とも拍子抜けの声を出した。




「だから、行くんでしょ、何処か食べにっ」




「え?でも、写真を撮らせにきただけだって・・・」


「あれは知樹が勝手に言っただけでしょ。

 否定も肯定もしてないし、それで行くの、行かないの?」


「行きますともっ!」


「うふふ・・・本当に嬉しそうね、涼君」


うんうん、本当だ。

やっぱりいい事あっただろっ!!


「そりゃあもうっ!・・・あぁ、孤独な俺サラバッ!」


「勘違いしないでよ。

 ずっと寒い所にいたから、ちょっと暖かいもの食べたくなっただけだから」








そんなこんなで、涼は二人に連れられて闇夜へ消えていった。


「さて、そんじゃ消すぞ~」


「・・・はぁ~い・・・・・あれ?」


ニーナが不満そうに返事をするがその後、俺の後ろの方で何かに気が付いた様に首を捻った。


「何だ?」


「何か、向こうの空で何か光った様な・・・」


「光った?きっと何処かで同じ様なイルミネーション的な事でもやってるんじゃないか?」


「そんなんじゃなくて・・・まるで花火・・・みたいな?」


・・・もしかして、そうやって気を引いて、スイッチを押させないつもりなのか?


「多分気のせいさ」


「そうかなぁ・・・」


「それじゃ消すぞ~」


「は~い・・・・」


俺は少しばかり後ろ髪引かれる思いで、スイッチを押した。

再び家は闇夜に染まり、少しばかり賑やかに思えた雰囲気も一気に静まり返った様な気がした。






「あ~あ~」




ニーナも更に残念そうに溜息を吐いた。

どうやら本気で落ち込んだようだ。




「まぁ、気にすんなって。

 また来年もやろうぜ?」






「えっ、ホント?

 じゃあ来年はもっとド派手なものを用意しちゃおっかなぁ~~」







「それは全力で却下するっ!!!」












そんなこんなで高校一年のクリスマスは終わっていった。

何だかんだいって充実してたような気がする。









そう言えば、俊一とは連絡つかなかったけど。。。

何やってんだろ、アイツ。



ま、いいか。

元々謎が多いヤツだし、謎が増えても気にする事も無いさ。






「さ、家に入ろうぜ」


「うんっ」













祝50話達成っ!パチパチパチッ。

読者の皆様のお陰で、ここまで続ける事が出来ましたっ!


さて今回はクリスマスの話でしたが、如何でしたでしょうか?

まぁ何時も通りの取り留めの無い様な話なんですけど。


上手くキャラクターの個性が出せたとは思いますけど、どうでしょ。

零奈の悪女そうでそうでない所とか。

ま、あんまりこういうコメディー系の小説で悪役っぽいのは作りたくないんで

皆基本的に良い奴なんですね。


ではこれからも頑張って行きたいと思いますので、

今後ともよろしくお願いしますっ!!



追記:そう言えばブログ始めました。

良かったら見てください、損はしないっ・・・はず。↓


http://u0831.blog89.fc2.com/


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