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新世代桃太郎『桃侍 ピーチタロー』





昔、昔。

ある所に、お爺さんとお婆さんが住んでおりました。


子供に恵まれず、二人でひっそりと暮らすある日の事。

お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯へと行っておりました。








『ヴ~~~ン!!!!』


エンジン音の様な轟音が山中に響いています。

何の音でしょうか?


「ったくよ。

 今時、山へ芝刈りとか無いよなぁ~。

 大体なんで芝刈りなんだよ、自分で山でも所有してるのか?

 意外とリッチなのか、俺の家庭は」


お爺さんは文句を言いつつも、芝刈り機のエンジンをフル回転にして、芝を刈っていました。

時代背景などあったものではありません。


「大体よ、俺はまだお爺さんじゃないっての!

 本編では出番が少ないけど、一応文化祭の時で俺の若々しさを発揮しただろうが!」


そう、このお爺さん役のお兄さんは、

本編では全く登場機会が無い『鳴海 和幸先輩』。

文化祭編でちょっと出たは良いのですが、

それから先出番が全く無い可愛そうなチョイ役男です。


忘れちゃった人は『文化祭編:4&5』を参照して下さいね。


「ナレーター黙れっ、チョイ役言うな!

 こっちだって出番ないのを気にしてんだっ!!

 あ~あぁ、こんなん早く終わって、さっさと女の子と町にでも・・・ん、あれは・・・」


お兄さんが何かを見つけたようです。

芝刈り機のエンジンを切って、気になる所へ歩み寄ります。


すると何ということでしょう、嘆きが神へと通じたのでしょうか。

何とも珍しい、眩い光を放つ竹を竹薮の中で発見したのです。

この話で彼も光り輝く事が出来るでしょうか。


「いちいち、うるさいわっ!

 ったく・・・てか、これって『竹取物語』の展開じゃねぇか。

 今回は『桃太郎』のはずだろ。

 ・・・無視で良いよな?

 それ以前に、俺芝刈り機しかないから竹切れないし」



『えっ無視!?

 私なんか本編で一回出て終わっちゃたのに!

 今回もこの扱い!?

 こらっ、出しなさいよっ!!!こらっ!!』


竹の中で騒いでいるのは、13部の『広報部廃部作戦~後半~』で登場した、

名も無き女子生徒。

名前が無いのは『これ以上キャラを増やすと読者が混乱する為』と言う理由でしたが、

あれからも名前のあるキャラが登場しています。


その上、散々小学生扱いされた挙句、気絶して終了と言う無残な終わり方で、あれからも出番が無く、酷い扱いを受けています。


さらに今回も、作品名さえ違えば主役だったはずですが、

『桃太郎』にかぐや姫役で出演してしまった為に

今回は姿すら現せない始末になりそうです。


困った困った。





『何よ、その紹介は!?

 私の出番もう終わり!?

 今日は『竹取物語』って聞いて来たのよ、何よ『桃太郎』って!?

 今回こそ主役だと思ったのに、だったら最初から呼ばないでよ!!』


「まぁいいだろ、今回は。

 さっ、次の場面へ行ってくれ』


『ちょっと~!!』










さて、お爺さん・・・いや、お兄さんに場面を進めるように促されたので、

かぐや姫は無視して、今度は山の麓にある川へ目を移しましょう。







「はぁ~、やっぱり川で泳ぐのって気持ちいいわねぇ」


川では、洗濯物をすっぽかして泳ぐ一人のお婆さんがいます。

いや、正確にはお姉さんなのですが。 

 

「ナレーターさん、いいわよ。

 一応、今はお婆さん役な訳だし」


そう言われても彼女の格好は、お婆さんが着用するような水着とは明らかに異なる過激な物で、とても形容しがたい超セクシーな姿です。

これをお婆さんと呼ぶのは、こちらも抵抗があるのです。


さて、このような過激な水着を着るのは彼女しかいません。

とは言っても、彼女もまた本編では出番の少ない人物なので、覚えている人は少ないでしょう。

彼女は鳴海先輩と同じ話で登場し、

そのセクシーぶりで知樹を苦しめた『九条 咲来先輩』です。



「ちょっと、お婆さんは許せるけど、出番が少ないのは言わないでよね~」



そして、鳴海先輩と仲が良くないにも拘らず、性格が良く似ています。

異性が大好きなのも同じで、互いの容姿は認め合う仲です。

喧嘩するほど仲が良いと言う言葉は、二人の為に在ると言っても過言ではありません。


「だからって、夫婦役で出演って何考えてるのかしら・・・。

 でもアイツ顔だけはいいからなぁ・・・・」


と、まぁこんな感じで満更でもなさそうです。

さて、いよいよ物語の本筋ですよ!

