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冬のゲレンデ編:4 これが敗北感



さて、今俺達は全員合流した後に、ゲレンデの麓にある食堂に来ている。


零奈がニーナに全力で衝突したから、二人とも少し休みたいとの事だ。

休むって言っても、まだ何もやってないと思うのは気のせいか?

二人とも怪我は無い様だけど、精神的なもんなのか。



ま、夜行バスでここに着いたっきり何も食べてないし、ちょうど良い。

現在午前9時、少し遅めの朝食だ。


食堂って言っても内装、外装共に木目を基調とした自然なデザインで、真っ白な雪景色が似合ういい雰囲気の場所だ。

メニューも和食、洋食問わずバラエティーに富んだ内容。


すでに全員が注文を済ませ、自らが頼んだ料理を談笑しながら食べている状態だ。


因みにどうでもいいけど、俊一と涼の勝負は俊一の圧勝だったらしい。

内容もどうでも良いので聞いてない。

知りたい人は直接聞いてくれ。



「しっかし、涼。

 前もそうだったけど、時間帯的にありえない物食うよな・・・」


隣である物を食べている涼が目に入った。


「ん?

 朝から豚骨ラーメンの何処がいけないんだ?」


「いや、こってりしすぎだろ」



俺を見ろ、ご飯、味噌汁、野菜サラダに牛乳という見事に整った食事を!!



「え、じゃあ知樹は朝からカップラーメンとか食べない派?」


「普通に食わねぇよ、第一不健康だろ」


「へぇ・・・変な奴」




お前がな。




「見てみろ。

 あのミルクティーを作った俊一ですら、普通の朝飯を食ってるんだぞ?」


俺は左斜め前の席に座る俊一を指差して言った。





「だが、俺は毎朝このミルクティーを飲んで――――」





「お前は話すな。

 話がややこしくなる」


「・・・む」


悪いな、俊一。




「・・・・う~ん」


涼は、まだ納得できない様子。

こうなったら。。。


「じゃ、聞いてみるか。

 なぁ冬香ちょっと良いか?」


とりあえず正面にいる冬香に聞いてみる事にしよう。

冬香は隣の零奈と話していたが、俺に呼ばれてキョトンとした表情でこちらを見た。


「冬香はさ、朝からラーメン啜ってる奴とかどう思う?」





冬香はその言葉を聞いて、チラリと俺の横にいる涼のラーメンを見た。

そしてまた俺の方向を向くと、静かにこう言った。





「・・・・変・・・・」





「っは!?」


言葉にならない衝撃を受けている様子の涼。

どうだ、ざまぁ見ろ。

よくも俺を変人扱いしてくれたな。


「何でそんな事わざわざ聞くのよ。

 変なのは当たり前でしょ。

 私だってわざわざ聞かないであげてたのに」


零奈も妙な心遣いをしていたらしく、何故か俺が怒られる。


「はは・・・ははは。

 違う、コレ実はラーメンじゃないんだよ。

 そう・・・これは新しいタイプの麺料理で――――」





「・・・・さっき思いっきり『豚骨ラーメン一つ』って注文してた・・・」





「―――はぅっ!?」


まさかの冬香による決定的証言。

更に大打撃な涼。



「見苦しい言い訳は止めとけ。

 ここで認めれば皆許してくれるさ」


俺は涼の肩を優しく叩く。


「うっ・・・俺が・・・変でした・・・・」


「泣くなっ!!

 男だろっ!!

 男が自分の道を貫き通して何が悪いっ!」


「おぉ、知樹っ!!

 流石、言ってくれるぜ!!」


『ガシッ!!!』


しっかり手を握り締め合う俺と涼。




「何言ってるのよ・・・。

 最初に口出ししたの知樹のくせに・・・」




「零奈、それを言うな。

 男には理屈以外の何かがあるんだっ」


「いや、良いんだ・・・。

 皆の言うとおり、俺は食生活を改める事にする!!」


涼はそう言うとグッと自らの拳を握り締める。


「おぉ、涼。

 流石だ」


やる気に満ちたその顔。

中々男前だ。


「で、知樹。

 お前は毎朝何を食べてるんだ?」

 

「ん~と、そうだな。

 ご飯に味噌汁に・・・・」





『ガシッ』


な、何だっ!?

今度は俺の体が抱きしめられている!?


