『あの日の夜[girls side]』
『あの日の夜 [girls side]』
[※今回は3人称視点です]
ある夏の日の夜。
とあるホテルの一室。
部屋の中には二人の女性の姿があった。
「ニーナ帰ってこないなぁ・・・・・」
ベッドに座ったまま天井を仰いで、零奈はまるで一人でいるかのように呟いた。
「どうかしたの?不安そうにして」
そんな姿を見て、向かい側のベッドに座っている聖奈は不思議そうに言った。
「べ、別に不安とかそんなんじゃ・・・・」
「はは〜ん・・・・・知樹君が心配だったりするの?」
聖奈は立ち上がって、上から顔を覗き込むようにして聞いた。
顔には怪しげな笑みが浮かんでいる。
「何で私が知樹の心配なんてっ・・・・!
私はニーナがちゃんと知樹を捕まえられたかを心配してるんです!!」
怪しげな聖奈の微笑を目の前にして動揺する零奈。
「どうだかなぁ〜〜・・・」
「もう・・・・・」
そう言って零奈はため息を付くとそのまま『ボフッ』とベッドに背中から倒れた。
すると、その時。
(ドゴォォォォン!!!!)
一際大きい打撃音が館内に響いた。
「!・・・・何の音?」
「結構近い所から聞こえましたよね」
零奈は起き上がって、聖奈に答えた。
何の音かは前話を見返していただければわかるだろう。
『カチャ・・・・』
二人が不安そうにしていると、唐突にドアが開く。
「う〜〜〜〜。
また騙されたぁぁ・・・・トモのバカぁぁぁ・・・」
そう言って部屋に入ってきたのはニーナだった。
ニーナは下足を脱ぎ捨てるなり、ベッドまで歩き『ボフッ』と前のめりにベッドに倒れる。
「もしかして・・・。
一回目の手にまた引っかかっちゃったの?」
「みたいですね。
アタシ達があの作戦に協力した意味って・・・」
「だって・・・だってぇぇ〜〜〜〜」
「ま・・・まぁ落ち着いて。。。。
話なら聞くから・・・・」
二度も騙されたアンタも悪い、とは今にも泣きそうなニーナに対し、余りにも酷なので言えない。
うつ伏せのまま足をジタバタさせるニーナを制するように、零奈が言った。
「私だって二度も騙されないように注意してたのに・・・・。
急に真剣な目になって『俺の目を見ろ・・・・信じてくれるな?』とか言われちゃったら、信じるしかないんだもん・・・・」
「ったく、あの馬鹿・・・。
ニーナの純粋な気持ちを踏み躙って・・・」
「零奈ちゃんまで怒ってどうするのよ・・・。
はいっ、イライラしたら寝るのが一番っ。
早く寝て、仕返しはまた明日の朝、って――――――――「すぅすぅ・・・・・・」―――
もう寝てるし・・・」
「そこ昨日から私が使ってるベッドだったんだけどね。。。
マイペースって言うか何て言うか・・・そこがニーナのいい所なんだけど」
零奈は苦笑した後、ニッコリ笑って聖奈に言った。
「はははっ・・・確かにね。
ニーナを見てると何か元気が貰えるって言うか。
さ、それじゃ、私たちもそろそろベッドに入りましょ」
そう言ってベッドに入る聖奈。
続いて零奈もベッドに入り、明かりを消した。
本来は扉に近い順に零奈、ニーナ、聖奈といった並びの予定だったが
ニーナが零奈のベッドで寝てしまったので、零奈とニーナは場所を入れ替えた形になった。
つまり、零奈と聖奈は隣同士なわけで・・・・。
「お休みなさい」
「え・・・?
ちょっと、本当に寝るつもり?
私はただ、ベッドに入ろうって言っただけよ?」
「・・・それは、どういう――――きゃっ・・・ちょ・・ちょっと何入ってきてるんですか!」
零奈はそう言いつつある一つの事実を思い出した。
この人はあの男の姉だと言う事を。
「大丈夫、多分変な事しないから。
ちょっと『恋』について語ろうと思って・・・ね」
「多分って何ですか!?
それに私は恋愛なんてした事ないし、相談になんか乗れるはずが・・・・」
「あら・・・私の事じゃないわよ?