桃が流れて着ました。





ドドブランゴー、ドドブランゴー・・・・いや、どんぶらこ~どんぶらこ~。





某有名ゲームをやった事がある人しか分からないネタを挟みつつ、桃が流れて行きます。

お姉さんは、その人間が入りそうな程の大きさの桃を、即座に発見します。

すると。。。



「あの桃・・・大きすぎるわ。

 か弱い乙女には無理よ」







諦めました。









いいえ、駄目です。

諦めたら話が終わってしまいます。


「無理ったら、無理なのっ。

 ほら私って胸も大きいでしょ?

 最近、肩こっちゃって」


どうでも良いですから早くしてください。


「仕方ないわね・・・・・あ、岩にぶつかって止まったわ。

 ツイてるわね、私っ」





ここが山の麓の下流でなかったら物語が終わってました。

やれやれです。












さて、やっとの思いで家へ桃を持ち帰るお婆さん。

木で出来た小さな我が家に着いたのは、もう夜になっての事でした。


「今帰ったわよ~」


お婆さんは、桃を地面に置くと古びた扉を疲労困憊の表情で開けます。




「なっ・・・いいだろっ?

 うるさい奴も川へ行ったきり帰ってこないし、家に泊まっていけば―――――って、あっ!?」




するとお婆さんは驚愕しました。

お爺さんは、家へ若い女子おなごを連れ込んでいたのです。

恐らくあの後、町へ繰り出しナンパでもしてきたのでしょう。






「・・・ちっ・・・帰ってきやがったか、仕方ない。。

 じゃあね、また今度~」


お爺さんはお婆さんに気が付くと、女子おなごを外へと送り出し、手を振ります。

まるで、何も感じていないようです。


「・・・・このぉ!!

 一応、夫婦の役でしょ!!

 何よ、あんな子連れ込んじゃって!!」


「こっちだって、好きでやってる訳じゃないさ、こんな役」




「大体ね、あんな子の何処がいいのよ!?

 私の方が断然良いじゃない!」


「それは・・・俺だって分かってる。

 お前より、可愛い女子なんて・・・見た事無いから・・・」


「なっ・・・そんな事言ったって・・・・・許さな・・・。

 くっ・・・・しょうがないわね、今回だけだから、分かった?」





なんでしょうこの空気。

二人とも玄関で顔を赤らめています。

新ジャンル『ダブルツンデレ』。


桃太郎にあるまじきバカップル。



「「バカップル言うな!!」」














「それで、そこにある大きな桃は何だ?」


お爺さんが、外にある桃に気が付きました。


人一人が入る程の大きさの桃は、

見たことも聞いた事もないですから、驚くのは当然です。


「川で見つけたのよ。

 きっとこの中に桃太郎が入ってるわ」


「ネタバレしてもいいのかよ?

 まぁいい、中に入れて切ってみるとしよう」



お爺さんは、一人で桃を担ぐと家の中心へと桃を運びます。

そしてタンスの中から、何とも立派な刀を取り出しました。


「やっぱ、こんだけ大きいと刀くらい必要だろっ!」


そう言って、お爺さんはブンブン刀を振り回します。


「危なくないかしら、きっと桃太郎は知樹君よ?

 イケメンが一人居なくなるのは勘弁して欲しいわ」





「どうなるかは俺も分からないっ。

 さぁ後輩Aよ、桃の真ん中をぶった切るぞ。

 桃の端に寄れっ!!・・・はっ!」


そう言って、刀を下ろすと桃は一刀両断。

中からは顔が青ざめた桃太郎が出てきました。


「っは~~~っ!!!・・・危なっ!!

 間一髪の所で避けたから良かったものの、下手すれば死んでましたって!!」










「まぁ、ごたごた言うな。

 桃食うか?

 意外と上手いぞ」


「いらんわっ!!!

 てか、食うなよ!」











さて、いよいよ我らが主人公、桃太郎役の知樹が登場しました。

桃から生まれるのは子供ですが、今回は尺の関係で、

旅へすぐに出る事の出来るいつもの知樹が登場。


「まぁ、さっさ終わらしたいし。。。

 お婆さん、きび団子下さい」


「あら、もう行っちゃうの?

