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零奈の誕生日~前編~





今日は12月24日。

言わずと知れたクリスマスイヴだ。


「トモ、おはよ~」


珍しくニーナが朝8時に起きてきた。

それも眠そうじゃない。


「どうしたニーナ。

 今日は早いな」


俺は暖房が効いたリビングで、呑気にパンをかじりながらソファーでテレビを見ている状態。

自分で呑気ってのも変だけど、呑気なものは呑気だ。


冬休みになったからってのもあるかな。

テレビでは普段見る事の出来ない番組のアナウンサーが、最近の政治について話している。

それが余計に、俺の呑気さを引き立てているのかもしれないな。


「ふふ~ん、だってトモ冬休みでしょ~。

 朝早く起きれば一緒にいられるもんね~」


「へいへい、そりゃ良かったですね」


俺はそう言って残りのパンを頬張り、俺の隣に座って抱き付こうとするニーナを立って華麗に交わした。

我ながら慣れたものよ。


「う~、何で避けるの~!」


「パン食い終わったから、食器を片付けに立っただけー」


「ちぇ~」


ニーナを頬を膨らますと、ソファーの背もたれに思いっきりもたれかかり、テレビに目を向けた。


ははは、不貞腐れちまったか。

ちょうどいい、邪魔されない内に皿を洗っておこう。


「ねぇトモ~」


俺が台所の水道の蛇口を捻ると同時に、

ニーナが後ろを向いてソファーの背もたれから顔だけを見せる様にして皿を洗う俺を見た。



結局絡まれるんかい。



きっとテレビを見ようと思ったけど、面白くない内容だったんだろう。

どうして満面の笑みなのかは理解できないけどな。


抱き付かれるよりはマシだけどさ。



「どうした?」


「この間さ、最近ガス代が高いって言ってなかった?」


「ああ、言ったぞ?

 確かに高いんだよ、最近俊一達が家によく来るからさ、大量の料理を作る為に火を使いまくって・・・。

 さらにはガスストーブも使ってるだろ?

 ったく、家計が炎上しちまうっての・・・」






我ながら上手い事を言った!







「火刑で炎上!?

 誰が!?」






「何で難しい方向で捉えるんだよっ!?」


ジャパニーズジョークが通じない、これが世界との壁か!?





というかニーナの方が面白い・・・!?





「いや俺が言いたかったのはさ。

 ガス代が上がりすぎちゃったから、家計が苦しくなっちゃう事を炎上に例えて、ガスと上手く合わせた・・・・」


「・・・・???

 う~ん・・・まいっか、兎に角っ!

 私っ、ガス代を節約する良い方法を考えましたっ!」


「お、何だ?」



俺の必死の説明が通じなかったのは残念だったけど、その話は中々興味がある。



「ふふ~ん。

 ガス代は何処でかかりますかっ?」


「え、だからキッチンとか、、、冬は皿洗ってる時にも使ってるな」


温水で皿洗うと手が荒れるらしいから、冷水の方が良いらしいけどな。

誰に聞いたかは忘れたし、定かじゃないから気になる人はググってくれ。



「後は?」



「・・・風呂、とか?」


「そうそれっ!

 ガス代を少なくする為には、入浴時間を短くして早めにガスを切るっ!」


ニーナが大当たりとばかりに大きなモーションから俺に指を指す。


「そうは言ってもさ、意識してもそこまで早くならないと思うぞ」


「ノンノン・・・まだ限界まで早くしてないだけなんだな~、そ・れ・がっ」


『チッチッチ・・・』と人指し指を左右に振りながらそう言う。





まさかコイツ・・・・。


「と、言いますと?」










「今日から一緒にお風呂はいr―――――」








「却下っ」









「う~・・・そんなに即答しなくたって良いのに・・・」


ニーナはそう言って横に倒れて、ソファーに横になった。

俺からは完全に見えなくなったけど、俺もちょうど皿を洗い終えたから、

蛇口をしっかりと閉めてソファーで横になるニーナの頭元に座る。


ちょうど俺の腿の横にニーナの頭がある感じだ。

大概ニーナはここで横になるので、結構この構図は多かったりする。


「あのなぁ、もっと他に考えられるだろ。。。

 むしろ風呂場でニーナに妙な事されたら入浴時間が長くなるぞ。

 そういう事しないって言う保障はあるのか?」


「無いっ!」




「・・・そこは嘘でも『絶対にしない』って言うのが普通だと思うんだけど」


嘘が付けない所がニーナらしいっちゃらしい。


「えっ!?