零奈ちゃんの事よ・・・知樹君の事とかね」
「っ・・・・!」
零奈の顔が一気に赤くなった。
それを見た聖奈はクスッと笑い、顔を一気に零奈に近づけ言った。
「さぁ・・・夜は長いわよ」
「いやぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
そして、この断末魔とも言える叫びが聞こえてから10分後。
「何とか抜け出せたけど・・・・・・暫く戻れないなぁ、怖くて・・・」
夜の砂浜に座りながらため息混じりに呟いた。
日中の雨で地面は少々濡れてはいたが気にするほどではない。
零奈は何をするわけでもなく、ボーっとしていた。
数分間はそのままの状態であったが、唐突に深く息を吸って吐き出すと、勢いよく立ち上がり服に付いた砂を払いもう一度呟いた。
「・・・ちょっと歩こうかな」
そして、海岸に沿って歩きだす。
暫くただ漠然と歩いていただけだが、リズムよく一定の間隔て聞こえてくる波の音が気になったのか、立ち止まって海の方向を見る。
「綺麗・・・・・・・」
微弱な月の光に照らされぼんやり映る海の姿をみて思わず言葉が漏れる。
「・・・気にしてたって仕方ないかっ・・・。
今まで通りの普通の生活が楽しいんだから。
ありのままで良いよね、きっと」
零奈は潮風をお腹いっぱいに吸って、大きく深呼吸した。
「さ、戻ろうかな」
そう言って海から目を離そうとした瞬間。
海に反射する一筋の光を見つけた。
「あっ・・・流れ星・・・」
それは、すぐに消えてしまったが、
零奈の表情はは先ほどとは打って変わって、明るい表情となっていた。
「さっ・・・戻ろう・・・・!!!」
零奈はまたもや何かに気がついた。
「知樹・・・・・」
知樹は片手を軽く挙げ挨拶をした。
「また寝れないのか?」
知樹は零奈の隣に立つと不思議そうに尋ねた。
「大体そんな感じ。。。
アンタこそ、また寝れないの?」
「いや、ちょっとイライラする事あってさ。
ちょっとした気晴らしにな」
「・・・何があったのかは聞かないわ。
大体分かるから」
「ご察しど〜も。
・・・ま、でも効果覿面っていうか、、、この景色見たらどうでも良くなっちまった。
で、話変わるんだけどさ」
ニッコリ笑って零奈を見る知樹。
「な、何よ」
「・・・流れ星。
あの表情の変わり様だと、相当いい願い事をしたんだろ?」
「み、見てたの!?」
暗い中でも零奈の顔が赤く茹でタコの様になって行くのが分かる。
「そりゃもう。
バッチリと――――(バゴォォォォ!!)――――ぐほっォォ!?」
零奈の怒りの一撃が知樹の台詞を中断させる。
「この、変体っ!!!」
「へ、変体って・・・視界に入った・・・だ・・・け・・・だ・・・ろ・・・っ」
そのまま、知樹の意識は途切れてしまった。
「しらない・・・こんな奴っ!」
零奈は怒ったまま旅館へ戻っていった。
そして、女性陣の部屋。
「う〜ん・・・・トモのばぁかぁぁぁ〜〜〜〜」
「・・・寝言が煩くて寝れない〜〜。
ニーナぁ、お願いだからもうちょっと静かにして〜」
「クスン・・・バカトモ〜〜!!」
聖奈はずっとニーナの寝言に悩まされていた。
「二人足して2で割ったらちょうどいい感じになるのにね・・・。
正反対の二人に好かれて・・・全く幸せ者だわ、知樹君は」
聖奈が深くため息を吐くと、玄関から物音が聞こえた。
そこで聖奈の表情が急に明るくなるが・・・。
「あら・・・零奈ちゃん以外と早かったわね。
さ、話の続きをしましょ」
「あんな奴の事で話すことなんて一つもありませんっ!
お休みなさいっ!」
そう言って零奈はベッドの布団に包まってしまった。
「・・・・足して割らなくても良いかも・・・」
そう言って聖奈は静かに布団を被ったのであった。
実生活が忙しくて更新が遅れました。
申し訳ないです。
さて、girls sideとは名ばかりですが、どうだったでしょうか。
最終的に何を書きたいのか分からなくなってしまい少し反省。
次は夏休み明けの学校生活を書くつもりです。
乞うご期待!