 お姉さんと遊ばない?

 旅はそれからでも・・・」


「いや、そういうの良いですから」


「もう・・・せっかちな男は嫌われるわよ?」







渋々お婆さんはきび団子を桃太郎に渡します。

さぁ、旅へ出発です。










桃太郎は暗闇の中、山道を歩きます。

よほど早く終わらしたいのでしょう、かなりの早歩きです。


「当たり前だろっ!!

 さっさと、犬とキジと猿を見つけて・・・・お、あれは!!!」


桃太郎は何かを見つけました。

何かの尻尾の様です、草むらの中に尻尾。

きっと犬に違いありません。



あっ、急に草むらから飛び出してきました。










「・・・・がおー・・・・・」









それは冬香が扮する『何か』でした。

招き猫のようなポーズで、淡々と泣き声を言うだけの冬香。

しかし、犬にしては外見が可笑しいのです。


淡黄褐色に黒い斑点の衣装、さらにネコ耳と尻尾を装着しております。

これは一体なんでしょう?








「冬香、それは一体何の役だ?」








「・・・・・女豹・・・・・のつもり・・・」







「なるほど、ヒョウね・・・・って、桃太郎に女豹は出てこないだろ!?」


桃太郎のツッコミはいつも的確です。

桃太郎にはネコ科の動物すら登場しません。





「・・・きびだんご・・・・ほしいですにゃん」




猫の手を差し出して、きび団子をねだる冬香が扮する豹。

実に可愛らしい姿です。




「・・・ゴクリ・・・・これはこれでアリかも・・・・。

 いやいや、違う違うっ。

 冬香自身、女豹については気にしないんだな!?

 仕方ない、きび団子をあげようっ!」


桃太郎は妙な興奮を覚えつつも、きび団子を差し出します。





『パクッ・・・・モグモグ』





ネコの手袋できび団子を取るのに苦労しつつも、何とか口へと運び

一気に食べ終えてしまいました。



「・・・美味しかった。

 ・・・それじゃあ」


「いや待てぇぇぇい!!

 仲間になるんじゃないのか!?」



またもや、草むらに戻ろうとする女豹に対し、全力でそれを阻止する桃太郎。

どうしてでしょう、仲間にならないのでしょうか?




「・・・・仲間???」


豹は訳がわからない、と言った様子で首を傾げます。


「そうだよ、桃太郎っていったら仲間を連れて鬼が島に・・・」













「・・・・・女豹は出てこない」


「今更っっ!?

 てか確信犯かよっ!?」
















まんまと騙された桃太郎。

確かに仲間になる等とは一言も言っていません。


「・・・・でも、そこまで言うなら付いて行く」


しかし、女豹は空気が読めるようです。

すんなりと、心変わりをしてくれました。


「よし、まずは仲間を一人加えたぞ。

 何故か、すんなり進まなかったけどな」






女豹を仲間に加えた桃太郎は更に先へと進みます。








すると、今度は何やら木の上に怪しい黒い影が見えました。

一体なんでしょう?



「今度こそ順当にキジか猿か!?」


期待を寄せる桃太郎。

もう原作のネタバレ等は完全に気にしてない様子です。

むしろ先ほどから、ネタバレと言う概念自体が

登場キャラクターには備わって無いようです。




あっ、黒い影が降りてきました。

それは涼が扮する『何か』です。

全体的に黒い衣装を身に纏って、直立で両手を合わせて人差し指を立てるポーズ。

この時点で原作通りではありませんが、一体何でしょう?



「今度は何だよっ!!??」



思わず声を荒げる桃太郎。

いけません、正義の味方はいつも冷静沈着に。









「・・・忍忍っ!

 私の名は白沢 涼之助・・・・忍者だっ!!

 腹が減って死にそうだ。

 きび団子を3つほどくれっ

 そうすりゃ、付いていってやるよ」


「何でそんな上から目線なんだよっ!?」


どうやら、忍者に対する疑問を持つのは諦めているようです。

動物ですらないと言うのに。


「さぁ、くれ」


「ちっ・・・・仕方ないな」




必死にねだる忍者に対し、仕方ないといった表情で、

きび団子を3つ取り出し忍者へ与えます。


『モグモグ・・・・』




「うまいっ!!

