昼時の一時
この学校に入学してから数日後。
まだ、この生活に慣れた訳ではないが、俺の周りの奴らに苦労しながらも
悪くない日々を送っている・・・
「知樹よ、さっさと俺の昼飯買ってこい」
・・・・・と、思いたい。
因みに今は昼食の時間。
分かるとは思うが、俺に昼飯を買ってくる事を命じているのはもちろん俊一だ。
「うるさいわっ!!俺はお前のパシリか!!」
「ああ」
コクンと当然のように頷く俊一。
「いや、取り合えず、俺はお前のパシリになったつもりは無い」
「・・・・下僕??」
「違うわっ!!」
変える場所が違うぞ!!
ガキの頃からの親友に対して、下僕??
何時も思うが、なんて奴だ。
「冗談だ。
しかし、お前は何を食べるつもりだ?」
こいつの言う事は何処までが冗談で本当か分からない。
この間だって、俺の家に泊まりに来るとか言っておきながら(前話参照)、結局こなかったし。
・・・こなくて良かったけど。
「学食にしようと思ってるけど??昨日は購買のサンドイッチ食べたしな」
流石に、二日連続購買と言うのもなんだからな。
「ふむ、では俺も付き合ってやるとするか」
「いや、別に付いてこなくてもいいって」
「遠慮するな」
いや、遠慮なんか・・・って言っても必ず付いてくるだろうな。
結構苦労するんだよコイツと一緒にいると。
理由はいつか分かる事だろう。
「分かったよ・・・」
「良し、じゃあ、行くぞ」
俺と俊一は一緒に食堂に行く為に廊下に出て、食堂へと歩を進める。
お昼時なので生徒が多く歩いている。
この歩いている生徒の内の殆どが今から購買または食堂へ行く者だろう。
数分後、食堂に付いた俺たちは、メニューを見ていた。
俊一は少し黙ってメニューを見つめた後、口を開いた。
「では、俺はこれにしよう」
俊一が券売機で買ったのは、[スペシャル]と書かれた食券だ。
「スペシャル??んじゃ俺もそれにしよう」
スペシャルと言う響きがいいだけで、即決める俺。
だって、何か良い感じだよな、スペシャルって。
俺はお金を入れて、先程俊一が押したボタンと同じボタンを押す。
だが、一向に食券が出てくる気配は無い。
あれ??買えない?壊れたのか??
「壊れたのか??」
「いや、壊れては無いな、知樹、これを見ろ」
と、俊一が券売機を指差しながら言う。
ん??何だって?完売いたしました?
「か、完売!?」
「ふむ・・・知樹よ、どうやら一日50食限定だそうだ」
「げ、限定・・・」
え?と言う事はコイツが50人目で俺は51人目??
ランチタイムのバブル崩壊や〜〜〜。(某グルメレポーター風)
・・・・ま、まあ良い。
今日は他の物にするとしよう。
と、俺は自分の運の悪さを恨みつつ、すぐに比較的ノーマルなAランチを買った。
そして、食事。
「今日のスペシャルランチは名古屋名物定食だったぞ」
俊一が俺に言う。
チッ、旨そうだぜ。
ご飯、味噌煮込みうどん、味噌カツ、その他漬物、おまけにデザートにういろう(って言うらしい)がある。
「それでは、頂くとするか」
「ああ」
俺たち二人は、学校の事やら何やらを話しながら食事を済ませた。
「ふぅ、食った食った」
俺が食堂から出て一言言う。
「ああ、味も悪く無かった」
俊一の言うとおり味は中々の物だった。
スペシャルランチの事を除けば十分満足なランチタイムだ。
「んで、今から何するよ??」
休み時間はまだ十分にあるけど俺はやる事がないからな。
「そうだな・・・時間をあまり無駄にはしたくないからな、適当に校内を散歩するとするか」
「・・・それ自体が無駄な過ごし方かもしれないけど、やる事も無いし、そうするか。
俺もまだ校内の事はあまりよく分からないしな」
「それでは、校長の偵察に行くぞ!知樹少佐続け!!」
「うぉぉい!!いきなり校長室か!?」
いつもながら、ツッコミ所満載だ。
「・・・まあ、いい普通にやるか」
「最初からそうしてくれたら、幸いでした」
俺達が当ても無しに歩き始めたその時。
「滝野君・・・ちょっといいかな?」
一人の小柄な女子生徒が現れた。
誰だ、この可愛いらしい女子生徒は?