「トモはね、毎日私の甘~いキスを貰ってるんだよ~」


いや、この場面で後ろから抱きつける事の出来る奴と言ったらニーナ位しかいないしっ!!


「何勝手な事を言ってんだ、お前はっ!?

 つ~か、頬ずりすんなぁぁ~!!」


後ろから頬ずりは卑怯だろっ!!!

誰か助けてくれっ!!



「ま、まさか知樹っ!!

 ニーナ先生と毎朝そんな事をっ!?」


「誤解すんなっ!!

 誰か、助けてくれっ!!」



冬香を見てみる。

黙々とご飯を頬張るのみ。


この行動に驚いてすらいないっ!?



「零奈っ、助けてくれっ!!」




零奈は顔を真っ赤にしたまま動かない。




「変な事考えるなよっ!?

 ニーナが無茶苦茶やってるだけだから!!」


「え・・・あ、え~と。。。

 ニーナ、知樹が騒ぐと恥ずかしいから止めよっか?」


「う~ん、零奈がそう言うなら止めておくっ」


パッと束縛から解放される。

感謝するぜ零奈!




「じゃ代わりに零奈がスリスリやってみる?」




またニーナが変な事言いだした。

んな事、零奈がやる訳無いだろっ!?




「わ、わ、私っ!?

 え~と・・・止めて・・・おく・・・・」





「何故迷った!?」






「ば、馬鹿っ。

 迷ってなんか無いわよっ!!

 急に振られて、ちょっと驚いただけ・・・」




 

「フッ・・・・」


「俊一、何だよその意味深な笑みはっ!」


「さぁな」


何かコイツら俺に隠し事とかしてるのか?





「頬ずりされるとしたら、そうだな。

 俺は冬香ちゃんにやられたいな~~」


冗談交じりに涼が言う。

正直キモいっす。

涼、お前は隠し事してないだろうよ、きっと。








「・・・死んでもやらない」








冬香の一言で場が凍りついた。

小さな声なのに、その威力。。。


正直外より寒いです、今。


「あ、あのさ、知樹・・・」


涼が冬香を気にしつつ、小さな声で俺に囁いてきた。


「さっきの冬香ちゃんって・・・素の状態だよな?

 あの豹変モードじゃなくて」


語調は何時もの感じだったから、何時もの冬香だろ。


「・・・多分な」


「ってことは、本格的に嫌われてるって事か?」


「さぁな・・・まぁ頑張れ」


「うっ・・・ちょっとトイレ行ってくる」


涼は皆に聞こえる様に、そう言うとトボトボと哀愁を漂わせながら店の奥へと消えていった。


ドンマイだ・・・涼!



「あ・・・皆食べ終わったみたいね。

 ここのソフトクリーム、近くの牧場で取れた新鮮な牛乳を使ってて美味しいらしいから、女の子だけで食べに行かない?」



流石、悪い雰囲気ブレイカー零奈。

女子を隔離する事で、涼の精神的部分の回復をしようとする試み!

いや、例えそうでなくても結果オーライ!

結果が全てさ!!



「私行く~!!」


「・・・行く」


無論二人とも甘い物は大好きなので、零奈に付いて行く。




席に残ったのは俺と俊一。


「何か、朝から疲れるなぁ~」


俺はそう言って、イスにもたれ掛かる。


「こういうのも悪くはないだろう?」


「まぁな。。。。

 それでさ、俊一はどう思うんだ?」


「何の事だ?」


「冬香が涼を嫌っている様に思うかって事だ」


「俺はその様には思えないが?」


「へ?何でそう思うんだ?」


「ふっ、さぁな。

 それより、知樹。

 人の恋愛より、まず自分からどうにかしたらどうだ」


お前が言うなよ。


「お前が言えた義理かよ」


「いや、そういう事ではなく、

 俺の状況より、知樹の置かれている状況の方が遥かに厳しいと言う事だ」


は?それってどういう事だ?


「その間抜けな表情からすると・・・・。

 自覚出来ていないのも問題か」


へ・・・・?

さっきも冬香に鈍感とか言われたし、どういう意味だ?


「まぁ、良く分からないけど。

 俊一はどうなんだ?

 クリスマスだって、俺達とパーティ開くって言ってたろ?」









「そう言えば、クリスマスの話だが。

 キャンセルだ、前日の零奈の誕生日祝いだけにしておく」








「は!?