 よし、次行くぞ」


「お前が仕切ろうとするんじゃねぇよ!!」


「・・・って、うぉぉぉ!!!」


知樹のツッコミに一切反応せず、忍者はいきなり叫びだしました。


「今度は何だよっ!?」






「ふ、冬香ちゃん・・・・その格好、最高にファンタスティックだ!!!」


どうやら、女豹に扮した冬香に気が付いた様です。

暗闇で今まで見えなかったのでしょう。

忍者にあるまじき横文字を使用しています。


それにしても、興奮してますね。

男はやはり女豹に弱いのでしょうか。


「・・・・?・・・・・」


当の本人は自分に興奮しているのすら気が付かない様子で、

ひたすら桃太郎と忍者をキョロキョロと見つめていました。


本当にネコ科の動物みたいです。




















「さて、次は一体何がくるのか・・・」


もはや、次が原作通りでない事を確信しているようです。

勇者はこのように柔軟性も必要です。

やっぱりこの男は桃太郎に相応しいのです。


「とうっ」


今度は急に飛び出して来ました、ニーナ扮する『何か』です。


茶色い毛に大きな尻尾。

これは何でしょう?









「ニーナ、その格好は何だ?」


「リスだよ~。

 どう?可愛いでしょ?」


リスは自分で尻尾を持つと、くるりと一回転して見せた。









「何でリスなんだよっ!?」


忍者にはツッコまないのに、リスにはツッコむ。

基準が曖昧ですが、相変わらずツッコミは的確です。


「だって、アメリカでメジャーな動物って言ったらこれ位しかないでしょ。

 格好も可愛いし」


リスは尻尾を動かします。

もはや体の一部の様です。


「アメリカでメジャーかどうかは知らんが、戦えないだろ、リスじゃ」



尤もです、豹や忍者ならどうにかなりますが、リスでは戦えません。

せいぜいドングリを頬張るのが限界です。

因みにリスは全世界にいます。



「きび団子いらないから、連れてって~」


「ええぃ、離れろっ!!

 くっ付くなっ!!!!」


リスは下手に出るなり桃太郎の隙を付いて、思いっきり抱きついてきました。

もう無茶苦茶です。


「離れたら連れてってくれる?」


「連れてくから、離せっ!!

 胸が当たってるんだよ、胸がっ!!」


「もうっ、本当は幸せなくせにぃ・・・」






何だかんだで、三匹の仲間が揃いました。

いよいよ鬼ヶ島へと出発です。

一行は海岸へと向かいます。











「よし・・・何か頼りないけど、この船に乗っていけば良いんだな?」


海岸に着いた桃太郎一行は、わざとらしく置いてある木製の船を発見しました。

鬼ヶ島の位置は分かっているものの、海の彼方を見渡しても見えないほど遠くにあるようです。

漕ぎ続けても何日かかることやら分かりません。


「これじゃ、鬼を退治する前にこっちが死んじゃうよ~」


リスが言います。

確かに、今ある食料はきび団子がほんの少し。

数日も船で過ごすには、食料も水も足りません。




「桃太郎っ!!」


すると、忍者の涼之助が何か大きな機械を担いで持ってきました。


「これは使えるんじゃないのか?」


そう言うと、それを砂浜におきます。


「これは・・・確か。。。

 夏休みの時、涼が寝てる間に俊一に乗っけられた浮き輪に付けたやつかっ!?」


桃太郎・・・というか、知樹が言うとおり。

これは夏休みの時に俊一が開発し、涼に無理やり試乗させた浮き輪に付けると超高速で浮き輪で移動できる機械です。

その名は『浮き輪ジェット 昼用』。


昼用と夜用の区別はライトが付いているかどうかなので、余り関係ないそうです。


(25話の『海辺でクレイジー試乗』参照)



「そうか、これを船につければ、高速で鬼ヶ島へ向かう事が出来るっ!!」



全員が歓喜します。

早速、桃太郎は船に取り付け、俊一が前やった通りに作動させます。


『ピッ・・・発射10秒前』



アナウンスが鳴りました。

忍者の涼之助の頭に嫌な記憶が過ぎりますが、ゆっくりしている暇はありません。


全員が急いで船に乗り込みます。


『3・・・2・・・1・・・ゴゴゴゴゴゴォ!!!!』



船が徐々に加速していきます。

その時速はおよそ50キロ程の所で止まりましたが、十分なスピードです。


涼の浮き輪の時は、上空へ舞上がる程のパワーでしたが、

今回はそのパワーが十分に生かされています。






そして、アッ、と言う間に鬼ヶ島が見えてきたでは有りませんか。

しかし、話で聞いていたような鬼ヶ島とは全く違います。


まだまだ遠くからしか確認できませんが、その島には巨大なビルが建っており、

沿岸には大きな灯台からサーチライトが海を照らしています。



「何だ、あれはっ!?」


桃太郎は目が釘付けになりました。

何度も言うようですが、原作の鬼ヶ島と余りに違いすぎるのです。


「桃太郎っ!!