いつもの、俊一に一目惚れして、勇気を振り絞って告白しようとしている女子生徒か?
多分そうだろうけど、そんな事はこいつと一緒にいたら、よくある事だからあまり驚きはしないな。
あ、因みに滝野ってのは俊一の苗字ね。
忘れてる人多いと思うけど、忘れちゃ駄目だぜ?
んで、本題に戻るけど、この決死の告白、何時も結果は同じだ。
まあ、見てれば分かる。
「何だ??」
女子生徒の質問にぶっきらぼうに答える俊一。
多分コイツもどんな用件なのか分かっているのだろう。
「ちょっと一緒に来て欲しいんですけど・・・」
「一体何なんだ??何の理由で?」
まさかここまで聞かれるとは思っていなかったのか、女子生徒は少しうろたえる。
ちょっといいかな?の質問、二言目の返答でこの威力、恐ろしいな。
「理由が無いのなら、俺が行く理由も無いな、おい、知樹行くぞ」
「あ、ああ」
告白する暇さえ与えないな、コイツは・・・。
「え、あ、ちょっと待って!!」
少女がハッとなって叫ぶ。
「なんだ??あいにく俺には、名前も知らない人に付いて行って誘拐される趣味は無い」
だが、こんな返答しか返ってこない。
いや、誘拐は無いだろっ!!と、俺は心の中で突っ込んでおく事を忘れない。
流石俺。
あ、返答を聞いて女子生徒呆然。
可愛そうに。
まあ、コイツにその気が無いのなら仕方の無い事だが。
「行くぞ、知樹」
「お、おう、、、それでは達者でな」
女子生徒は結構容姿に自信があったのだろうか、悲しそうに肩を落としている。
取り合えず俺は、彼女に一言、元気付ける感じで一言、言っておいた。
達者でな、の一言で元気出るかどうかは怪しいが。
「なあ、俊一、お前って何でいつもそう冷たく断るんだ??
別にあそこまで冷たくしなくても、普通に断れるだろう??」
俺は隣を歩いている俊一に質問をした。
・・・俊一は少し黙って口を開いた。
「あれ位、やらないとあの子も諦めが付かないだろう。
あそこで優しく断ると、また俺に認められようと頑張る。
自分の、人生を捨てる勢いでな。
俺に認められる為に頑張ったって、俺はあの子の為に努力できる自信はない、そんなんで二人が釣り合うと思うか??
俺なんかの為に頑張って、人生駄目にして欲しくないんだよ、俺は」
・・・まさか、俊一がそこまで考えているとは思ってもみなかった。
「・・・ああ、そうか、分かったよ」
「それでは、校内散歩の続きをするぞ」
「あいよ」
恐らく、俊一が認める女性と言うのは、自分の為に頑張ってくれて、
自分がその女性の為に努力ができる女性なのだろう。
自分が努力してこそ、相手の頑張りと釣り合う事ができる。
実に俊一らしい考えだと思う。
「お前も人なりに人の事考えてるんだな」
「俺は人間だろ?」
「違いねぇな」
と、笑いながら歩く俺たち。
今日は、謎の多い俊一の、新たな一面を見たような気がした。
「お前は俺の下僕だろ?」
「違いね・・・いや違うだろ!?」
・・・でも、やっぱり人間的にはあまり変わってないよな。。。
今回は、俊一の変わった一面をお見せしました。
いつもはふざけてても、結構真面目に考えている・・・らしいです。(汗)
さて、そろそろ、新しい人物を出そうかと思ってますが何時出るかは分かりません。
まあ、近日中に出てくるでしょう。
それでは。