 お前、それってどういう―――――」





ま、まさか、俊一に彼女が!?

い、いや今更驚きはしないけど、今まで幾多の女子の告白を断ってきた色男がついに・・・と言う事なのか!?

まだ確定は早い、だがしかし!毎年開くパーティーをキャンセルしてまで、何処へ行くのか!?






「ふぃ~・・・あれ、女子が揃っていない?」


このタイミングで涼が戻ってきた!?


「涼が戻ってきたな。

 この話は止めだ」


良い所で話しを切りやがったっ!!

だが、涼の前でこの話をするのは少々酷だ。

名残惜しいが、零奈の配慮も水の泡になるから、ここは止めておこう。


「女性陣はソフトクリームを食べに行ったぞ。

 ここのやつは美味しいらしいんだとさ」


「ちょ、ちょうど良かった。。。

 まだ心の傷が・・・」


うむ、やっぱり零奈の判断はナイスだった。


「まぁ、そう落ち込むな。

 あの失言は明らかにお前のミスだけどな。

 俊一の判断によると、まだ嫌われてはいないらしいぞ」


「おぉ俊一、本当か!?」


「・・・まぁな」




「いやったぜ!!

 コレでまだ勝負できるっ!!」


俊一の説得力には舌を巻く。

さっきまで死に掛けてた奴がこの回復。

いやはや凄い。


「でも良いよなぁ。

 知樹はニーナ先生みたいな美人にあんな事してもらえて」


頬ずりの話か???


「恥ずかしいだけだろ。。。

 あんなの」


「馬鹿野朗!

 冷たい空気に触れた肌はな、余計にスベスベしてて気持ちが良いんだ」


「んな話、聞いたこと無いけどな。

 そうなのか?」


「聞いた事あるだろ。

 雪国の女性は肌がスベスベなんだ、それは寒さで肌がキュッとしまるからだ。

 だから言うだろ東北美人だとか。

 あとはロシアとかの北欧の女性は美人が多いだとか」


北欧うんぬんは聞いたことが無いが、確かにそんな気はしないでもないけどさ。

色白の人が多いみたいなイメージはある。





「で・・・俊一、本当なのか?」


「迷信だ」


そう吐き捨てて、俊一は手元の飲み物を一気に飲み干した。





「・・・ハッキリ言ったな。。。

 だが俺は俺の道を突き進む!!

 知樹がさっきそう教えてくれたのだ!!

 そして、恋愛も真っ直ぐ進んで実らしてやる!!

 お前らより先になっ!!

 ハッハッハ!!」





勝手にやっておけ。






「あの~、ちょっと良いですか?」



一人で馬鹿笑いする最中。

唐突に若い女性二人が俊一に対して背後から話しかけてきた。



俊一は自分に話し掛けられているのにも気が付いていない様で、

俺が俊一の背後を指差すと、ようやく2人の存在に気が付いた。


「さっき、滑ってるの見てて、凄くカッコイイなって思っちゃって・・・。

 良かったら私達2人に教えて貰えませんか?」




おぉ、これはまさかの逆ナンとやらだ。

スノーボードの滑りも去る事ながら、ゴーグル外したらとびっきりのイケメン。

狙わない訳がない。

・・・きっと女性陣も女性だけで歩いてるから、それなりに苦労してるかもな。






そして、俊一の対応。





「今、忙しいので。

 またの機会に」


見事な営業スマイル。

相変わらず悪魔のような男だ。


「あ・・・そうですか・・・」


女性2人組みは、そう言って顔を赤くするとそのまま去っていった。

それも何かキャーキャー騒ぎながら。








そして、俺の横に―――――




「これが・・・敗北感・・・か。

 ビーチバレーで負けても、スノボーで負けても感じなかった。

 だが今回は堪えるぜ・・・。

 神様は不公平だ・・・・」





――――敗北感に打ちひしがれる男が一人。





ま、俊一は特別なんだ。

俺達が普通なんだよ。


落ち込む事はないさ。















今回もギャグ要素のみです。

しかし、伏線も出てきました。


クリスマスがどうとか、涼と冬香の関係とか。

この伏線も徐々に回収していかねば、と思います。


皆様もよく覚えておいて下さい。

では。

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