 船がサーチライトに入ってしまう!!」


「何っ!?」



忍者が、サーチライトの照らす光を指差しましたが、時すでに遅しです。

あの機械にはその様な、機能は無いのです。

船を旋回させるには、オールで無理やり向きを変えるしかないので、

少しずつしか向きを変える事が出来ないのです。


桃太郎と忍者は必死に、オールを手に持ち向きを変えようとします。








「ねぇ、あのサーチライトに入ったらどうなるのかな?」


「・・・?」


前線で頑張っている二人を他所に。

船の後部では豹とリスが毛繕いをしながら、のほほんと会話をしています。


チームワーク以前の問題です。



「お前ら、船の向きを変える努力をしろよっ!!」



桃太郎が二人に言いますが、船はすでにサーチライトに照らされていました。







サイレンが夜の海へ響き渡ります。


『木製の船の船長に告ぐ。

 今すぐ、鬼ヶ島帝国の領海外への船の移動を命ずる!!

 もう一度言う、木製の船の船長に告ぐ。

 今すぐ、鬼ヶ島帝国の領海外への船の移動を命ずる!!

 なお、これを無視し島への接近を試みた場合、防衛策として

 船を攻撃、破壊するっ!!』









「へぇ~、こうなるのかぁ。

 私の家みたいだね~、私の家の庭は赤外線センサーだったっけ?」


「・・・・?」


ニーナの実家はとてもお金持ちなので、その様な設備があっても気にしないのです。

でも、今はリスとして話して欲しいものです。


それに二人とも座ってないで、何かしらの対処をしないと、とっても危ないです。





「見つかったかっ!

 でも、ここで引く訳にはいかんっ!!」


桃太郎、何とも頼もしい事でしょう。

怯えるどころか、立ち上がり剣を鬼ヶ島へ向けて威嚇をしています。





その姿が見えたのでしょうか、多くの船が鬼ヶ島から出てきました。

そして、船めがけてロケットランチャーを発射します。



「うおっ!この時代になんつ~物を・・・。

 まぁ家に芝刈り機があったからな。。。

 そういう事で驚かない方がいいかもしれないけど、時代背景は一体・・・。

 くそっ、とりあえず忍者頼むっ!!」


桃太郎は忍者にロケットランチャーの弾を指差し、指示します。


「了解、見よっ!!

 俺の手裏剣さばきっ!!!」



忍者の手から、無数の手裏剣がロケットランチャーの弾目掛けて飛んでいきます。

その狙いは狂いを知らず、全弾を撃墜、船は無傷!

見事に敵船の包囲網を潜り抜けました。


「見たかっ、俺の技を!

 名づけて『手裏剣スクランブル』!!」



まさに神業です。

手裏剣でロケットランチャーの弾を撃墜したのは、この世で彼一人でしょう。





「おぉ~」


「・・・」


『パチパチ』


リスと、勝負事で性格が変わる冬香扮する豹ですらも、忍者には拍手を送っています。

二人は何もやってないのですが。








さて、いよいよ、鬼ヶ島上陸です。

島に入って、まず目に付いたのが、島の真ん中にある超高層ビルです。


早速、入ってみましょう。

どうやって島の中心へ向かったのとかは聞かないでください。

尺の関係があるので。






一行はエレベーターで超高層ビルの屋上へ向かいます。

すっかりと夜が明けて、ガラス張りのエレベーターから見る朝焼けはとても美しいです。





『ピ~ン』





エレベーターが止まります。

一行はエレベータから飛び出すと、そこには大きなイスに座った俊一とその姉の聖奈が座ってました。



「俊一と・・・聖奈さん!?