 じゃ保障するっ、絶対にしないっ!!」


「信用できるかぁ!!」


「トモの嘘吐き・・・」



誰が嘘吐きじゃい。



「兎に角、その提案は却下。

 もう少し有効な方法を考えてくれよな、俺も考えておくから」


「はぁ~い・・・」


自分の提案が通らないと分かった途端に、気の抜けた返事をするなっ。


「じゃあこの話はここでお終いにしてと。

 ニーナ、さっきからずっと寝転がってるけど、仕度は良いのか?」


「仕度?・・・・何の?」


ニーナは寝たまま上目遣いで隣に座る俺の顔を見上げた。


どうも本気で忘れてるみたいだな。


「今日は零奈の誕生日だろ~・・・。

 いつもは俺の家でやってたんだけどさ、今日は零奈の家で祝おうって話だからさ。

 仕度しておかないと間に合わないぞ?」


この間プレゼント買いに行ったのに、忘れてるのはある意味凄い。





「・・・あ、そうだ。

 その為に昨日早く寝たんだっけ?」





「聞くな」






ニーナが早く起きてくるって事は、そうなんだろうけどさ。

流石に朝から俺と一緒にいられるから早起きは無いと思ってたし。


・・・いや、あり得るのか?


「うん、きっとそうだよね。

 そうと分かれば早速私の部屋にレッツゴ~!」


そう言うとニーナは起き上がり、俺の手を取って立ち上がる。


「いや、俺は行かないから」


「ぶ~・・・連れないなぁ~」


文句を言いつつも彼女は二階へと昇っていった。


「連れない男で悪かったな。。。

 さて、俺は今の内に家事を全部終わらすとするか」



今日は家にいないから先に終わらせないと、帰ってから大変だからな。




















時刻は昼過ぎ。

昼食を済ませ、俺はニーナを連れて誕生日のプレゼントを手に、零奈の家を訪ねた。

ちなみに昼飯は台湾ラーメン、美味かった。

うん、どうでも良いけど、美味しさを伝えたかった、ただそれだけ。


『ピンポーン』


零奈の家のインターホンを押す。

暫くして、ドアから零奈が顔だけを出して俺とニーナの顔を見た。


「知樹とニーナね。

 入っていいわよ」


そしてそう言うと、扉を大きく開け、俺達を招く。


「お邪魔します」


「お邪魔しま~す!」


「あら、いらっしゃ~い。

 ほら上がって上がって!」



二人揃ってそう言うと、ニーナの無駄に大きい挨拶を聞きつけてか奥からおばさんがやってきた。

おばさんってのは、この間久しぶりに会った零奈のお母さんの事だけど、

相変わらず年を感じさせないって言うか、若々しいっすね。


実を言うと、零奈の家で誕生日を祝おうと言い出したのはこの人だ。

零奈は余り乗り気じゃなかったんだけど、おばさんが急に今年は家でやりたいと言いだしたらしい。





「あら、あなたがニーナさんね!

 零奈から話は聞いてるわよ~。

 話どおり、とっても可愛いわ~」


俺とニーナが家に上がると、おばさんはニーナの前に立って笑顔でそう言った。

そう言えばこの二人は面識が無かったな。


「そんな~、可愛いなんて~。

 零奈のママも凄く綺麗ですよ~」


どうやらニーナは敬語を使えるらしい。


ニーナが敬語を使っているのを聞くのは初めてなんだけど。。。

おばさんを目上の人と判断したからか、まぁ何せよ殊勝な事だな。


「うふふ、お世辞でも嬉しいわ~。

 それじゃリビングで待っててね、飲み物用意するから~」


・・・何だ、この二人。

何処か似てるような気が。。。










「ニーナさんは、学校で先生をやってるんですってね~」


リビングで俺とニーナと零奈が座ると、飲み物を持っておばさんがニーナ相手にまた話を繰り出した。


「はいっ、色んな生徒に会えるし、勉強になる事も多くて、とっても楽しいんですよ~」


「私もね、学生の頃は先生になりたいなぁ~って思ってた時期があったのよね~。

 結局学生時代に今のパパと出会っちゃって、専業主婦になったんだけどね」


「きっと今からでも十分なれますよっ。

 それだけ綺麗だったら、男子から沢山もてるだろうな~」


「うふふ、流石にそれは無理よ。

 年も年だしね。

 でも若い子に囲まれるのは楽しいかもね~」

 










「・・・先生目指してたなんて話、初めて聞いたわ・・・」


零奈ですら聞いた事の無い話を、俺の横に座るニーナに凄いスピードで繰り出すおばさん。

それに余裕で付いていくニーナも凄い。


「何かあの二人雰囲気が似てるからか、話が物凄い噛み合ってるような」


「私もそんな気がするわ・・・」


話に夢中になる二人を他所に、俺と零奈はコソコソと影で話すのみ。

今日の主役って誰だっけ?





