ど~ん、わ~い、イヤッホ~ゥ
いや~、もうすぐ冬休みだね。
楽しみ、楽しみ。
大抵の高校生は、12月の頭頃にはそう思っているはずだ。
勿論、俺もその一人な訳だが、冬休みを迎えるに当たって多少なり不安はあるのも事実。
と言うのも今のこの現状。
「客人に暖かい飲み物くらい用意したらどうだ」
「こたつも無いの?この家は」
「知樹~、何か食べるもん無いか~?」
俊一、零奈、涼の3人がアポ無しで突然俺の家に朝の8時に押しかけてきたと思いきや、
ソファーに座ってこの様に文句を垂れている。
冬休みに毎日こんな朝が来る可能性があるとしたら、それはもう冬休みじゃない。
勘弁してくれ。
「お前等なっ、この家に集まるならせめて電話で連絡くらいしろよ!
それに加えて文句の連発!?
俺の家は都合の良い集会所かっ!」
ふぅ・・・疲れるぜ、、、日曜の朝くらいゆっくり寝かせてくれ。
「・・・それで?集まったって事は何か用があるんだろ?」
とりあえず、落ち着いた所で俺もソファーに座って聞いてみる。
俺の隣に俊一、向かいに零奈、その隣に涼といった配置。
因みに一応暖かいお茶は出しておいた。
うるさいからな。
「う~ん、私は俊一に言われて着ただけだから、分からないわ」
「俺も」
零奈も涼もどうやら今日の用件は知らないみたいだ。
何なんだ一体。
「で、俊一?どうなんだ?」
大して興味もないけど、聞いてみる。
でも、急に来たって事は結構重大な用件が。。。
「いや、遊びに来ただけだ」
「えぇ!?」
俊一、さも当然かの様に言うな。
結構な衝撃、お陰で目が覚めました。
「ついでに、冬休みの予定について話に来た」
「そっちが本題じゃねぇのか!?」
「そうだな」
俊一、朝からそのノリには流石の俺もついていけないよ、うん。
「それで、リストを作ってきたのだが、この中から選んで欲しい」
スッと机の上に一枚のルーズリーフ用紙を差し出す。
そこに書かれていた内容はこうだ。
『冬休みの企画案。
1.夜行のバスで隣県の山で朝からウィンタースポーツ。
2.県内の山でバーベキュー&テントで一泊、楽しいアウトドアな一日・・・(※熊が出たら戦う、倒したら50ポイント)
3.スケート場でトリプルアクセル(※出来るまで帰れないので要注意)
4.新型カイロの開発
5.知樹の家でど~ん、わ~い、イヤッホ~ゥ
尚、クリスマスと年越しパーティは知樹宅にて決行。
確定事項なのでお忘れなく』
「どうだろうか?」
「どうだろうか、と聞かれても・・・。
この企画案に点数を付けるとしたら5点位しか与えないぞ、俺は」
「それは5点満点か?」
「何でそうなるんだよっ!!」
普通100点満点だから。
「こちらは真面目に聞いているのだ」
「いや、真面目に聞かれてもツッコミ所が多すぎて困るだろ・・・。
1番は良しとしよう、2番も『熊と意味不明な50ポイント』を除けば良しだ。
3番は難しすぎてアウト。
4番は論外、てめえで勝手にやっておけレベルの酷さ。
最後の5番は検討に値しない」
「ふむ、ならば知樹は1番で確定か。
他は」
「私も一番かなぁ。。。
5番も気になるけど」
おいコラ、零奈。
気になっちゃ終わりだ。
「俺も断然一番だっ!
はははっ、『雪男』と呼ばれたこの俺のスノーボード捌きを見せてやるっ!!」
雪男がスノーボードの達人と言う話は聞いた事が無い。
そして涼の別名が『雪男』って事も知らない。
ウソクセー。
「俺は4番と5番がオススメだが、仕方ない。。。
1番で決定」
俊一が不服そうである意味が分からない。
「そして、年末のパーティーラッシュだが。
どうせ知樹の家でやるので知り合いを何人誘ってくれても構わん。
「それはパーティ会場の家主の台詞だ、この野郎」
料理も全部俺が作るんだぞ!?
それにお前が勝手に決めてるのに、どうせとは何だどうせとは!
「じゃあ、零奈ちゃん!!
冬香ちゃんを是非とも呼んでくれっ!」
「・・・涼に言われて誘うのも気が引けるわね。。。
友達同士で過ごすのも悪くないからなぁ。
う~ん、、、分かった、誘ってみる」
「イヤッホォ~~~!!!」
涼っ!
勝手に便乗してテンション上げるなっ!!
「他の女の子も呼びたいんだけど・・・。。。
皆それぞれ相手がいるから、止めとこっかな」
「零奈、それを言うな。
寂しい独り身の奴らの集まりみたいに聞こえるから」
「そう?
私は違うわよ。
もう何人も告白されてるけど断ってるだけだもん」
う・・・確かに。
「俊一はっ!
・・・・言わずもがな・・か」
「フッ・・・50から先は覚えていない」
カッケェェ・・・!
マジパねぇっす、俊一さん。
「涼はどうなんだよ。
付き合ったりとか興味無いのか?」
顔は良いのに、どうも女子とイチャついてる所が見られない涼。
噂では結構モテるらしいけど、、、。
ひょっとして陰に隠れて彼女がいたりするかもな。。。
「言ってくれるっ、知樹っ!