 もしかして、お前らが悪の根源の鬼なのか!?」



鬼と言っても、二人の姿は普通の人間。

話で聞く青鬼と赤鬼などとは別物です。

ここまで別物が多いとすでに桃太郎ではないですが、それを言うとこの話が終わります。


「ようやく、来たか知樹。

 待ちくたびれた。

 待ちすぎたお陰で、俺の発明の数々で鬼ヶ島を征服し産業革命を起こしてしまったぞ」


なるほど産業革命ですか、道理でオーバーテクノロジーな訳です。


「ごめんね、知樹君。

 これは知樹君の仕事だからって言ったのに、聞かなくて・・・勝手に鬼を退治しちゃったの」

 

「しかし、今のここの王は俺だ。

 俺を倒したくば、かかってきても良いのだが」





「う~ん、あんまりノリ気にならないけど、行くか。

 話終わらないだろうし」


もう、色々面倒くさいようです。


「さぁ、まずは忍者だ!!

 遠距離から攻撃だっ!!」


桃太郎は忍者を呼び、俊一を指差しました。


「・・・すまん、もう手裏剣を使ってしまって、攻撃方法が無いんだ。

 俺は近接攻撃が苦手で、他には何も持っていないんだ!」


「どんな忍者だよっ!!

 ったく、次ッリスッ!!」


「えっ、私!?

 私単なるリスだよ?戦う気はさらさらないよ?」


「じゃあ付いてくるなよっ!!」



これも、尤もである。







「最後、豹!!

 持ち前のスピードで奴を仕留めてくれっ!」








返事がありません。







「桃太郎っ!!」


忍者が叫びます。


「何だよ!?」




桃太郎が勢いよく、振り返ります。

するとそこには。。。











「す~・・・・・す~・・・・・」



「ヒョウは夜行性なので朝になると寝てしまいますっ!!」















「何なんだよ、お前らっ!?」






















その後、一人で俊一に挑みましたが、彼は鬼を一人で滅ぼした男。

適うはずも無く、一瞬で封じ込められてしまいました。





めでたし、めでたし。


















――――――――――――――――――――――――――――――――


















・・・・とあるファミリーレストランに呼び出された俺と零奈。



「と言う話を、来年の文化祭で公演したら面白いと思うのだが」



ハンバーグを食べながら、淡々と語る俊一。

もちろん俺達を呼び出したのは、コイツだ。

そして、先ほどの超下らないストーリーを語りだしたのもコイツ。


「そんな事を話す為に俺と零奈を呼び出したのか・・・?」


「全ての要素を含んだ完璧な構成。

 大規模なストーリー。

 新世代の桃太郎・・・名づけて『桃侍 ピーチタロー』良いと思うのだが」





何故、その題名で自信が持てるのか。

つ~か、桃太郎負けてるし、主人公俊一でいいじゃん。

鬼ヶ島を征服するまでのドキュメンタリーの様で、フィクションな作品を。





「第一そんな事やって何の得なんだよ?」


「・・・とてつもないストーリーを考えれば、

 演劇部として部屋を一つ貰えるかと思っただけだ。

 実際は演劇なんかやる気は無いのだが。。。

 学校で様々な行動を起こそうとすると、アジトは必要だろう?」


「一体何考えてんだよ、お前は」


んな事しなくたって、空き部屋の一つくらい作れるだろう、俊一なら。





「で、ちょっと良いかな?」


話を黙って聞いていた零奈が急に話し出した。


「おう、零奈も言ってやれっ」










「私が話に出てないんだけど?」








「「あ・・・」」



・・・てっきり零奈を忘れていた俊一。

何故忘れていたんだ俊一。






「・・・紫城を出演させると、文句が出ると思ったのだ。

 決して忘れていた訳では――――」






「言い訳するなぁ~!」





『パコォォン!!』



どちらにしろ、思いっきりぶん殴られましたとさ。





おしまい。









何という暴れっぷり。

成り行きで書いてしまいましたので、オチがテキトーすぎる。。。


零奈が好きという方は申し訳有りませんでした。。。

今回はオチだけの為に登場です。

また今度、似たような事があるなら登場させます、多分。

今は冬香の女豹で我慢してください。


しっかし、過去のキャラが大体出演しましたね。

まだ一応人物はいるんですが、役柄の人数が足りなかったです。

仲間をもっと多くする手もあったのですが、ゴチャゴチャしすぎると

絡めなくなるキャラが出そうなので止めておきました。


ま、そんな所で後書きといたしましょう。


近況報告で予告とか裏話とかを書く予定なんで、

良ろしければお気に入り登録して見てみて下さいね。


ではでは。



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