「ニーナさんは、知樹君の家に住んでるですって?」


「うん、知樹はあんまり嬉しくないみたいですけど~・・・。

 私が楽しいから」


おいおい。

何だその説明は。



「へぇ~・・・強力なライバルって事ね・・・。

 零奈も頑張りなさいっ!」

 

ニーナの話に頷きつつ、零奈の肩を叩くおばさん。


「が、が、頑張るって何をよっ!!」


それに大きく反応して、顔を真っ赤にする零奈。


「やだぁ~、分かってるクセに~。

 我が子ながら呆れるくらいピュアなのよね~。

 負けないでって事よっ!」





「「・・・・??」」


俺とニーナは会話の意味も分からず、頭にクエスチョンマークを浮かべるだけだった。



 








そんな話をしている間に俊一が家にやってきた。

零奈が扉を開けて、リビングへとやってきた俊一におばさんがすぐに声を掛ける。


「あらぁ~、こんにちは俊一君。

 暫く見ない間に大人になっちゃって、子供の頃から良い男になるとは思ってたけれどね~。

 本当に格好良いわ~」


玄関先からおばさんが俊一に話しかける。

そういや俊一もおばさんに会うのは久しぶりだったな。


つ~か、おばさんって俺と会った時も似たような事を言っていた様な気がする。


「どうも・・・座っても?」


軽く会釈をして、苦笑いしつつ尋ねる俊一。

そう言えば昔から俊一は、おばさんが苦手だった様な気がするな。。。

底抜けに明るいのが問題なのか?

別に嫌っている訳じゃ無いみたいだけど。


ニーナは俺にしか絡まないから、問題ないらしい。


「ねぇねぇ、俊一君は今付き合ってる子とかいるの?」


「・・・・いないですね・・・」


「えぇ~、勿体無いっ!

 絶対に女子からは注目の的なのに~」


だからその女子からの告白を全部切り捨ててるんですよ、この男はっ!

けしからんっ、全くもってけしからん!!






俺が心の中で憤慨してから数分後。

今度は涼がやってきた。

同じ様に零奈に招かれリビングへ。


例に倣って、部屋に入ってきた涼に対しておばさんが話しかける。



「あら、あなたが涼君ね~。

 思ってたよりずっと良い男だわ~。

 ねぇあなた彼女とかいるの?」





もう誰でも良いんだろアンタ!





「い、いや今の所は・・・」


涼ですらも苦笑いを浮かべて対応せざるを得ないらしい。


「え~、勿体無いわ!

 クリスマスイヴに孤独な男が3人かぁ~。

 今日はパパも出張でいないし、一人貰っちゃってもいいかしら?」


ぐいっと涼の腕を引き寄せるおばさん。




いくらなんでもそれは問題発言&行動ではっ!?




「ちょっとお母さんっ!

 変な事言わないでよねっ!

 皆も苦笑いしちゃってるし!ほら腕も解いてっ!

 恥ずかしいってば!」


いくらなんでも暴走しすぎだと思ったのか、零奈がおばさんを止めに入る。


「何よ~零奈ったら~、ジェラシー?」


「何で私が涼相手に嫉妬するのよっ!」


「なら相手が違ったら嫉妬しちゃうの?」


「っ・・・もうっ・・・!」


対応に疲れたのか、諦めた様子で零奈はソファーに座り込む。





親子で仲が良いこって。






「なぁ、零奈ちゃんのお母様はいつもあんな感じなのか?」


様々な事に耐性を持つ涼も、流石に身の危険を感じたのか、

横にいる俺に小さな声で尋ねてきた。


それは別に気にしない。





だが何故に『お母様』と呼ぶんだ。





「まぁ・・・な。

 あの人の言ってる事、全部本気にするなよ?

 どこまで本気で、どこまでが嘘か分からないからな」


「それは分かってるけどな。。。

 やっぱり、零奈ちゃんのお母様だけあって綺麗だよなぁ~・・・。

 冬香ちゃんと言う存在が無かったら、誘いに乗る所だったぜ・・・。

 あの美貌ならまだまだ現役だな・・・」



身の危険所か、誘いに乗りかけていたこの男。

『身の危険』等と、言ってすまなかった。



言わせてくれ。






やはりお主、タダ者ではないなっ!!!








さて、そこからまた更に数分後。

今度は冬香がやってきた。


リビングに招かれた冬香は、白のセーターにマフラー、更にニット帽という

いかにも冬と言った格好で俺達の前に現れた。


なんか、すんごくふわふわしてそうな格好だ。


「「きゃぁ~可愛いっ~~~!!!」」





そして、ニーナとおばさんに同時に左右から抱きつかれる冬香。


「・・・あ、あの・・・・」


身長が高めの二人に両側から抱きつかれてるから、姿はほとんど見えないけど

顔を真っ赤にしてモジモジしてる所は確認できる。




「・・・なんか良いな、あの光景」




そして隣の涼がぶっ壊れてるのも確認できる。

鼻の下が伸びてるぜ、気をつけな。





だが涼、その趣味、分からないでもない。


口にはだすな、それがジャスティスってヤツだ!!





おおっと、話がそれたな。

また俺に対してあらぬ誤解が生じる所だった。



おほん。。。






しっかし最初っからこのペースで大丈夫か?

幸先不安だ・・・ま、いつもの事か。










さて、12月24日は零奈の誕生日でございます。

知樹の誕生日の時にチラッと出てたので、書いてみました。


最初は前後半分けずに書くつもりが、最初の茶番が長すぎて

前編後編に分ける結果に。

と言ってもなんら支障はないですが。


え?だったら最初のシーンをカットしろ?

それは譲れないな、何故なら最初のやり取りは完全に私の趣m・・・ゲフン。


それでは後編へ続く。


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