俺は冬香ちゃんと出会ってから、冬香ちゃん一筋だ!」
親指を立てる涼。
「あ、そうですか」
一途ってイイナー。
「何だ、その興味の無さそうな返事はっ!」
いや、だって・・・・それくらいしかコメントのしようが無いだろ。
「あんた、まだ冬香狙ってるの?
あんなに罵られて」
零奈も呆れ顔で涼に言った。
「おう、何だったら聞かせてあげようか?
『短編小説:俺ドMだから』ッ!」
「何よ、それ・・・」
ドン引きの零奈。
零奈がドン引きするのはよほどの事だ。
応援してるぜ涼。
幸い、冬香がお前にドン引きしている所はまだ見てないからな。
いける・・・のか?
「涼・・・それなら、俺が昨年開発した『惚れー彗星』を提供しようか?」
何だそれ!?
ハレー彗星じゃなくて!?
「何だその『惚れー彗星』とは!?」
喰らい付くな涼!
ロクな事が起きないぞ!
「いわゆる『惚れ薬』だ。
飲んだ者は一時的に魅力的になり、一瞬で異性が惚れてしまう。
結果は実証済み。
俺が使用した所、何と一日に5回も告白を受けたのだ」
いや、それいつも通りですやん。
俊一はん、いっつもモテモテですやん。
「良しっ、それ貰ったぁ!
これで冬香ちゃんも・・・ふふふ・・・ハハハハッ!!」
「この馬鹿野郎共っ!!!」
『ボコッ・・・・ドゴッ!!』
零奈の鉄拳制裁が二人の頭に直撃する。
おぉ、俊一と涼の頭から煙が。
そして俺は殴られていない、何と新鮮な光景か。
「正々堂々勝負しなさいっ!
冬香が可愛そうでしょっ!」
うむ、流石零奈、その通り。
ただ、俊一の薬は多分失敗作だぞ。
あ、尚更ダメか。
「ならば同時開発した『惚ーれーダビッドソン』は」
「馬鹿っ!」
『バコンッ!!』
・・・ハーレーダビッドソンじゃなくて?
「それで、出発にあたってのメンバーだが」
「相変わらず回復が早いな」
俊一と涼は、先程の打撃を受けてから10秒足らずで回復。
俊一にいたっては、何事も無かったかの様に話し出した。
「うむ、まずここにいるメンバーは確定。
費用は後日伝える」
「私が冬香に聞いておくわ。
まだ分からないけど、保留って事で」
零奈が手を挙げて言った。
本当に誘う気なんだな。
「あぁ、なるべく早めに頼む。
夜行バスの予約も早い方が良い」
俊一はメモ用紙を取り出し、冬香の名前を書き込む。
あ~、そうそう。
「あと、ニーナの分も頼むな。
どうせ、行きたがるだろうし」
絶対留守番とかしないし、学校もないし。
多分OKだろ。
「あぁ、分かった」
今度はニーナの名前をメモ用紙に書きこんだ。
「そう言えば、ニーナはどうしたの?
今日まだ見てないけど」
零奈が思い出したかのように言った。
「日曜日の朝は、10時ごろまで起きて来ないんだよ。
朝が元々弱いらしいから、平日の反動で遅くなるとか何とか」
因みに俺は何時もの生活をキープ。
だからコイツらの訪問にも対応できたって訳だ。
「あはは・・・ニーナらしいって言うか、何ていうか・・・。
でも、ニーナが付いてきたら楽しそうだよね。
バスの中も、山にいる時でも賑やかになるかも」
「まぁ、ほどほどにして欲しいけどな~」
何事もほどほどが一番だ。
「で、後は誰か誘いたい人物は・・・・いないようだな。
別に後で言ってくれても構わないから、早めに俺に言ってくれ」
俊一がメモに何やら書き込みながら言う。
しっかし予定とはいえ計六人か。
騒がしくなりそうだなぁ・・・また。
「よし、これで冬休みの予定は決まった。
では今から先程採用されなかった5番の項目をやろうと思うっ!」
・・・・!?
俊一、急に何言い出しやがる!?
「あ、後で聞こうと思ってたのよね、私。
聞く手間が省けたわ」
何言ってんだ、零奈!
「おぉ!マジか!?」
涼もテンション上げるなぁぁっ!!
「それでは『知樹の家でど~ん、わ~い、イヤッホ~ゥ』を開始するっ!!」
その後、俺の家でど~ん、わ~い、イヤッホ~ゥを夕暮れ時までやりましたとさ。
お終い。
え、内容は何かって?
ふっ、それは言えないな。
けど、これだけは言っておこう。
そこそこ楽しかった。
あ~冬休み、楽しみだ。
冬休みへのカウントダウンの話。
題名と大して関係ない話の内容ですが、許してください。
題名は今回の一番インパクトがあるネタ&オチとして使ったからコレにしました。
というか、いっつも題名は最後にフィーリングで決めるので、
そこは言わないで下さい。。。
でも一体『ど~ん、わ~い、イヤッホ~ゥ』とは何なのか?
気になりますね。
でも、教えません。
作者は知ってるのかって?
知ってるカモネー。